デイリー・アップデート

2024年12月11日 (水)

[日本] 内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」によると、10~12月の大企業全産業の景況判断指数(BSI、前四半期に比べて「上昇」「下降」の回答割合の差)は+5.7%だった。プラスは3期連続だった。先行きについても、2025年1~3月、4~6月はプラスの見通しであり、企業の景況感が緩やかに回復していくことが予想されている。ただし、中小企業のBSIはマイナスで、2025年Q1にはマイナス幅が拡大する見通し。また、人手不足や企業設備の不足傾向も継続するとみられている。

[シリア/ロシア/アフリカ] 12月9日、米ブルッキングス研究所が発表した報告書によると、シリアのアサド政権崩壊によって、ロシアは、「アフリカ部隊」向けの補給基地として使用してきたシリアのタルトゥース海軍基地を失う恐れがあるため、ロシアが軍事支援を行うアフリカの軍事政権国家での活動に制約が生じる可能性があるとのこと。また、米・戦争研究所は、ロシアが仮にシリアの同基地を失えば、代わりにリビアやスーダンの港湾での補給強化に前向きになるとみられるが、両国とはシリアとのような正式な合意や既存の施設がないため、すぐにタルトゥースを代替する基地の設置は困難であるとの見方を示している。

[米国] 10月に港湾労働者のストライキが発生したが、6年間で61.5%の賃上げが労使間で合意され一旦ストライキは収束した。しかし、これは一時的なものに過ぎない。ほかにも解決が必要な問題はあり、その中でも最も重要なのは港湾での作業の自動化推進である。交渉は延長されたが期限はトランプ氏が大統領に就任する直前の1月15日に設定されており、バイデン政権は大きな置き土産を残した。労組はこの課題について話し合いすらも拒否しており、交渉は打ち切られたままだ。国際港湾労働者協会のダゲット会長は労働者の仕事を奪う自動化に強く反対しているが、そのことに対する批判的な意見も少なくない。世界銀行とS&P Global Market Intelligenceによる最近の調査によれば、米国の港湾は世界で最も効率の悪い港湾の一つだ。ロサンゼルス港とロングビーチ港はタンザニアのダルエスサラーム港やコンゴ共和国のポワントノワール港などに次いで、世界で最も効率の悪い港湾としてランク付けされている。また、米国の港ではコンテナ船の荷降ろしに1日から3日かかるが、これは日本で同じ条件の荷降ろしに0.36日しかかからない時間と比べるとかなり遅い。

[中国/台湾] 台湾国防部の発表によれば、12月9日~11日にかけ、中国人民解放軍の東部戦区、北部戦区、南部戦区の艦隊や海警船が台湾周辺に7か所の演習区域を設定して活動しており、10日の段階で海軍艦船60隻、海警船舶約30隻が展開、1996年の台湾海峡危機以来、最大規模の軍事演習を行っている。先週の頼清徳総統の外遊への反発のほか、米国や周辺国の介入を拒否する姿勢を示し、けん制する意図があるとみられる。今回の軍事演習について中国側は発表していないが、その理由として、習近平国家主席が安定的な米中関係維持を呼び掛けている最中であること、12月に台湾で大規模な両岸ビジネス会議が行われることなどが考えられる。

[インド] 12月9日、インド政府は10日に任期満了を迎えるインド準備銀行(RBI)のダス総裁の後任にサンジャイ・マルホトラ財務次官を起用すると発表した。任期は12月11日から3年。マルホトラ新総裁は中央政府や州政府で30年以上にわたり要職を務め、金融、税制、電力、IT等の幅広い分野で政策策定に関わってきた。2017年に導入された物品サービス税(GST)の改革にも関与した。ダス前総裁は18年12月に辞任したパテル総裁(当時)の後任として就任した。同前総裁も元財務次官であり、2代続けて財務官僚が起用されることになった。

[シリア] 12月8日にアサド大統領がロシアへ亡命し、アサド政権が崩壊したが、さまざまなアクターが絡むシリア各地での戦闘は現在も続いている。北西部から南のダマスカスへ進軍した反体制派軍は、10日シリア東部のデリゾールも支配したと発表。クルド系勢力が支配していた北部の町マンビジに対しては、トルコが支援する反体制派の一派であるシリア国民軍が攻め込み、クルド系の勢力は町から撤退。さらに、イスラエル軍がゴラン高原のシリアとの緩衝地帯を超えてシリア領内に侵攻したとシリアのメディアは伝えている。

[米国/ニカラグア] 12月10日、米通商代表部(USTR)は、通商法301条に則って、ニカラグア政府による人権・労働権の侵害、法の支配の否定にかかわる行為について調査を開始すると発表した。人権侵害等を理由にした301条調査は初めての試みとなる。今後、USTR・ニカラグア政府間の協議と並行して、省庁横断的組織が調査を実施し、その結果次第ではニカラグアからの輸入品に対する追加関税の賦課などの報復措置が実施される。米国のニカラグアからの財輸入総額は47億ドルで24億ドルの貿易赤字を計上している(2023年)。

[ブラジル] 12月9日、ルーラ大統領は激しい頭痛に襲われて首都ブラジリアからサンパウロ市内の医療施設に移送され、血栓を取り除くための開頭手術を受けた。緊急手術を行った医師団は、ルーラ氏が2か月前の10月に大統領官邸で転倒して後頭部を強打したのが原因と説明している。ルーラ大統領の術後の容態は安定しているが、新たな健康問題が浮上したことで、2026年大統領選挙での再選を懸念する動きが出始めている。

[ウクライナ/ロシア] 12月10日、米財務省は、ウクライナへの支援として200億ドル(約3兆円)を拠出すると発表した。ウクライナに侵攻したロシアへの制裁で凍結した資産から生じる利子を返済に充てる。欧州連合も2024年7月にロシア凍結資産の運用益15億ユーロをウクライナに送金すると発表し、ロシアはそれに強く反発している。報復措置として、国内にある欧米諸国や外資企業の資産などを差し押さえ、報復する可能性があるとみられる。

[EU/南米南部共同市場(メルコスール)] 12月6日に政治合意が発表されたEUとメルコスールの合意文書が12月10日に発表された。協定発効にはEU加盟国と欧州議会による批准が必要であることから、欧州委員会は「長いプロセスにおける第一段階」と控えめな発表にとどめている。ドイツとスペインは賛成の立場だが、フランスとポーランドが反対しており、発効の見通しは立っていない。

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