デイリー・アップデート

2023年5月26日 (金)

[中国/メキシコ] 米中貿易摩擦が続いており、コロナ禍での供給網の分断により物流が滞ってしまった経験から、製造業を中心とする一部の中国企業において、中国から直接米国へ輸出するのではなく、メキシコ国内に製造拠点を設け、そこから米国へ輸出するいわゆる「ニアショアリング」の動きが高まっている。中国企業がメキシコで製品を生産すると「メイド イン メキシコ」となり、その製品の対米輸出に対し米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が適用されると、免税対象となる。

[ドイツ] ドイツ連邦統計庁によると、2023年第1四半期の実質GDP成長率は前期比▲0.3%となり、速報段階のゼロ%から下方修正された。2022年第4四半期は▲0.5%であり、2四半期連続でマイナス成長になったため、簡便的に景気後退局面と判断される状態になった。供給網のボトルネックは解消しつつある一方で、物価高騰に伴う実質購買力の低下などから個人消費が減少している。先行きについて、ドイツ連邦銀行は5月の月報で、2023年第2四半期以降の緩やかな回復を予想している。

[ブラジル] 5月中旬の拡大消費者物価指数(IPCA)インフレ率は前月比+0.51%と鈍化した。食糧費や航空運賃の下落が大きく、またガソリン価格の値下げも今後影響してくる可能性がある。また、下院で政府の主要な新財政フレームワークが承認されたこともあり、今後、金融緩和を支持する論調が強くなってくる可能性もある。

[米国] 5月25日、米最高裁は水質浄化法の適用範囲について判決を下した。2006年判決で、航行可能な水域に隣接した湿地も、同法の執行を担う米環境保護庁並びに陸軍工兵隊による監督下にあるとされていたが、今回の判決では対象湿地の範囲が限定されることになった。バイデン政権は判決を精査した上で、今後の対応を検討すると発表。環境保護団体は、米国の膨大な湿地帯が開発等によって汚染されると反発している。米国の環境保護を担う柱の一つである水質浄化法をめぐる今回の判決は、米国の農地やエネルギーの開発に大きな影響を及ぼすと観測されている。2022年、最高裁は大気浄化法に基づく環境保護庁の規制権限に制約を加えている。

[米国] 5月24日、2024年大統領選の共和党候補指名獲得争いへの出馬を表明したフロリダ州のデサンティス知事は、新型コロナウイルス感染症対策で州経済の活性化や教育の再開を重視して、全米の他州に先駆けてロックダウンを解除した指導力があると、保守派有権者から称賛されている。他方、外交については未知数であるものの、2023年3月に「ウクライナ戦争は『領土紛争』であり、ウクライナの防衛支援は米国の国家安全保障上の優先課題ではない」と述べて批判を受けている。

[中国/ロシア] 5月24日、中国を訪れたロシアのミシュスチン首相は、中国の習近平国家主席と北京で会談した。両氏は両国間の経済協力強化の意志を表し、エネルギー協力にも力を入れると表明した。一方中国は、モンゴルを通過する新規ガスパイプラインを通じてロシア産天然ガスを中国に送る「シベリアの力2」の建設を急いでおらず、代わりに中央アジアのトルクメニスタンからの新規ガスパイプランの建設について優先的に考えているという報道もあった。

[米国/中国] 5月25日付のWSJ紙は、中国政府がマイクロン・テクノロジー社の製品購入を禁止する措置を発表したことに対し、米国内で報復を求める声が起こっていると報じている。ホワイトハウスでは報復策の一つとして、中国のサーバー大手インスパーグループ(浪潮集団)に対する規制の穴を塞ぐことが検討されているとしている。同社は2023年3月、米商務省のエンティティ・リストに追加されたが、同社の関連企業すべてが指定されたわけではなく、インテルやIBMなどの米国企業は同社への販売を継続している。米政府はこの報復措置をとった場合の、米関連企業への影響を検討しているとしている。

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