2024年6月27日 (木)
[アルゼンチン] 6月24日、アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は2024年第1四半期(1~3月期)の同国のGDPを発表し、前期比▲2.6%、前年同期比▲5.1%となったと発表。アルゼンチンは、事実上景気後退局面に突入した。ミレイ大統領は、2023年12月の大統領就任以降、大幅な財政削減策を導入している中、アルゼンチン経済の大幅減速の主因となったのは、建設業(前年同期比▲19.7%)、製造業(同▲13.7%)とみられる。経済悪化により抗議デモの発生などが予想される。
[デンマーク] デンマーク、牛のゲップに、炭素税。地球温暖化に大きく寄与する気体として知られているメタンの排出抑制に向けて、デンマークは2030年から畜産農家に温室効果ガス課税を実施する世界初の国になる。畜産農家はCO2換算でトン当たり300クローネ(約6,800円)課税され、2035年までに750クローネ(約17,000円)まで引き上げられる。税制上の所得控除もあることから、酪農家の実際の負担は低くはなる。デンマークでは1頭の牛から年間6トン相当のCO2が排出されており、こうした家畜飼育から生じるメタンの9割はゲップなどから吐き出されており、その多くは牛によるものだと指摘されている。
[インドネシア/ドイツ/フランス] 6月24日、フランスの金属資源大手エラメットとドイツの化学大手BASFは、インドネシア北マルク州でのニッケル・コバルト製錬所の建設計画を中止したと発表した。インドネシア政府は、国内のニッケルなどの天然資源の高付加価値化を目指し、産業の下流化を推進している中、このプロジェクトは、2026年から年間67,000トンのニッケルと7,500トンのコバルトを生産する、初期投資額は25億ドルと見積もられる大規模な投資案件だった。「最近のニッケルの世界市場は大きく変化した。その結果、BASFはバッテリー事業に必要な金属の安定供給を確保するために、これほど大規模な投資を行う必要がなくなった」と、BASFの取締役会メンバーであるアヌプ・コタリ氏は声明で述べた。
[日本] 経済産業省「商業動態統計」によると、5月の小売業販売額は前月比+1.7%と、2か月連続で増加した。基調判断は「緩やかな上昇傾向がある小売業販売」だった。内訳をみると、百貨店の販売額(前年同月比+13.7%)、 スーパー(+1.2%)、コンビニエンスストア(+1.3%)、家電大型専門店(+0.6%)、ドラッグストア(+6.6%)、ホームセンター(+1.1%)と、いずれも2023年5月から販売額が増加した。ただし、経済活動の正常化とともに、物価上昇に伴う節約志向の高まりなど、個人消費には変化も見られている。
[食糧] 先ごろ、レッドバーン・アトランティック&ロスチャイルド消費者カンファレンスが開催された。米コカ・コーラ社は消費の現状について、インフレに苦しむ米国の低所得層は手頃な価格を求める行動をとる一方、南米やインド・一部東南アジアなどの市場では力強い成長がみられるなど、まだら模様の状況だが、全体として視れば良好と説明。シンガポールの農産物商社Olam Agriのサニー・ベルギーズCEOは「世界は石油を巡り何度も戦争をしてきた。これからは食料と水を巡り更に大きな戦いになる」と警告。地政学的な緊張と気候変動で縮小する供給を巡り、紛争が起こるリスクを指摘した。多くの国が導入する非関税障壁も食料インフレを助長しているが、保護主義的な動きは強まっているとしている。
[ボリビア] ボリビアで6月26日、兵士と装甲車が大統領府と議会がある首都ラパスのムリーリョ広場を包囲し、大統領府のドアを壊し突入しようと試みる事態が発生した。フアン・ホセ・ズニガ将軍が今回の事態を先導したとみられているが、現在は軍も撤退し、将軍も逮捕され、クーデターは未遂に終わっている。
[ウクライナ] 6月25日、国内の最新世論調査結果が発表され、ゼレンスキー大統領を「信頼する」との回答が53.8%となり、1月の調査から15.2pt低下した。ロシアによる侵攻が長期化する中、ゼレンスキー氏への国民の信頼は低下傾向にある。
[ケニア] 6月26日、ウィリアム・ルト大統領は、国民から強い反対を受けている「2024年財政法案」に関し、「譲歩する」と述べ、同法案の撤回を発表した。同国の公的債務削減を目的として増税を盛り込んだ同法案が6月25日に国会で可決された直後に、SNS等を通じて若者らを中心とする抗議デモが全国で発生。治安部隊との衝突により、これまで20名以上が死亡したと報じられている。ルト大統領は14日以内に同法案の見直しの議論を進めるべくマルチステークホルダー・エンゲージメントを実施すると共に、政府のさらなる歳出削減を指示した。今回のデモで死傷者が生じたことに関し、米ホワイトハウスや国際通貨基金(IMF)らは懸念を表明している。
[フランス] 6月30日に第1回投票、7月7日に決選投票が予定されている国民議会選挙で、野党国民連合(極右)が第1党となる見通しが出ている。マクロン大統領は2027年まで在任予定であることから、大統領と首相が異なる政党から輩出される「コアビタシオン」の可能性が濃厚となった。
[ミャンマー/米国] 6月25日、米国のクリテンブリンク国務次官補(東アジア・太平洋担当)が6月21~22日のベトナム訪問中に、ミャンマーの海軍司令官であるチョーリンゾー准将とハノイで会談していたとミャンマーの民主派系メディア「イラワジ」が報じた。会談の内容は不明。米国務省は、イラワジからの質問に対し、否定も肯定もせず、米国のミャンマー政策に変更はないとした上で、民間ルートも含め、軍政に対し、暴力の停止と民主主義への復帰を要求し続けると述べたという。ミャンマーの民主派の国民統一政府(NUG)は、米国から情報提供は受けていないと述べた。
[米国/イスラエル] バラク元首相や元モサド長官などイスラエルの著名人6人が、6月26日付米ニューヨークタームズ紙に共同で寄稿し、7月24日に予定されているネタニヤフ首相の米議会演説への招待を取り消すよう求めた。同記事内で、ネタニヤフ氏は10月7日のハマスによる襲撃の責任も取らず、ガザ戦争を終わらせることも人質の解放も果たせておらず、イスラエル人の大部分はネタニヤフ政権への信頼を失っているとし、米議会が犯した間違いを正してネタニヤフ氏への招待を取り消すよう要求している。
[日本/米国/韓国] 6月26日、ワシントンにて日米韓商務・産業相会合が開催され、米国は商務長官、日本は経済産業大臣、韓国からは産業通商資源大臣が参加して、サプライチェーン強靭化や先端技術活用に向けた協力促進を約束した。2023年8月の日米韓首脳会議を受け、この度、3か国の経済閣僚による会議が実現した。半導体、バッテリー、重要鉱物(ガリウム、ゲルマニウム、黒鉛)のサプライチェーン強靭化、輸出管理、人工知能(AI)技術の安全性評価といった分野での協力を約束した。同日、日米間の対話も行われ、中国の産業政策や過剰生産問題について対応策を協議した。
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2024年12月24日(火)
『Forbes Japan』2025年2月号に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司のコメントが掲載されました。 - 2024年12月23日(月)
『時事通信』に、当社シニアアナリスト 鈴木 直美のコメントが掲載されました。 - 2024年12月23日(月)
雑誌『経済界』2025年2月号に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司が寄稿しました。 - 2024年12月23日(月)
東洋経済新報社『週刊東洋経済』2024年12月28日・2025年1月4日合併号に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司が寄稿しました。 - 2024年12月20日(金)
ダイヤモンド社『ダイヤモンドZAi』2025年2月号に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行の取材対応記事が掲載されました。