2023年12月21日 (木)
[インドネシア] 政府は、12月半ばに完成した電気自動車(EV)に対する輸入関税と高級品売上税の撤廃に関する新規制を発表した。これらの税優遇措置は、インドネシアにEV製造工場を設立している企業や新たな投資を検討している企業を対象にしている。輸入関税と高級品税がそれぞれ最大60%、170%までかかるため、それらが撤廃されると、輸入EVは一般市民にとってより手頃に購入できるようになる。同国は、EVバッテリーに必要な重要な資源の豊富な供給元でもあり、大規模な人口により、EV市場の拡大を積極的に進めている。
[日本] 12月21日、政府経済見通しが閣議了解された。それによると、2024年度の実質GDP成長率は前年度+1.3%と、2023年度の同+1.6%から小幅に減速すると予想されている。2024年度は、2023年度とは異なり、個人消費や設備投資など内需主導の成長の姿が描かれている。また、2024年春に電気・ガス価格激変緩和措置が終了することもあり、消費者物価指数は前年度比+2.5%と、3年連続で2%を上回ると見通されている。
[コロンビア/チリ] コロンビアの中央銀行が緩和サイクルを開始し、チリの中央銀行が緩和ペースを加速させることを決定した。インフレ率の低下など外部環境が改善しており、両中央銀行が2024年も利下げを継続するとみられる。
[中国/アルゼンチン] アルゼンチンの複数のメディアが、中国が同国に対する65億ドルの通貨スワップを停止したと報じている。2023年10月、中国はアルゼンチンに対し、両国間の通貨スワップ枠から65億ドルの追加利用を認めていたが、それを凍結した形。ミレイ大統領は就任後、中国に対しスワップ協定の継続を要請したが、同氏の対中政策について不満を抱いた中国が圧力をかけたとみられる。ミレイ氏はBRICS加盟や「一帯一路」に対して消極的な姿勢を示しているほか、中国のJF17戦闘機ではなく米国製のF16の中古を購入することを検討していると報じられている。
[米国/中東] 12月19日、イエメンの反政府武装勢力フーシ派による紅海での船舶への攻撃が相次いでいる問題に対応すべく、米国のオースティン国防長官は訪問先のバーレーンで、「繁栄の守護者作戦(Operation Prosperity Guardian)」の実施を発表した。米国、英国、フランス、イタリア、ノルウェー、バーレーンなど12か国以上が参加し、紅海でのパトロールを含む海上の安全保障任務を共同で行う。これに対しフーシ派は、「この作戦は紅海を軍事化するもので、紛争を拡大するものはその責任を負う。」と発表している。
[米国/EU] 12月29日、米通商代表部(USTR)のタイ代表は、EUが対米報復関税の一時停止措置を2025年3月末まで延長すると決定したことを歓迎し、米EU交渉をさらに進めていくとのコメントを発表した。EUは、トランプ前政権が実施した、輸入鉄鋼・アルミへの追加関税賦課(232条関税)に対し、報復関税を課していたが、2021年1月に発足したバイデン政権と協議を行い、同関税を停止していた。EUによる報復関税の再賦課を避けるためには、米EU間で鉄鋼・アルミ貿易をめぐる合意をまとめる必要があるが、目標としていた2023年10月には間に合わず、交渉妥結は2024年に持ち越されている。
[イスラエル/米国] イスラエルのネタニヤフ政権がイスラム組織ハマスの殲滅(せんめつ)を目指しガザ地区での空爆や地上攻勢を続ける中、10月7日のハマスによるイスラエルへの大規模攻撃以降、パレスチナ人民間人の犠牲者数は約2万人に達しており、国際世論からは停戦を求める動きが強まっている。そうした中で米民主党議員からは、バイデン政権に対して米国の対イスラエル軍事供与の内容の開示を求め、対イスラエル軍事支援に対する監視強化を図る動きが広がっている。
[米国/メキシコ] 米国の最大貿易相手国がメキシコへ遷移する中、米墨間では移民の急増が物流問題を引き起こし、事態はさらに深刻化している。米国税関・国境警備隊は、エルパソとイーグルパス間の鉄道運行を停止すると発表。鉄道輸送が移民急増の原因ではないとする鉄道会社の主張に対し、線路付近での死傷者増を懸念する当局で議論が噛み合っていない。5億ドル相当の貿易が停止しており、鉄道会社は早期再開を求めている。ルート変更も検討されるが、同地区を通過する貨物は米墨間鉄道交通量の35.8%を占めるため、すべての切り替えは困難なもよう。
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