デイリー・アップデート

2024年6月17日 (月)

[アルゼンチン] 統計局が発表した5月のインフレ率は前月比+4.2%と、5か月連続で低下、2022年1月(+3.9%)以来の低水準となった。オムニバス法案の承認や、中国との通貨スワップ延長、IMFのレビュー承認なども追い風となるが、為替の減価圧力や、公共料金などの補助金を削減する必要性もあり、今後、物価を抑えるための課題も多い。

[米国/G7] 10月14日、バイデン政権は、ロシアの在外凍結資産をウクライナ支援に充てることについて、主要7か国(G7)の検討状況などについて追加情報を公表した。米国がウクライナへの融資として500億ドル相当の支援を行う予定だが、カナダから50億ドル、EUは融資総額の半額を提供する可能性がある。日本も金額未定だが貢献する予定、ただし、使途は復興関連に限定されるとみられる。各国が有する対ウクライナ支援枠組みを介して資金が流れるが、すでに設立されている多国間メカニズムが調整役を担う。ロシア凍結資産のほとんどを在ベルギーの国際決済機関、ユーロクリアが保持しているとみられるところ、欧州各国首脳がベルギー政府への働きかけを担うことになる。

[米国/ウクライナ] 6月13日にイタリアで開催されたG7サミットの初日にバイデン米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は首脳会談を実施するとともに、両首脳は、米国が今後10年間武器を継続的にウクライナに対して供与し、米国内や欧州の米軍施設でウクライナ政府軍兵士に対して軍事支援を実施することなどを柱とする米・ウクライナ安全保障協定に署名した。米大統領選挙でトランプ前大統領が当選した場合、同協定は2025年1月に破棄される可能性がある。

[アイルランド] アイルランドでは深刻なジャガイモ不足となっている。「35年でこんなことは経験したことがない」とレストランのオーナーは言う。これまでであれば、生産者が在庫を持っており市場で不足した際には販売していたが、完売した状態という。アイルランド農業協会は昨シーズンを「最悪」と評したが、昨秋の洪水や霜の影響で人気の晩成品種の多くが枯れてしまい、この春は平年の降雨量の倍以上かつ長引いた雨天により植え付けがほとんど進まなかったのでさらに悪化している。ほかの品種で調達できるものがあるが、「ギネス好きの人にハイネケンが美味しいといっても無意味だということと同じだ。」

[パキスタン] 6月7日に発表された2024/25年度(2024年7月から2025年6月)予算は、国際通貨基金(IMF)からの融資承認を得るための助けとなり、さらなる経済崩壊を防ぐ一方、増税により国民の負担が増え、反発される可能性がある。税収目標を前年度比+40%の13兆ルピー(470億ドル)に設定し、財政赤字を2023/24年度のGDPの7.4%から5.9%の7兆2,830億ルピー(261億ドル)に大幅に削減することを目指している。歳出は前年度当初予算比で+30.5%の18兆8,770億ルピー(677億ドル)であり、うち防衛費は2兆1,220億ルピーで、前年度比で+17.6%積み増した。歳出における最大項目は利払い費で9兆7,750億ルピー(351億ドル)と、全体の約52%を占めた。開発支出(純貸出を含む)は1兆6,740億ルピー(60億ドル、全体の約9%)に設定された。

[日本] 内閣府「機械受注統計調査」によると、設備投資に先行する民需(船舶・電力を除く)の受注額は4月に前月比▲2.9%と、3か月ぶりに減少した。2~3月に受注額が増加していたことを踏まえて、基調判断は「持ち直しの動きがみられる」に据え置かれた。内訳をみると、製造業が▲11.3%と、3か月ぶりに減少した一方で、非製造業(船舶・電力を除く)は+5.9%と2か月ぶりに増加した。

[ナイジェリア] 6月16日、国家統計局(NBS)は5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で+33.95%と発表した。4月の+33.69%からさらに上昇し、過去28年間で最も高い水準となっている。引き続き食品インフレ率が前年同月比で+40.66%となり2億人を超える国民生活を圧迫している。6月12日、ボラ・ティヌブ大統領は「民主主義の日」の演説において、このインフレをもたらす要因となった経済改革は国民に苦難をもたらしているが、将来のために改革を継続する必要があると国民に訴えかけた。6月13日、世界銀行はナイジェリアの経済安定化に向け、総額22億5,000万ドルの支援パッケージの提供を承認した。

[EU/ウクライナ/モルドバ] 現EU議長国のベルギーが、6月14日に開かれたEU大使会合で、ウクライナ、モルドバの欧州連合(EU)加盟交渉の枠組みに原則的に合意したことを発表した。また、6月25日には、初のEUと同2か国の政府間会議を招集することも発表された。6月7日、欧州委員会は同2か国が加盟交渉開始に必要な条件を満たしたと発表していた。ただし、ハンガリーやオランダが反対する可能性があり、実際の加盟交渉開始がとん挫する可能性はある。

[中国/世界] 6月17日、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)はシプリ年鑑2024年版を公表した。それによると、中国はほかのどの国よりも早く核戦力を拡大しており、2024年1月の時点で核弾頭を500発保有しており、大陸間弾道ミサイル(ICBM)は238、その数は10年以内にロシア(1,244)やアメリカ(800)を抜く可能性があるとしている。現在、推定12,121個の核弾頭が世界に存在し、ほぼすべての核保有国が核戦力の増強を計画するか推進しているため、運用可能な核弾頭の数が増える傾向は今後も続くと予測している。

[ニュージーランド/中国] 6月13日、中国の李強首相がニュージーランド(NZ)のウェリントンでラクソン首相と会談した。中国首相のNZ訪問は7年ぶり。両首脳は貿易、投資、人的交流、気候変動の協力強化等で一致した。NZは中国がCPTPP加盟を申請していることに留意し、CPTPPはオークランド3原則を満たすエコノミーが加盟できるオープンな枠組みであることを改めて表明した。ラクソン首相はインド太平洋の安全保障と経済的利益に言及し、南シナ海を含む戦略的状況への懸念を伝えた。李強首相はNZがAUKUSへの参加を検討していることへの懸念を伝えた。李強首相はNZの後、豪州とマレーシアに訪問する予定。

[イスラエル] 6月15日、イスラエル軍(IDF)はガザ南部のラファハ近郊で、IDFの戦車に対する爆発が起き、中にいた8人の兵士が死亡したと発表した。爆発が道路に仕掛けられたものなのか対戦車ミサイルによるものなのかは、現在調査中とのこと。IDFがガザへの地上侵攻を開始した10月27日以降に亡くなったIDF兵士は309人に上る。6月16日、IDFはガザ南部への支援物資搬入を促進するためとして、ラファハの一部での日中の「戦術的戦闘休止」を発表したが、ネタニヤフ首相とガラント国防相は「聞いていない」と反発している。

[ロシア/ウクライナ] 6月14日、プーチン大統領はウクライナに対し、和平交渉開始の条件として、ロシアが一方的に併合を発表し現時点で部分的に占領しているウクライナ東部4州からのウクライナ軍撤退を要求した。そのほか、ウクライナに北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念することも求め、米欧による対露制裁の解除も条件として挙げた。ウクライナのゼレンスキー大統領はこれに反発し、全く容認できないと非難した。

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