デイリー・アップデート

2025年4月7日 (月)

[中南米] トランプ米大統領の相互関税は米国の貿易赤字の大きさによって決定されたことから、中南米ではほかの地域と比べ相対的に関税率は低率にとどまった。そのため、中期的にはほかの地域から米国への輸出のシェアを奪える可能性はあるものの、関税による世界経済へのマイナスの影響が大きく、そちらの方が先に早く影響が出てくると思われることから、中南米においても当面の経済への打撃が懸念される。

[エチオピア] 4月5日、公的債権者委員会(OCC)の共同議長を務めるウィリアム・ルース氏は、英ロイター紙の取材に対し、二国間債務の大幅な割引(ヘアカット)は行わない代わりに、返済猶予を与える形の債務再編案をまとめる予定だと述べた。3月にOCCとエチオピア政府は総額84億ドルの未払い債務の再編に関する基本合意を発表。数か月以内に返済案の詳細が策定される予定だ。並行してエチオピア政府は、10億ドルの未払い債権を有する民間債権者団体に対して18%のヘアカットを提案しているが、同債権者団体は反対している状況。そのような中、今回のOCCの発表は二国間債務の返済についても足並みを揃えてヘアカットを行わない姿勢を示しているとみられる。

[米国] 労働省によると、3月の非農業部門雇用者数は前月比+22.8万人となり、市場予想(13~14万人増)を上回った。失業率は4.2%であり、1月(4.0%)から2か月連続で上昇した。また、平均時給は前年同月比+3.8%となり、2月(+4.0%)から上昇率を縮小させた。3月までの底堅かった雇用・所得環境が、今後の米国の関税政策と他国・地域の報復措置の影響を判断していく上でのひとつの基準になる。

[イスラエル/米国] 4月3日からハンガリーを訪問していたイスラエルのネタニヤフ首相は、6日にブダペストから直接米国へ出発し、同日中にワシントンに到着した。先週トランプ政権が発表した相互関税に関し、イスラエルからの輸入品には一律17%の関税が発表されており、これをトランプ政権に再考してもらうのが今回の訪問の大きな目的。ネタニヤフ首相は、トランプ大統領に加え、ラトニック商務長官やグリアUSTR代表とも会談を実施する予定。会談では、ガザ停戦や人質の奪還、イラン問題などについても協議されるとみられる。

[米国] 4月5日、上院は予算決議案を賛成51票、反対48票で可決した。2月に下院では予算決議が通過しているが、上下両院間で決議案文言のすり合わせが必要とされている。予算決議は、連邦政府予算の大枠を決めるもので、議会共和党が財政調整プロセスを活用するためには、予算決議がまず成立する必要がある。議会共和党が減税拡充を実現するためには、「財政調整」と呼ばれる手続きを踏むことが必要で、それによって民主党に依存することなく、減税、歳出削減などを進めることが可能になる。上下院がそれぞれ可決した決議案では、減税規模などにおいて、まだ齟齬(そご)が存在する。

[欧州/中央アジア] 欧州連合(EU)と中央アジア5か国は4月3~4日、ウズベキスタン第2の都市サマルカンドで、初のEU・中央アジア首脳会議(サミット)を開催した。EUが中央アジア5か国と「戦略的パートナー」として関係格上げに合意し、120億ユーロ(約2兆円)に相当する経済協力やインフラ投資をすることに決めたと発表した。

[中国/米国] 4月4日、中国政府は米国の相互関税に対する一連の対抗措置を発表した。その内容は以下のとおり。■米国からの輸入品すべてに34%の追加関税(4月10日から適用)、■米企業6社の中国への輸出資格の停止、■輸入された医療用CTチューブに対する産業競争力調査の開始、■米国とインドから輸入された医療用CTチューブに対する反ダンピング調査の開始、■米企業16社への軍民両用技術の輸出禁止、■米企業11社を「信頼できない事業体」リストに追加、■特定のレアアース関連品目の輸出規制措置、■米国の「相互関税」についてWTOに提訴、■デュポン社に対する独占禁止法違反調査の開始。

[ベトナム/米国] 4月4日、ベトナムのトー・ラム共産党書記長はトランプ大統領と電話会談を行い、米国からの輸入品に対する関税を0%にする用意があると伝え、関税削減に向けた協議に入ることで合意した。トランプ大統領もSNSでの投稿で自ら明らかにした。フォック副首相が6日から訪米し、具体的な協議を始める見通し。ベトナムに課せられた「相互関税」の税率は46%の高水準。2024年のベトナムから米国への財輸出額は1,366億ドルで対GDP比29.2%に上る。タイやカンボジアも関税引き下げの方針を発表している。

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