デイリー・アップデート

2024年8月30日 (金)

[日本] 経済産業省によると、7月の鉱工業生産指数は前月比+2.8%となり、2か月ぶりに上昇した。全15業種のうち電子部品・デバイス工業や電気・情報通信工業など14業種で生産が増加した。基調判断は、「一進一退ながら弱含み」から「一進一退」に上方修正された。上方修正は2023年3月以来。製造工業生産予測指数は8月に+2.2%、9月に▲3.3%となった。ただし、8月の補正値は▲0.9%であり、向こう2か月、生産が弱い公算が大きい。

[ナイジェリア/ニジェール] 8月29日、ナイジェリアとニジェールは安全保障協定に署名し、地域の安定・安全のために協力を強化すると発表した。2023年7月のクーデターにより軍事政権が発足したニジェールに対し、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の議長国のナイジェリアは、武力介入での威嚇や経済制裁の発動(2024年2月に解除)を行ってきたが、この発表は両国間の関係改善の大きな兆しとみられる。これにより対・イスラム系過激派組織・ボコハラム作戦としてナイジェリア、ニジェール、カメルーン、チャドの4か国が連携する「チャド湖流域多国籍統合任務部隊(MNJTF)」へのニジェールの関与が再び強まるもよう。

[中国] 国家統計局が発表した7月単月の工業企業利益は、前年同月比+4.1%で、2か月連続で拡大した。製造業の利益は+5.0%、採掘業は▲9.5%、電力・熱・ガス・水の生産・供給業は+20.1%であった。設備製造業の利益は+6.1%、消費財製造業は+10.2%、ハイテク製造業は+12.8%となり、リチウムイオン電池製造は+45.6%、半導体設備製造は+16.0%であった。国有企業の利益は+1.0%、民間の株式企業は+1.9%、外資企業は+9.9%であった。長引く不動産不況が中国経済の重石になっている。しかし、経済学者は依然として中国の経済基盤を弱いとみているものの、一部の専門家によれば、工業利益が増加していることは、製造業振興策が成果を出し始めていることを示唆しているという。

[米国] 2021年秋にインフラ投資・雇用法の一環として可決された環境保護庁からの50億ドルの資金注入は、各地域での車両電動化を後押ししている。米連邦政府の補助金は、電動バス購入資金として提供され、いくつかの州の資金不足を補うのに役立っている。電動バスは、燃料費削減、温暖化効果ガス排出抑制だけではなく、430万人の児童が患っている喘息のリスクを抑制するなど、子どもの健康を守る効果も期待されている。研究機関のデータによれば、800以上の学区で少なくとも1台の電動バスが運行されており、さらに1万2,000台分相当の資金が確保されているが、スクールバス全体の2.5%にすぎず資金は十分ではない。また、次期政権によってこの補助金が減額されるリスクもある。

[イスラエル/パレスチナ] 8月28日未明からイスラエル軍は、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区において、過去20年で最大規模の軍事作戦を開始した。イスラエルは数百人の兵を投入し、戦闘機や無人機、ブルドーザーなどを使って、道路を封鎖して市街地や難民キャンプを襲撃。既にパレスチナ人17人が死亡している。道路や水道管、電線、家屋や学校などを破壊した。この事態を受けてパレスチナのアッバス大統領は、サウジアラビア訪問を早く切り上げて帰国。大統領府はイスラエルの攻撃を強い言葉で非難している。

[米国/中国] 8月29日、中国を訪問しているサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、習近平国家主席と会談を行った。米中間で対話チャンネルを維持する努力を歓迎し、今後数週間内に首脳間の電話会談を実施することを確認した。サリバン補佐官は中央軍事委員会の副主席とも会談し、軍当局者間で定期的に対話を行うことの重要性について合意した。その後の記者会見にて、サリバン補佐官は、2024年11月に開催予定のG20、APEC会合にて両国首脳が参加する可能性に言及し、首脳会談開催の展望を示唆した。

[米国] 8月29日、ハリス副大統領は事実上の民主党大統領候補指名を確実にして以降初めてメディアとのインタビューに応じた。ハリス氏は副大統領候補のウォルズ知事とともにCNNの単独インタビューに応じたが、トランプ陣営のみならず、主要メディアからも、自らの具体的政策を説明せず、また、公式の記者会見にも応じていなかったハリス氏のメディア対応に関して批判が高まっていた。米国大統領選挙での投票行動をいまだ決めかねている有権者に対しても政策説明は重要となる。

[ロシア/モンゴル] ロシアのプーチン大統領は、9月3日にモンゴルを公式訪問すると発表した。1939年に当時の満州国(現中国東北部)とモンゴルの国境で日本軍とソ連軍が衝突した「ノモンハン事件」から85年となったことに合わせ、事件後の停戦合意を「対日戦勝」として祝う式典に参加する。モンゴルは国際刑事裁判所(ICC)の加盟国であるが、ロシア側とプーチン氏の身の安全を保証する約束をしたもようである。

[EU/ハンガリー] 8月29日に非公式のEU外相会合が開催されたが、通常のEU議長国での開催ではなく、EU本部があるブリュッセル(ベルギー)での開催となったことから、現議長国のハンガリー政府とEU側との対立が改めて明確になった。会合ではウクライナ情勢、中東情勢、ベネズエラ情勢に関する協議が行われた。

[オランダ/中国] オランダの政府は、同国の半導体製造装置メーカーASMLの中国における修理やスペアパーツ提供の保守契約について、2024年末に失効するものの更新を認めない可能性が大きいと、8月29日付のブルームバーグ紙が報じている。この決定が実施された場合、ASMLの深紫外線露光装置(DUV)が対象となる見込み。米政府はオランダや日本に対して、対中規制策を米企業に対するものと同等の内容にするよう圧力をかけたが、ルッテ前首相率いるオランダ政府は、輸出規制措置の影響を評価するためには時間が必要だとして抵抗していた。元情報機関トップであったディック・シューフ現首相は、中国に対してより厳しい見方をもつと見られている。

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