デイリー・アップデート

2024年12月23日 (月)

[EU/LNG] EU は2022年に2027年までにロシア産化石燃料の輸入を停止する目標を掲げ、パイプライン経由のガス輸入を削減してきたが、ロシア産LNG輸入はむしろ増えており、2024年は1,650万トンと過去最高に達している。複数のEU加盟国は「脱ロシア」のためカタールと長期契約を結んだが、カタールはEUが2024年7月に発効した「企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)」が2027年に厳格適用されれば全世界売上高の最大5%相当の罰則対象になりうるとして、その場合EUにLNGを輸出しないと述べている。一方、トランプ米次期大統領はEUに対し、米国産石油ガス輸入を増やさなければ関税を掛けると警告している。

[フランス/アフリカ] 12月19~21日にマクロン大統領はインド洋の仏領マヨット島、ジブチ、エチオピアを訪問した。90年ぶりの大規模なサイクロン「Chido」で30名以上が死亡したマヨットでは、フランス政府による追加緊急支援を約束。ジブチではゲレ大統領と会談を実施し、アフリカ最大の仏軍基地があるジブチの戦略的重要性を強調した。エチオピアではアビィ・アハメド首相と共同記者会見を実施。マクロン大統領は、12月11日にトルコの仲介によりエチオピアとソマリアが和解を示した「アンカラ宣言」を歓迎したほか、エチオピア政府の債務再編の取り組みを支持。また、エチオピアの隣国スーダンで続く内戦について武器の放棄と停戦を呼びかけた。

[イエメン/イスラエル] 12月21日、イエメンの反政府勢力であるフーシ派がイスラエル中部に対して発射した弾道ミサイルがテルアビブに着弾し、16人が負傷した。2日前の19日にも、イエメンからのミサイルによりテルアビブ近郊に被害が発生し、同日イスラエル軍はイエメンのフーシ派拠点や発電所などのインフラを空爆したばかり。ネタニヤフ首相は、ビデオ声明でフーシ派に対する報復を誓った。22日には、米軍がイエメンのフーシ派関連施設を空爆したが、米巡洋艦が味方の戦闘機を誤って撃墜するなどの事件も発生している。

[米国/アフリカ] 12月21日、米通商代表部(USTR)は、アフリカ成長機会法(AGOA)適格国リストに変更がないことを発表した。これによって2025年1月以降も、AGOA適格国は32か国、非適格国17か国となる。2023年11月には、中央アフリカ共和国やニジェールなど4か国の対米輸出が優遇措置の対象外となることが発表されていた。AGOAは一定の条件の下、無関税で対米輸出を認めるもので、2023年実績は93億ドルだった。2025年9月には同法は失効する予定となっており、トランプ政権下での再承認を巡る議論が注目される。

[NATO] トランプ次期大統領は大統領就任後NATO加盟国の国防費支出を現在の対GDP比2%目標から倍増以上の対GDP比5%に増額するよう要求する方針を第2期トランプ政権で高官に就任するトランプ氏の側近の外交顧問が欧州各国の高官らとの協議で明らかにしていることが判明した。NATO加盟国32カ国のうち、現在のNATO加盟国の国防費支出目標対GDP比2%を達成しているのは23カ国のみであり、トランプ氏は大幅増額要求をする方針。

[バングラデシュ] 12月3日から18日にかけて、国際通貨基金(IMF)のスタッフはバングラデシュを訪問し、2024/25年度(24年7月~25年6月)の実質GDP成長率の見通しを3.8%とし、10月時点の4.5%から下方修正した。IMFは、民衆によるデモ、洪水、財政・金融政策引き締めによる経済的な損失の影響を反映した。一方、2025/26年度には財政・金融政策の緩和により6.7%に回復する見通しを示した。また、バングラデシュ当局は現在のIMF融資プログラムにおいて、約7億5000万ドルの増額を要請した。

[米国] 商務省によると、11月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+2.4%となった。上昇率は10月(+2.3%)から拡大、拡大は2か月連続だった。内訳をみると、食料品(+1.4%)が10月から上昇率を拡大した一方で、4か月連続で減少したエネルギー(▲4.0%)は下落率を縮小させた。エネルギーと住宅を除くコアサービス(+3.5%)は10月から横ばいと、高止まりしている。

[ロシア] ロシア中央銀行は12月20日、政策金利を予想外に21%に据え置いた。これまでの引き締めにより、インフレ率が目標に向けて低下する環境が整ったと説明した。市場は2%ポイントの引き上げを予想していた。

[中国/スウェーデン] スウェーデン政府は、バルト海で2本の海底ケーブルを切断した疑いのある中国貨物船「伊鵬3」に同国の検察官を乗船させることを拒否した中国を非難した。スウェーデン当局によると、中国政府はスウェーデン、ドイツ、フィンランド、デンマークの代表団をオブザーバーとして乗船させたが、刑事捜査のための検察官乗船は許可しなかった。その後、船は12月18日に同船に乗り込んだ中国調査員らとエジプトに向かっている模様。FT紙は関係者の話として、船への立ち入りにより、同船が事件に関与しているのはほぼ間違いないと報じている。

[ミャンマー] 12月20日、ラカイン州を中心に活動する少数民族武装勢力「アラカン軍(AA)」が同州アン郡区にある国軍の地域司令部を制圧したと発表した。国軍は全国14か所に地域司令部を置いているが、8月にミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)がシャン州北部のラショーの司令部を占拠しており、今回は2か所目の陥落となる。これに先立ち、今月中旬、AAはバングラデシュとの国境地帯を支配下に置いたと表明していた。

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