デイリー・アップデート

2024年8月26日 (月)

[ブラジル] 2025年予算案に注目が集まっている。政府が議会に予算案を送付する期限は8月31日。政府が現在GDPの0%としているプライマリーバランス目標に対し、給与税減税の延長や、拡大している社会事業に対する取り組みに焦点が当てられる。

[ケニア] 8月23日、大手格付け会社S&Pグローバルは、ケニアの長期ソブリン格付けを「B」から「B-」に引き下げた。見通しは「安定的」とした。S&Pは格下げの理由について、政府が増税を含む「2024年財政法案」を撤回したことにより財政再建が遅れ、中期的に債務が増加し続ける可能性があること。また、2024~2027年にかけて債務返済コストが政府歳入の30%を超える水準が続くためとした。7月のムーディーズによる格下げ、8月2日のフィッチによる格下げの発表に続いた形だ。大手格付け3社による格下げによりケニア政府の資金調達コストが上昇し、さらに財政再建の重しとなる恐れがある。

[バングラデシュ] 8月19日、バングラデシュ銀行(中央銀行)は、複合企業であるSアラム・グループ傘下の6つの銀行に対し、財務状況の悪化を理由に融資を制限する通達を出した。融資が制限されたのは、イスラミ・バンク・バングラデシュ、ファースト・セキュリティ・イスラミ・バンク、ソーシャル・イスラミ・バンク、ユニオン・バンク、グローバル・イスラミ・バンク、バングラデシュ・コマース・バンクの6つの銀行。これら6つの銀行については、数週間前からSアラム・グループによる巨額の不正融資疑惑が報じられいた。Sアラム・グループは2017年から2024年6月までの間に、子会社や関連会社を通じて6つの銀行から総額9,533億1,000万タカを借り入れていたとみられるが、そのうち79%はイスラミ・バンク・バングラデシュからの借り入れであった。8月21日、中銀はこの問題に関連して、イスラミ・バンク・バングラデシュの取締役会を解散し、Sアラム・グループの支配から銀行を解放するために独立した取締役を一時的に任命することを決定した。

[米国] 8月23日、パウエルFRB議長はジャクソンホール会議で講演し、金融政策を調整する「時が来た(”Time has come for policy to adjust”)」と述べた。物価上昇率が持続的に2%に向かう「確信が強まった」とした一方で、「物価上昇の上振れリスクは後退し、雇用への下振れリスクが高まった」と、雇用悪化は歓迎されないという認識を明らかにした。ただし、具体的な利下げ時期やペースについては、今後のデータ、見通し、リスクバランス次第として、明言を避けた。

[米国] 全米各地の大学は9月に新学期を迎えるが、キャンパスにおいて、パレスチナとの連帯を訴える一方でイスラエルを批判する抗議デモが再発する可能性に、大学当局や警察当局は警戒を強めている。10月7日、パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配しているイスラム組織ハマスがイスラエルに対する大規模攻撃を行ってから1周年となり、また、11月5日には米国大統領選挙の投票日を迎えるために、キャンパスでの緊張が再び高まり、学生生活が混乱に陥る可能性が浮上している。

[インドネシア] 5月、最高裁は、地方首長選の候補者の年齢要件は立候補時ではなく就任時に満たしていればよいとして、立候補年齢を実質的に引き下げる判断を示したが、8月20日、その判断を変更し、中央選挙管理委員会が候補者を決定する前に満たしている必要があるとの判決を言い渡した。これにより、11月27日に予定されている中部ジャワ州知事選にジョコ大統領の次男カエサンPSI党首が出馬することは不可能になった。また同日、最高裁は、地方首長選の候補者の政党推薦要件を緩和する判決を言い渡した。これにより、11月27日に予定されているジャカルタ特別州知事選に闘争民主党が支持する候補者が出馬することが可能になり、アニス・バスウェダン前同州知事が同党の支持を受けて出馬する可能性が生まれた。これに対し、国会は当初、憲法裁の判決に合致しない内容の地方首長選挙法の改正案を可決しようとしたが、抗議デモが起き、法改正は取りやめとなり、憲法裁の判決に沿った内容で選挙が行われる見通しになった。

[イスラエル/レバノン] 8月25日、レバノンのシーア派組織であるヒズボラは、7月にベイルートでイスラエルがヒズボラの幹部を殺害したことに対する報復として、イスラエル北部に向けて320発のロケット砲とドローンによる攻撃を実施したと発表。イスラエル軍は、ヒズボラの攻撃を事前に察知して、戦闘機100機によるレバノン南部への先制攻撃で1,000か所以上のロケット砲発射台などを破壊したと発表した。イスラエル、レバノン双方でそれぞれ1人が死亡した。イスラエル北部・レバノン国境での緊張が高まっている。

[米国] 8月23日、商務省はインド太平洋経済枠組み(IPEF)のサプライチェーン合意の下、締約国間で具体的な協力を行うための対象分野案を公表した。農業、重要鉱物、ロジスティックスなど計8分野を挙げ、エネルギー・環境関連では、より具体的に電池、CCS、水素、永久磁石、原子力などの技術を提案している。今後、IPEFサプライチェーン理事会で各国案を検討し、重要分野・重要物品を特定の上、行動計画を策定し、サプライチェーンの多様化やボトルネックの緩和などを行う。

[ウクライナ/ロシア/アラブ首長国連邦(UAE)] 8月24日、ウクライナ、ロシア両政府は、戦争捕虜を115人ずつ交換したと発表した。ロシア側の捕虜はウクライナが今月から越境攻撃を続けるクルスク州で捕らえられた新兵だった。UAEが仲介した。ロシアとウクライナの捕虜交換は、ロシアが侵攻を始めてから55回目となる。

[ドイツ] 8月23日夜にドイツ西部ノルトライン・ウェストファーレン州のゾーリンゲンでナイフによる襲撃事件が発生し、3人が死亡し、8人が負傷した。翌24日に、警察により難民施設に滞在していた人物を含む3人が容疑者として逮捕されている。9月に旧東ドイツの3州で州議会選挙が予定されており、そのすべての州で、極右で移民排斥を訴える「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持率トップを示す世論調査結果が出ている。

[中国] 中国工業情報化部は先週(文書の日付は8月23日)、鉄鋼生産能力代替計画の停止に関する通知を発表した。関係者と協力して鉄鋼生産能力代替手法の検討・見直しをしていく、と通知されている。鉄鋼生産能力代替政策は、2015年に初めて導入され、政府は2020年1月にも「鉄鋼生産能力の代替とプロジェクト申請作業の改善に関する通知」を出し、鉄鋼業の転換・高度化、再編、配置の最適化を推進してきたが、企業や地方政府はさまざまな方法で鉄鋼生産能力を継続的に拡大し、新たな生産能力について偽装してきた。需要が減少する中、今回の措置は、政府が急ブレーキをかけようとしているためという見方もある。

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