デイリー・アップデート

2024年6月10日 (月)

[ニュージーランド] 政府は、天然ガス埋蔵量の急減によるエネルギー安全保障上の課題やエネルギー自給率の引上げ、地域経済の発展などを理由に、前政権で導入されたNZ沖合での石油ガス探査の禁止を解除する方針だ。天然ガスは電力需要がピークの時や、風力、太陽光、水力などのより断続的なエネルギー供給源による発電量が落ち込んだときに、電気を照明を灯し経済を動かすために極めて重要だ、としている。政府声明によると、2024年後半に修正法案が提出される予定。ニュージーランド・ファースト党、ニュージーランド・アクト党、国民党との連立協定では合意されたが、緑の党は、気候変動危機の中で重大な後退であると反発している。

[インド] インド準備銀行(中央銀行)は6月7日、政策金利を6.50%に据え置くと発表した。据え置きは8会合連続。経済成長を維持しつつ、消費者物価指数(CPI)上昇率を2~6%の許容範囲に収めるために当面据え置くとみられる。CPI上昇率は2023年12月の前年同月比+5.69%から2024年4月の+4.83%まで緩やかに低下しているが、食品価格は高止まりしている。2023/24年度の実質GDP成長率は、前年比+8.2%、2024年1~3月期は前年同期比+7.8%だった。2024/25年度の実質GDP成長率は前年比+7.2%の見通し。モンスーン期の降雨量が平年より多く、農作物の収穫が増加し、農業を支えるとみられる。

[ザンビア] 6月4日、国際通貨基金(IMF)はザンビア向けの第3回拡大クレジットファシリティ(ECF)のレビューの結果、約4億ドルの融資枠の増額につき事務レベルで合意したと発表した。2020年に債務不履行に陥った同国は、2022年8月からIMFによる総額約13億ドルの財政支援を受けてきたが、2024年に入ってから続く深刻な干ばつによりマクロ経済環境が悪化していることから、IMFは融資増額に関する協議に前向きとみられる。IMFはまた、ザンビア政府が「G20共通枠組み」のもとで公的債権者との債務再編に関する合意に至ったこと、そしてそれに基づき民間債権者との協議も前進させている点を評価した。

[EU] 6月6日から9日にかけてEU加盟各国で行われた欧州議会選挙の結果、予想通り保守、右派、極右政党が議席数を拡大した。一方、緑の党グループや中道グループは大きく議席を落とした。ただし、中道左派、中道、中道右派グループなど親EU政党グループは過半数を獲得している。議席数を拡大した中道右派政党グループ「欧州保守改革グループ」の筆頭候補であるフォンデアライエン欧州委員長は、再任に期待を寄せたコメントを出している。

[韓国/中央アジア] 6月10~15日にかけ、尹錫悦大統領はトルクメニスタン、カザフスタン、ウズベキスタンを訪問し、さまざまな分野における二国間パートナーシップを強化するため、各国首脳と会談する。また、6月7日、韓国政府は、来年(2025年)、初の韓国・中央アジア5か国サミットをソウルで開催すると発表しており、今回の訪問はその土台作りも兼ねている。尹政権は「Kシルクロード協力構想」を推進しており、重要鉱物を含むサプライチェーンの構築・強化に取り組んでいる。

[オーストラリア] 6月5日、豪州の2024年1~3月期の実質GDP成長率が前期比+0.1%、前年同期比+1.1%だったと発表された。前期(前期比+0.3%、前年同期比+1.6%(改定値))から減速し、市場予想(+0.2%/ロイター)を下回った。物価高(1~3月期は前年同期比+3.6%)と高金利の継続(政策金利は4.35%)が消費と投資の重石となっている。輸出も伸び悩みが続いている。

[米国/サウジアラビア] 6月9日、米ウォールストリートジャーナル紙は、米国とサウジアラビア間における安全保障条約締結が間近であると報じた。ただし、この安保条約が成立するためには、イスラエルがガザ停戦、パレスチナ国家の承認などの条件に合意し、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化が成し遂げられる必要がある。バイデン政権が、イスラエルとサウジアラビア間の関係を正常化するための仲介外交を長らく試みてきたことは広く報道されてきたが、この度、イスラエルに決断を迫るべく、バイデン政権も重要な決定に至った模様。仮に条約署名に至った場合、米国では上院による条約承認が手続きとして必要になる。

[米国] 6月9日、CBS Newsは、全米の成人を対象とした大統領選挙に関する最新世論調査結果を公表し、バイデン氏支持49%、トランプ氏支持50%と接戦の展開であることが判明した。だが、「激戦州」6州を対象にした各種最新世論調査結果では、トランプ氏がほとんどの州で優位を維持している中、バイデン氏の劣勢がとりわけ顕著なのはアリゾナ、ネバダ両州となっている。2020年大統領選挙でのバイデン勝利を支えた若年層とヒスパニック系の「バイデン離れ」が鮮明になっている。

[ロシア] 6月7日、ロシア中央銀行は、金融政策決定会合を開き、政策金利を年16.0%で維持すると発表した。据え置きは4会合連続。中銀は声明で「次回会合で引き上げる可能性がある」と説明し、インフレ率を目標の4%に引き下げるには、長期の金融引き締めが必要と強調した。

[米国] 労働省の5月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月から27.2万人増加した。市場予想(+18.5万人)を上回る数字だった。また、失業率は4.0%となり、4月の3.9%から上昇した。2022年1月以来、28か月ぶりに4%台の失業率になった。平均時給は前年同月比+4.1%となり、4月(+4.0%)から上昇率を小幅に拡大させた。前月比は+0.4%であり、4月(+0.2%)から加速した。これらの結果は、雇用環境の底堅さを示しており、市場の利下げ観測を後退させる材料になった。

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