デイリー・アップデート

2024年6月19日 (水)

[IMF] 生成AIをテーマにしたレポートが、国際通貨基金(IMF)のブログで紹介されている。生成AIは、生産性の向上や公共サービスの提供の改善に大きな可能性を秘めているが、変化のスピードやその規模の大きさから、雇用の喪失や格差の拡大に対する懸念も同時に浮かび上がっている。過去の工場自動化の波からIMFが得られた教訓は、手厚い失業保険が労働者への悪影響を和らげ、その後に能力・スキルに合った仕事を見つけられる可能性を高めることだ。また、AI はほかのイノベーションと同様に、所得格差拡大や富の集中につながる可能性があるため、労働分配率の低下から税基盤を保護し、富の不平等の拡大を相殺するために、資本課税を強化することが極めて重要だとしている。AIへの課税は技術革新を遅らせることになるため推奨されないのは、ロボットに課税しないのと同様の論理。

[バングラデシュ] 6月6日、財務省は2024/25年度(2024年7月~2025年6月)の当初予算案を発表した。歳出は、前年度比+12%の7兆9,700億タカ(約10兆3,610億円)とした。財務省は、税制の合理化などを通じた歳入増、各種インフラ整備に係る「開発プログラム(Annual Development Program、以下ADP)」に注力し、IT産業振興を柱とした「スマートバングラデシュ」構想の実現、インフレの抑制などを引き続き重点事項とした。2024/25年度の経済成長率を6.8%、インフレ率を6.5%と設定した。法人税率は2.5%引き上げられ、特定の条件を満たす企業は現行の25%の税率を享受できるが、それ以外の企業には27.5%が適用される。

[ドイツ] 欧州経済研究センター(ZEW)によると、6月のドイツ景気期待指数は47.5となり、5月から0.4pt上昇した。内訳をみると、「改善」と「悪化」の回答割合は双方とも増加した。また、足元の状況を表す現況指数は▲73.8だった。5月(▲72.3)から小幅に悪化した。依然として、現状悪化、先行きの改善に期待という構図が継続しているものの、足元の物価上昇率の拡大が、景気期待指数と現状指数が足踏みする要因になった。

[原油] 国際エネルギー機関(IEA)は先週、石油需要は2029年に日量1億0,600万バレルでピークとなり、原油生産能力の拡大により余剰生産能力が大幅に増えるため、価格は下げるとの予測を公表。その翌日、OPECは、アルガイス事務局長による反論文書を公式ウェブサイト上に掲載。過去にピークオイル(供給)論が現実化しなかったように需要のピークも見通せない、現実を無視すれば将来の不足と不安定性を生むと述べた。IEAの6月月報によると、2024年の石油消費量は、米国・中国・インド・サウジアラビア・ロシア・ブラジル・日本の順に多い。サウジは大量の原油を発電に使っており、ガス増産と発電燃料のガス・再エネシフトの目標を掲げている。ピークオイルの是非は、サウジなど産油国自身の消費動向も大きなカギを握る。

[米国] 6月18日、バイデン政権は、米国市民の配偶者となっている不法移民、およびその子どもに対する救済措置を発表した。米国市民との婚姻関係が10年以上継続しており、犯罪歴の無い不法移民は、国土安全保障省による審査によって適格者であることが認められてから以後3年間、就労許可が発行され、米国内に留まったままで永住権を申請することも可能になる。米国市民配偶者が違法に入国している場合、これまでは永住権取得手続きを国外で行う必要があった。バイデン政権は、難民申請を制限する措置を6月に発表しているが、党内左派から不満の声が上がっていた。

[米国/NATO] 6月17日、ストルテンベルグNATO事務総長は、ホワイトハウスでバイデン大統領と会談した。両氏は、7月9日から3日間の日程で、ワシントンで開催されるNATO創設75周年となるNATO首脳会議の議題などについて協議したが、最重要議題は、NATO加盟国の国防費支出問題と長期的な対ウクライナ支援についてとなる見通しである。ストルテンベルグ氏は、NATO加盟国23か国が、対GDP2%の国防費支出目標を2024年内に達成する見通しと発言した。

[韓国/中国/北朝鮮] 6月18日、ソウルで韓国と中国の外交・安保当局者による「中韓外交安全保障対話(2+2)が開催された。中韓の2+2は、過去にも2回(2013年と2015年)局長級で開催されたが、今回は次官級に格上げされた。プーチン大統領が北朝鮮を訪問する時期と合わせての開催は、韓国側が北朝鮮をけん制したい意図があるのはもちろん、中国としても露朝の接近を手放しで歓迎していないこと、また「中朝ロvs.日米韓」という図式が固定化することを嫌う意図があるとみられる。

[レバノン/イスラエル] 6月11日のイスラエルの空爆でヒズボラの幹部司令官が殺害されたことで、その後イスラエルとヒズボラとの間での攻撃の応酬が一気に激化したが、両国の緊張緩和を目的とした交渉を進めるために、ホクスタイン米大統領上級顧問(エネルギー・投資担当)が6月17~18日にイスラエルとレバノンを訪問し、両国でそれぞれ政権幹部らとの協議を行った。ヒズボラはイスラエルに攻撃されているハマスを支援するためとして、2023年10月8日以降、イスラエル北部に対するミサイル・ドローン攻撃を続けている。

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