2024年8月1日 (木)
[ベネズエラ] ペルー政府は、ベネズエラ大統領として、当選したマドゥロ氏ではなく野党候補で元外交官のエドムンド・ゴンザレス氏を大統領として承認すると発表した。しかし、任期開始の2025年1月以降は、マドゥロ政権を事実上の政府とみなす可能性を排除しないともしている。ベネズエラ国内の政治・社会的な混乱を受け、近隣諸国の動きも活発となっている。コロンビアやペルーは大量の移民の発生を予測して国境警備の強化に動いていると伝えられている一方で、政治活動を行ってきた人物や組織が抑圧を受ける懸念もあるため、同国への支援も表明している。他方で、ベネズエラ航空当局は、ペルーとの間の航空便の一時停止措置(当面8月末まで)を決定、既にパナマやドミニカへの航空便の運航が停止されていることから、ベネズエラ市民の移動が制限され始めている。ベネズエラの混乱は続く。
[ミャンマー] 通貨チャットが急落し、7月30日昼には過去最安値の1米ドル=5,300チャットにまで下落した。急激な下落により、実勢の非公式レートと、軍政が支配するミャンマー中央銀行(CBM)が設定した公式レート(1米ドル=3,374チャット)との間に1,900チャット以上の差異が生じた。軍政は安定化に注力しているが、一向に収まらない状況である。物価上昇を抑えるため、軍政は価格統制を強化しており、その対象は両替レート、燃油、パーム油などだったが、2024年以降は、コメ、医薬品、海外不動産取引なども追加された。
[マリ/ロシア/ウクライナ] 7月31日、マリ軍は反政府勢力が拠点とする北部のアルジェリア国境のティンザンアテンで空爆を行った。7月22~27日、マリ軍およびロシア・ワグネルの部隊と、マリからの分離独立を掲げるトゥアレグ族の反政府勢力(CSP-PSD)およびアルカイダ系イスラム過激派組織JNIMとの間で衝突が発生し、マリ軍・ワグネル側に数十名の死傷者が生じた。今回の空爆はこれにマリ軍による報復だと報じられている。ロシア政府から公式な発表は行われていないが、7月29日、ウクライナ国防省情報総局(GUR)は「反体制派は必要な情報を得ていた」とウクライナの関与を仄めかす発言を行った。
[イスラエル/パレスチナ] 7月31日、イランの新大統領就任宣誓式に出席するためにテヘランに滞在していたイスラム主義組織ハマスのハニーヤ政治局長が暗殺された。午前2時頃に宿泊先に対する誘導弾での攻撃があったもようで、ボディーガード1人も同時に亡くなった。犯行声明は出ていないが、ハマス幹部の殺害を進めるイスラエルによるものと見られており、ハマスは報復を示唆。客人であり支援する代理勢力の幹部が自国内で殺害されたことで面目を潰されたイランのハメネイ最高指導者も、ハニーヤ氏の死に報復するのはイランの義務だと述べた。
[米国/中国] 8月1日より、米国は対中301条関税の一部引き上げを予定していたところ、7月30日、米通商代表部(USTR)は最終決定を延期すると発表している。6月末までにUSTRに寄せられた1,100件以上のパブリックコメントの精査中であることをもって延期の理由としている。USTR発表によると、8月中に最終決定を行い、その2週間後に新関税率の適用が始まる予定。5月にUSTRは通商法301条に基づく対中関税率の引き上げを発表しており、当初は8月1日より鉄鋼・アルミ、電気自動車、太陽電池などの関税率が引き上がる予定だった。
[米国] トランプ前大統領はホワイトハウス奪還をともに目指す副大統領候補に、弱冠39才のオハイオ州選出のバンス上院議員を指名してバンス氏は同指名を受諾し、共和党全国党大会は7月18日に閉幕した。だが、翌週にバイデン大統領が大統領選からの撤退を表明し、後継指名されたハリス副大統領が事実上の民主党大統領候補指名を確実にするなど政治状況が大きく変化する中、バンス氏が過去にハリス氏について「子どものいない猫好きの女性たち」と発言したことに批判が集まっている。
[EU/ウクライナ] 欧州委員会が、ロシア中央銀行の凍結資産からの利益を財源とする15億ユーロを、7月23日にウクライナに送金したことを発表した。欧州委員会の発表によると、15億ユーロのうち14億ユーロが防空システム・弾薬調達などの軍事支援、1億ユーロが政府支援・復興目的に使用される見込み。
[米国/中国/日本] バイデン米政権は、中国など米国にとっての懸念国の特定企業が先端半導体技術にアクセスできないようにするための輸出規制を強化するため、9月、一部の外国からの半導体製造装置の輸出を阻止する米国の権限を拡大する新ルールを発表する予定だが、日本とオランダ、韓国などからの輸出は除外され、新規則の影響は限定的なものになると、ロイターやブルームバーグが報じている。この新規則はまだ草案の段階で、変更される可能性もある。ロイターの同報道後、ASMLと東京エレクトロンの株価はそれぞれ11%、7.4%上昇した。
[ミャンマー] 7月31日、ミャンマーの国防治安評議会が2021年2月のクーデター時に発令した非常事態宣言の6か月間延長を発表した。同宣言の延長は6回目。ミンアウンフライン「暫定大統領」は、少数民族武装勢力や国民防衛隊(PDF)の「テロリスト」による抵抗が続いており、国家の平和と安定を早期に実現する必要があると述べた。また経済について、「悪徳な実業家」が通貨や物価の安定を阻害していると非難した。「自由で公正な多党制の民主選挙」を実施するため、正確な有権者名簿を作成する必要があり、10月にはそのために国勢調査を実施するとの方針をあらためて示した。軍政は2025年に総選挙を行う方針を示している。次回の国防治安評議会は2025年1月31日に予定されており、ここで宣言が解除されれば、同年8月までに選挙が実施されることになる。
[ロシア] 統計局によると、2024年第二四半期の実質可処分所得は前年同期比+9.6%だった。2013年以来の高い上昇率となっており、背景には、国内における深刻な労働力不足がある中、2024年6年の失業率は2.4%で史上最低となっており、企業は人材不足に対応するため、引き続き賃上げを行っていることなどがある。
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