デイリー・アップデート

2024年8月22日 (木)

[ブラジル] 国内の金融資産が年初から低迷している。ブラジルの株式と債券はほかの新興国のパフォーマンスを下回っており、通貨レアルの減価幅も大きいため、特にドル建てで見た場合にその傾向が顕著となっている。その一因として、財政の安定と中央銀行の独立性に対する懸念が指摘されている。

[カナダ] カナダでは鉄道会社での労使交渉が続いている(日本時間8月22日10時、現地時間8月21日21時現在)。合意が無ければ、交渉期限として設定されている22日0時過ぎると9,000人以上の組合労働者を企業側がロックアウトする予定となっている。企業側は交渉が難航していることもあって、拘束力のある政府仲裁を求めているが、政府は現在のところ当事者交渉による事態の進展を見守る立場をとっている。貨物輸送の8割を占めるとされる鉄道輸送が一時的にでも停滞すると、影響は甚大になる。ある団体の試算によれば毎日7.3億ドル相当の商品が鉄道を通じて輸送されている。小麦はストライキの長期化懸念が材料となって上値が重くなり、価格は下落した。食料品のほかにも、肥料など化学製品、木材製品や製紙などへ影響が拡大し、状況次第ではインフレ再加速も懸念されることから、米加当局を含む関係者は事態の推移を注視している。

[タイ/インドネシア/韓国] 8月21日、タイ中央銀行は、金融政策委員会で政策金利(翌日物レポ金利)を2.5%に据え置いた。据え置きは5会合連続。国内経済は堅調に推移しており、早期の利下げは不要と判断した。委員7人のうち6人が据え置きを支持し、1人が0.25%ptの利下げを求めた。国家経済社会開発評議会によると、2024年の経済成長率は2.3%から2.8%になると予測されている。そのほかのアジアでも、8月21日にインドネシア、22日に韓国がそれぞれ政策金利である7日物リバースレポ金利、翌日物レポ金利を6.25%、3.50%に据え置いた。

[米国] 8月21日、連邦準備理事会(FRB)は、7月30~31日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した。FOMC参加者全員が政策金利据え置きを支持した中で、数人が7月会合での0.25%pt利下げには妥当性があったこと、足元の物価や雇用の状況がそのような決定を支持することもあり得たことを指摘していた。また大多数が、経済指標が予想通りに進展すれば、次回9月会合での金融緩和が適切になり得るという認識を示していた。

[米国] 無所属で米国大統領選挙に出馬しているロバート・ケネディJr.候補が撤退する可能性が浮上している。ケネディJr.氏の副大統領候補であるシャナハン氏が大統領選挙からの撤退の可能性を示唆している。8月23日、ケネディJr.氏は、自らの選挙キャンペーンについて演説を行う方針だが、同氏は撤退し、共和党のトランプ前大統領への支持を表明する可能性が指摘されている。ケネディJr.氏については第2期トランプ政権が発足した場合、入閣の可能性が浮上しているとの見方もある。

[インドネシア] 8月21日、与党ゴルカル党がバフリル・ラハダリア氏(エネルギー・鉱物資源相)を新党首に正式に選出した。アイルランガ・ハルタルト前党首(経済担当調整相)は8月11日に党首を辞任し、ゴルカル党は20日からジャカルタで全国党大会を開き、同日にバフリル氏を新党首とすることを決めていた。なおバフリル氏は19日に行われた内閣改造で、投資相からエネルギー・鉱物資源相に横滑り就任していた。プラボウォ次期政権への移行を見据えた動きが、ジョコ政権や各政党において活発化しているとみられる。

[イラン] 8月21日、イランの国会は、ペゼシュキアン新大統領が提出した19人の閣僚名簿に対する投票を行い、これを信任した。閣僚全員が一度で信任されたのは2001年以来初めてのこと。新政権の特徴として、平均年齢が60歳以下と若いこと(最年少は48歳の通信情報技術相)、12年ぶりに女性閣僚(道路・都市開発相)が入閣したこと、19人中14人が初入閣であることなどが挙げられる。また、ライーシ前政権からの留任者もおり、国会で大多数を占める保守派にも配慮した顔ぶれとなっている。外相にはアラグチ元駐日大使が就任。

[米国] 8月20日、米国防総省報道官による定例会見にて、ウクライナ軍によるロシア・クルスク州侵攻に対する米国政府の姿勢をメディアから問われる場面があった。ウクライナ軍がロシア領内に長射程兵器で攻撃を加えていること、クルスク州に侵攻していることなどに対し、米国政府による承認の有無についての質問が相次いだが、報道官は、ウクライナの国家としての存続が可能となるよう支援していくことが米国政府の方針、と繰り返すにとどまった。クルスク州の占領を受けて、ロシア軍部隊が同地に向けて移動していることを米軍としても認識していることは明らかにした。

[南アフリカ] 8月21日、統計局(Stats SA)は7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で+4.6%と発表した。6月の同+5.1%から低下し、2021年7月ぶりの低水準となった。南ア中銀がインフレ目標とする+4.5%にさらに近づいた形だ。主に食品・飲料のインフレ率の低下と、5月末に実施された総選挙後の通貨ランドの対ドルでの上昇に伴う燃料価格の低下がインフレ率の低下をもたらした。今回の発表を受け、市場では南ア中銀が9月に実施される金融政策委員会(MPC)で2023年5月から+8.25%で維持されている政策金利を25bp引き下げるとの観測が広まっている。

[チェコ] パヴェル大統領が8月19日のインタビューで、ウクライナのNATO加盟に関して、「全領土の完全な回復は前提条件ではない」と発言した。パヴェル大統領は、2012年から2015年までチェコ陸軍参謀長、2015年から2018年までNATOの最高軍事機関の軍事委員会の委員長を務めた経験があり、軍事経験が豊富であることから、NATOの内部事情に関する知識を持つとされる。

[中国] 8月20日付のWSJ紙は、米大学の研究者が行った中国全土の数万人を対象とした世論調査について取り上げ、中国民衆の間で現政権の経済的リーダーシップに対する信頼が低下していること、また、将来に対する悲観的な見方が強まっていることを指摘している。かつては広範な楽観主義が存在し、(個人の)失敗は単に努力が足りなかった結果という見方が主流であったが、現在は中国の非功利的な社会秩序が変化しない限り、どれだけ努力しても報われないと考える人が増えている。これは政治的不安定性を示唆するわけではないが、政府が掲げる構想に対する消極的な抵抗になっていると指摘している。

[中国/ロシア] 8月20~21日、中国の李強首相が、ロシアを訪問し、首都モスクワでプーチン大統領やミシュスチン首相と会談し、両国の協力強化で一致した。プーチン大統領は中ロを含む主要新興国で構成する「BRICS」などの多国間枠組みで中国と緊密に協力し、中ロの全面戦略協力パートナーシップ関係を、さらに発展させたいと述べた。李首相はロシア訪問後、ロシアの同盟国ベラルーシを訪問する。

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