2025年4月16日 (水)
[ガーナ/金] 4月15日、国際通貨基金(IMF)は、3.7億ドルの新規融資につき実務レベルで合意に至ったと発表した。IMFは金の輸出増と、海外送金の流入増により国際収支が大幅に改善したことを評価した。一方で、財政収支は依然として対GDP比で▲3.4%と赤字が続き、またインフレ率が20%台で高止まりしていることに懸念を示した。アフリカ最大の金産出国のガーナは、違法採掘・密輸とそれによる環境被害が問題となっている。これに対処するため政府は4月、外国人による小規模鉱山との金の取引を禁止し、小規模鉱山からの金の買取や輸出は、新設された「ガーナ金公社(GoldBod)」が独占的に行う旨を発表した。
[ドイツ] 欧州経済研究センター(ZEW)によると、4月のドイツ期待指数は▲14.0となり、3月の51.6から急低下した。3月にかけて基本法(憲法)改正による財政拡大などへの先行きの景気回復に対する期待感が景況感を押し上げた一方で、4月になると米国の関税政策によって景気への懸念が一気に強まった。ドイツと米国はともに景気悪化が懸念されている点は共通するものの、米国の物価については上昇率がさらに拡大する一方で、ドイツの物価は下落するという異なる方向の見通しになっていた。
[米国] トランプ大統領は「重要鉱物の加工品とその派生品」についても通商拡大法232条に基づく調査を商務長官に命じた。重要鉱物とはUSGSの重要鉱物リストに含まれる鉱物(ウラン含む)、派生品とは重要鉱物が含まれる製品(半導体・EV・スマホなどを含む)。中国はレアアース供給において圧倒的地位にあり、2025年4月、米国が課した相互関税への報復として中・重希土類7種に輸出制限を課している。なお2月の米国大統領令を受けて検討されている銅輸入関税に対するパブコメでは反対意見が大半で、むしろ銅原料輸出を制限すべきとの案もあった。
[米国] 4月15日、トランプ政権は、処理済み重要鉱物の輸入が国家安全保障に及ぼす影響について調査を開始すると発表した。通商拡大法232条に基づく措置で、商務省が他省庁とも協議しつつ、調査を担う。6か月以内に大統領に報告を行い、その提言に基づき、大統領は追加関税の賦課など、輸入制限措置を講じることができる。現在、トランプ政権は、銅、木材、半導体、医薬品について、同様の調査を行っており、製品ごとの追加関税が設定される可能性が高い。
[米国/カナダ] トランプ政権の関税政策は重要鉱物の米国のアクセスをリスクにさらしている。米加で貿易を巡る対立が激化する中で、米国の脆弱性の一つは目立たない鉱物、カリ鉱だ。カリ鉱は植物の成長促進や収穫量の向上、土壌の枯渇防止に不可欠であり、現代の産業農業では置き換えられない上に、世界の食料安全保障にも重要である。これがなければ、農業生産は急減し、食料の供給不足による価格上昇が懸念される。しかし、国内の供給源が少ないため、米国はその80%以上をカナダから輸入しており、この鉱物がカナダにとって経済的な武器となる可能性がある。オンタリオ州のダグ・フォード首相は、トランプ政権の関税引き上げ方針に対して、米国への輸出を完全に遮断するアイデアを提案しているが、この脆弱性を踏まえた上での発言だ。第一次世界大戦中、ドイツが肥料原料輸出を停止して連合国を弱体化させようとし、カリ価格は数十倍に跳ね上がり、商品の武器化の成功例となった。各国は肥料の備蓄に頼ったり、海藻などの代替手段を使用するのに奔走したりし、禁輸措置は世界の食糧供給に深刻な負担を与えた。しかし、新しい生産地を求めたことで禁輸の負担を軽くすることになっていった。
[中国] EVバッテリーメーカーのCATLは、石油大手のシノペックとスマートEVメーカーのNIOと提携し、中国全土をカバーするバッテリーのスワッピング・ステーション・ネットワークを構築すると発表した。また同社は、香港とマカオに初のスワップ・ステーションを間もなく設置することも発表した。CATLとNIOの提携は3月に発表されていたが、シノペックも加わった形。具体的なスケジュールは示されていないが、3万か所のスワッピング・ステーションを建設することを目指すとしている。スワッピング技術は、EVの航続距離への不安を和らげることを目的としている。
[ベトナム/中国/米国] 4月14日、中国の習近平国家主席がベトナムを訪問し、ハノイでトー・ラム書記長と会談した。習主席の訪越は2023年12月以来。両首脳はサプライチェーンの強化や貿易・投資の促進等で一致した。習主席は、米国を名指しはしなかったが、「一方的ないじめ」に共同して反対し、世界の自由貿易システムと産業・サプライチェーンの安定性を維持すべきと述べた。両国はサプライチェーン、AI、海上共同パトロール、鉄道開発などに関する45件の協力協定に署名した。トランプ大統領は「私は中国も、ベトナムも責めない」とした上で、「彼らは今日会談しているらしい。『米国をどうやって出し抜くか』を模索するような会談だ」と発言した。
[ロシア] 4月15日、ラブロフ外相は、地元紙「コメルサント」とのインタビューで、ウクライナ和平案の一部の条件での、米国側との合意の有無についての質問に「重要な部分に合意するのは容易ではない。現在、協議中だ」と回答した。また、ロシアが経済・軍事・技術・農業で再び西側に依存することを国内の政治エリートは容認しないとも発言し、撤退した欧米企業のロシア復帰が簡単ではないとの考え方を明らかにした。
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