デイリー・アップデート

2024年8月19日 (月)

[鉄鋼] 鉄鉱石のベンチマーク価格は1トン92ドル台と、1週間で約9ドル・年初比3割超下落し、2022年以来の安値圏。中国では建設部門の落ち込みで、国内の鉄鋼需要はピークアウトの様相。中国からの大量輸出で世界的に鋼材価格は低迷し、貿易摩擦も強まっている。7月の三中全会で政策支援も乏しく、また建設用鉄筋の新品質基準が、発表からわずか3か月後の9月から施行される運びとなったことも鋼材在庫の投げ売りを招いている。中国の7月の粗鋼生産量は8,294万トンと、前年比・前月比とも▲9%。鉄鉱石在庫は増加が続く。鉄鋼生産で世界トップシェアの宝武鋼鉄集団の胡望明会長は、「鉄鋼業界の『冬』(危機)は思った以上に長く、寒く、困難」で、2008年や2015年の不況時より状況は悪いと述べた。

[南部アフリカ開発共同体(SADC)] 8月17日、SADCは、第44回首脳会合をジンバブエの首都ハラレで開会した。加盟16か国中15か国の首脳級が参加した同会合において、エリアス・マゴシSADC事務局長はエルニーニョによる干ばつや洪水の影響により加盟国の総人口の約17%となる6,770万人が被災しており、55億ドル規模の人道支援を必要としていると述べた。また初日に発表された共同声明において、域内のコンゴ民主共和国(DRC)から感染が拡大しているエムポックス(旧サル痘)の対応については、加盟国間および世界保健機関(WHO)等国際機関との連携を強化していくとした。

[カナダ] カナダの2大鉄道会社である「カナダ太平洋カンザスシティ鉄道(CPKC)」と「カナディアン・ナショナル鉄道(カナダ国鉄)」は労働組合との協議が難航している。今後、ストライキの発生で米国との国境貿易に影響が出る可能性があるため、危険物や冷蔵製品など特定の貨物の受け入れを停止する措置が取られており、8月20日には、カナダ発の貨物とカナダに輸入される貨物輸送も一部停止される見通しだ。労働協約は2023年末に期限切れとなっていたが労使協議が延長され今日に至っている。数日内で解決するとの見方がある一方で、長期化への懸念も燻っており予断を許さない状況が続いている。米国でも2年前に鉄道ストライキが起こりかけたが、政府・議会の介入によりストライキは阻止され、その後の待遇改善につながってきたことから、政府の介入を期待する声も聞かれている。なお、トラック輸送には余剰キャパがあるようだが、すべてを置き換えることはできないとみられている。

[日本] 内閣府「機械受注統計調査」によると、6月の民需(船舶・電力を除く)の受注額は前月比+2.1%と、3か月ぶりに増加した。4~6月は前期比▲0.1%と、2四半期ぶりに小幅に減少したものの、見通し(▲1.6%)ほど減少しなかった。基調判断は「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置かれた。また、7~9月の見通しは前期比+0.2%と予想されている。仮に見通し通りになれば、2四半期連続でおおむね横ばい圏で推移することになるため、設備投資の弱い動きが続きそうだ。

[米国] Washington Post/ABC News/Ipsosは、8月9~13日の5日間、1,975人の登録有権者を含む2,336人の成人を対象にした最新世論調査を共同実施し、8月18日に結果を公表した。7月21日に現職バイデン大統領が撤退を表明し、後継候補に指名されて正式に民主党大統領候補の指名を獲得したハリス副大統領は、トランプ氏に対する民主党大統領候補としての立場を大幅に改善しており、全米レベルでの直接対決では、ハリス氏支持49%、トランプ氏支持45%となった。民主党支持者の間での熱気も大幅に改善されている。

[中国/ベトナム] 8月18~20日、習近平国家主席の招へいにより、ベトナムのトー・ラム書記長・国家主席が中国を訪問している。18日に広州に到着、ホーチミン元書記長が中国で革命活動を行った跡などを見学した後に北京に移動し、習近平国家主席らと会談する予定。中国メディアは、トー・ラム氏が書記長就任後の初の外遊先に中国を選んだのは、中国との関係を最優先にする姿勢を表していると報じている。中越両国の会談は、昨年(2023年)12月に習近平国家主席の訪越時に続くもの。

[タイ] 8月14日、憲法裁がセター首相の解職の請求を認める判決を言い渡した。同首相が閣僚に就任する資格を欠く人物を閣僚に任命したことは憲法の倫理基準の重大な違反にあたるとして、上院議員らが解職を請求していた。8月16日、下院はタイ貢献党のペートンタン党首を次期首相に選出し、18日、同党首が首相に就任した。連立政権はそのまま維持されており、ペートンタン首相は近く内閣を発足させる。

[イスラエル/パレスチナ] 8月15日と16日、カタールのドーハに米国、カタール、エジプト、イスラエルの代表が集まり、ガザにおける停戦と、ハマスによる人質解放などを求める交渉が実施された。ハマスは直接交渉には参加せず、カタールの代表と調整を行う形で行われたが、2日間の交渉では協議がまとまらず、今週改めてエジプトのカイロで交渉が行われる予定。協議の進展次第では、ハマスのハニーヤ政治局長暗殺に関してイスラエルへの報復を宣言したイランが報復を回避する可能性もあり、交渉の行方が注目されている。

[米国] 8月16日、ハリス副大統領はノースカロライナ州において、自身が掲げる経済政策について演説を行った。食品・日用品・医薬品等の価格抑制、中間層による住宅取得を促進するための税控除、児童税控除の拡充などを発表した。都度、トランプ前大統領が掲げる経済政策と対比し、自身の公約が広く国民を支援する内容であることを強調。また、食品等の物価高騰は一部の企業による、不当な便乗値上げが理由であると指摘した。経済政策の財源についての言及はなかった。

[ウクライナ/ロシア] ウクライナ軍がロシア西部クルスク州への越境攻撃を続けている。ウクライナ軍によると同州内の制圧地域は東京都の半分程度の約1,150平方km、計80集落に及ぶ。また、ウクライナ軍が8月16~17日、クルスク州内の川にかかる重要な橋を破壊し、同州におけるロシア軍部隊の移動と補給ルートの妨害を試みている。一方、ロシア軍も同様にウクライナ東部で進展をみせており、ここ数週間、ロシア軍がウクライナ東部でいくつかの町を占領したとの主張がみられる。

[ドイツ] 8月17日付のFrankfurter Allgemeine Zeitung紙によると、リントナー財務相がピストリウス国防相に対して、ショルツ首相(社会民主党・SPD)の要請により新たな軍事支援申請が承認されなくなったことを通知した。ドイツは年間80億ユーロの対ウクライナ支援計画を発表しているが、財政難を理由に、2025年は40億ユーロへと半減するとみられている。

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