2024年12月17日 (火)
[マレーシア] 12月13日、国際通貨基金(IMF)は主要業務である加盟国に対して行う定期的な経済政策の監視・助言活動である「第4条協議」のためマレーシアを訪問し、経済政策「エコノミ・マダニ」に基づく財政改革を高く評価した。特に財政責任法(FRA)や電力・ディーゼル補助金の縮小などの財政健全化に向けた改革を歓迎した。金融政策については、中立的なスタンスが現時点で適切であり、インフレが上昇した場合、中央銀行は引き締めに備えるべきで、為替レートの柔軟性の維持も不可欠であると指摘した。
[インド/UAE] インドの11月の貿易赤字は378億4,000万ドルと過去最高。輸入総額699億5,000万ドル(前年同月比+27%)のうち、金輸入は148億6,000万ドルを占めた。根強い金投資需要がある。インド・UAEは2022年に包括的経済協定(CEPA)を結び、インドはUAEから金を関税5%で輸入できる。他国からの輸入関税は15%と高かったが、政府は密輸抑止のため新年度予算で6%に引き下げ、正規輸入も増えた。ただし、2022年以降の農産物輸出規制で、インドからの供給に頼る隣国で食料価格が高騰し、金と食料品の違法なバーター取引(インドの金密輸)が増え、現在も続いているとの報道もある。
[トルコ/スーダン/アフリカ] 12月13日、エルドアン大統領はスーダン国軍(SAF)を率いるブルハン主権評議会議長と電話会議を実施し、スーダンとアラブ首長国連邦(UAE)の間の対立をトルコが仲介できると述べた。スーダンではSAFと「即応支援部隊(RSF)」との間で内戦が2023年4月から継続。SAFはUAEがRSFに軍事支援を行っているとたびたび非難していた。11月にスーダン停戦に向けた国連安保理決議でロシアが拒否権を行使したことにより紛争終結の兆しが見えない中、12月11日にエルドアン大統領の仲介の下、和平合意に至ったエチオピアとソマリアに続き、トルコがスーダンの和平調停にも乗り出すとみられる。
[ドイツ] 12月16日に行われたショルツ首相に対する信任投票の結果、信任に必要な票を集められなかったことから、ショルツ首相がシュタインマイヤー大統領に連邦議会の解散を提案した。2025年2月23日に実施予定の解散総選挙で、政権交代が見込まれる。
[英国/中国] チャールズ英国王の弟アンドルー王子が中国人スパイと関わっていた疑惑が持ち上がり、実名が伏せられていた中国人容疑者の名前が公開された。クリス・ヤン(楊騰波)氏はアンドルー王子と「尋常でない関係」を築き、中国のためにスパイ活動を行っていた容疑で捜査されており、保守党はこのような活動は「氷山の一角」であるとして、外国の影響力登録制度(FIRS)を改正し、中国を「高リスク」と指定すべきだと主張している。改正を望む内務省と、企業への負担を懸念する財務省の間で意見が割れていると英国紙「The Guardian」が報じている。
[バングラデシュ] 12月16日、暫定政権のユヌス首席顧問が1971年の西パキスタンからの独立を記念する戦勝記念日のテレビ演説を行い、2025年末か2026年前半までに総選挙を実施する可能性があると表明した。総選挙の時期を公式に表明したのは初めて。同首席顧問は、政治的な合意があり、完璧な有権者名簿と小規模な改革が実現すれば、2025年末までに選挙を実施できる可能性がある、ただし、選挙改革委員会の勧告に従い、主要な選挙改革を実現するのであれば、さらに6か月先になる可能性があると述べた。
[シリア] 12月16日、ロシアに亡命したシリアのアサド元大統領がテレグラム(SNS)に自身の声明を発表した。声明によると、12月8日の早朝までダマスカスで執務していたが、テロ集団がダマスカスに攻め込んできたため、8日にラタキアにあるロシア軍の空軍基地に移動し、そこからロシア軍の協力を得てロシアに脱出したとのこと。アサド氏は、政権から下りることや国外に亡命することなどまったく考えていなかったが、シリア政府軍が散り散りばらばらになりどうすることもできなかったと述べている。
[米国/ハンガリー] 12月15日、マイク・ウォルツ次期大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はCBS Newsの日曜政治討論番組「Face the Nation」に出演し、ウクライナ戦争についても見解を表明した。12月9日、トランプ次期大統領並びにプーチン大統領のいずれとも良好な関係を維持しているハンガリーのオルバン首相は、フロリダ州のトランプ氏の邸宅を訪れて会談し、現在、プーチン氏と協議を行っているが、ウォルツ氏は両首脳の協議に期待を表明した。
[ロシア] ロシアでは2024年末に、テクノロジー企業や他の企業のIT部門で、ITスペシャリストの積極的な解雇が始まったと、一部の国内メディアが報じている。政策金利の高さとインフレ圧力などによる人件費や製造コストなどの向上で、国内企業の収益が減少したことが背景にあるとみられる。企業は金額の大きなプロジェクトを見送り、「最適化」に動いていると思われる。
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