デイリー・アップデート

2024年5月9日 (木)

[パナマ] 5月5日の選挙で、大方の予想通りホセ・ラウル・ムリーノ氏がパナマ次期大統領に選出された。選挙の前週には、ムリーノ氏の選挙資格がはく奪されるのではとの思惑が台頭し、パナマの先行きに不透明感が高まっていたが、最高裁が立候補を合憲と判断していた。次期政権は議会で過半数割れになるとみられることから、政権運営や改革への懸念が残る。

[コンゴ民主共和国/中国] 5月8日、国際通貨基金(IMF)は同国向け「拡大クレジットファシリティ(ECF)」の第6回レビューを実施し、実務者レベルで合意に至った。7月以降、2億ドル強の融資が実行される見込み。IMFは、融資の条件となる定量的目標はほぼ達成された一方で、中国と同国の合弁による銅・コバルト採掘事業「Sicomines」の契約改定による好影響を2024年度の予算案に反映すべきとした。Sicomines事業は中国企業が68%、コンゴ民政府が32%の株式を所有しているが、最新の契約改定により、銅価格が1トンあたり8,000ドル以上であることを条件に、コンゴ民政府は同事業から2040年まで毎年3億2,400万ドルをインフラ予算として得ることになった。

[米国/イスラエル] バイデン政権は、イスラエルによるガザ最南部ラファハへの軍事作戦に反対し、イスラエルへの弾薬輸送の一部を停止した。既に報道ベースで出ていた情報だが、5月8日にオースティン米国防長官が米議会上院の公聴会での発言で追認した。バイデン政権は、現在150万人のパレスチナ人が避難しているラファハにイスラエル軍が軍事侵攻すると民間人に甚大な被害が出るとして、民間人を保護する措置を取らない限りラファハへの軍事侵攻に強く反対する立場を表明してきた。

[米国/イスラエル] 5月8日、バイデン大統領はメディアのインタビューに応じ、イスラエル軍がガザ地区ラファハへの侵攻に踏み切れば、米国はイスラエルに対して弾薬の提供を止めると明言した。防御的兵器の提供は継続する方針。4月にイスラエル側の行動次第で米国政府はガザ戦争に係る政策変更を検討するとバイデン政権は発表していたが、大統領自身が直接、武器提供を差し控える可能性について言及したのは今回が初めてとなる。米国内や国際社会からの圧力を前に、米国政府としてより明確なメッセージを発する必要性をバイデン政権が認識したと考えられる。

[インド太平洋] 中国が海洋進出を強化し、力による一方的な現状変更の姿勢を鮮明にする中、5月2日、ハワイで2回目の日米豪比4か国国防相会談が開催された。木原防衛相、オースティン米国防長官、マールズ豪副首相兼国防相、テオドロ比国防相は、地域情勢や4か国の協力拡大について協議するとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けてさらなる連携の強化を図ることを確認した。中国の脅威に対して、日米豪比4か国の関係強化を狙う動きが見られる。

[ベトナム] 国連開発計画(UNDP)は4月に63省市の1万9,536人を対象とする2023年「統治・行政パフォーマンス指数(PAPI)」の調査で、指標8つのカテゴリーのうち、汚職取り締まり(6.77点で、前年から0.06点の上昇)など4つの指標が前年と比べて改善されたが、市民の参画度や透明性など4つの指標は悪化したと発表した。UNDPは、ベトナムの地方行政や公共サービスについて、市民の満足度を調査し数値化する同報告書を2009年から毎年発行している。党による反腐敗運動が進んでおり、2023年には約2万4,000人の党員が懲戒処分を受けた。この調査は腐敗防止やその改善をする上で参考となる指標になっているとみられる。

[日本] 厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、3月の名目賃金(現金給与総額)は前年比+0.6%となり、2月(+1.4%)から上昇率を縮小させた。内訳をみると、基本給(所定内給与)が+1.7%と増加した一方で、残業代(所定外給与)は▲1.5%、ボーナスや諸手当等(特別に支払われた給与)は▲9.4%と減少した。また、賃金上昇が物価上昇に追い付かず、実質賃金は▲2.5%と、24か月連続のマイナスだった。実質賃金にとっては失われた2年間になった。

[ロシア] 5月8日、プーチン大統領は、首都モスクワでロシアが主導する旧ソ連諸国の経済ブロックである「ユーラシア経済同盟」の首脳会議を開催し、2024年の議長国を務めるアルメニアやベラルーシ、カザフスタンそして、キルギスの首脳が参加した。2024年、ユーラシア経済同盟は、2014年に創設条約が調印されてから、10周年を迎え、プーチン大統領は演説で、旧ソ連圏の経済統合が進んでいるとアピールした。

[EU] 5月8日に開催されたEU加盟国大使の会合で、国際決済機関であるEuroclear(ベルギー)にあるロシアの凍結資産から発生する利子を、対ウクライナ軍事支援などに活用する計画が政治合意された。来週中に正式承認される可能性がある。凍結資産から発生する利子のうち、90%が欧州平和ファシリティを通じた武器購入費用、10%が人道支援や、ウクライナの復興・防衛産業支援に活用される。

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