2024年5月10日 (金)
[メキシコ/コロンビア] メキシコの4月の消費者物価(CPI)は、前月から上昇し前年同月比では4.7%となった。コア指数が高止まりしており、基調的な物価圧力が持続しているという中銀の懸念を強めている。一方、コロンビアでは4月のCPIは前年同月比で7.17%と緩和し、2022年1月以来の低水準となった。ディスインフレは緩慢にはなっているが、2025年には中銀の目標レンジ(3.0% +/-1pp)に入る可能性が高いとみられている。
[マリ/EU] 5月8日、欧州連合(EU)は、2013年からマリ北部の治安維持のために派遣してきた軍事訓練ミッション(EUTM・マリ)を5月18日以降は延期しないと発表した。2020年、2021年と二度のクーデターにより暫定軍事政権下にある同国では、反仏感情の高まりから2022年にフランス駐留軍が撤退。2023年末には国連平和維持活動部隊(MINUSMA)の活動が終了するなど、クーデター以降西側諸国との距離が鮮明になっている。他方、2月にロシアのラブロフ外相が同国を訪問。ロシアとの経済・軍事面での協力強化の動きがみられる。暫定政権は今年2月に民主的な選挙を行うと公表していたが、2023年9月に延期を発表、現在も日程は決まっていない。
[ブラジル] ブラジルの南部リオグランデドスル州では、4月29日から続いた記録的豪雨による洪水で既に100人が死亡、130人以上が行方不明となっており、さらに犠牲者が増えることが懸念されている。同州は穀物生産が盛んな州として知られており、洪水被害により穀物の収穫量が減少し、ブラジル全土で食品価格が上昇する懸念も浮上している。ルーラ政権とブラジル議会は、住民の支援や道路等のインフラ復旧などのために緊急財政出動の取り組みを強化しつつある。
[フィリピン] 5月9日、統計庁(PSA)が発表した2024年第1四半期(1~3月)の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比+5.7%だった。前期の+5.5%からわずかに拡大した。個人消費は鈍化したが、政府支出が持ち直した。前期比(以下同)では前期の+2.1%から第1四半期には+1.3%と減速した。内需が弱まったことが響いた。消費は、第4四半期の+2.9%から第1四半期にはわずか+0.4%に鈍化した。第1四半期に住宅・公共料金が急増し、海外出稼ぎ労働者による送金が低迷したことが、実質所得を圧迫し、消費を抑制したと考えられる。2024年内残りの期間においても、金融引き締め、海外出稼ぎ労働者による送金額の伸びの鈍化、外需の低迷などが重しとなることから、さらに経済は弱くなると予想される。
[日本] 「国際収支統計」によると、3月の経常収支は3兆3,988億円の黒字になった。貿易収支は4,910億円の黒字、サービス収支も674億円の黒字と、それぞれ前年同月の赤字から黒字に転じた。第一次所得収支は3兆4,447億円となり、黒字を維持した。サービス収支の黒字転化の主因は、旅行収支の黒字が4,266億円と、大幅に拡大したことだった。また、2023年度の経常収支は25兆3,390億円となり、前年同月から約16.3兆円増加した。
[米国/中国] 5月9日、米商務省は貿易制限のエンティティ・リストに、37の中国企業を追加した。昨年(2023年2月)に米国上空を飛行したスパイ気球を支援したとされる企業や、国有企業の中国電子科技集団(中国電科)傘下の数社を含む量子科学技術関係の企業、中国軍が使用するドローン製造のために米国の製品を入手しようとした中国企業、ロシアに貿易管理品目を輸出した中国企業が対象となっている。
[ミャンマー] 5月7日、ミャンマーのミンアウンフライン総司令官とカンボジアのフン・セン上院議長がオンラインで会談した。ミャンマー国営メディアによると、両者はミャンマー総選挙に向けた準備について協議した。カンボジア現地メディアによると、フン・セン上院議長はミンアウンフライン総司令官に対し、アウンサンスーチー氏とビデオ通話で話すことを許可するよう要請し、同総司令官はその要請を検討すると述べた。しかしミャンマー軍政のゾーミントゥン報道官は5月8日の声明で、フン・セン上院議長とスーチー氏との面会は調整することはできないと述べた。
[イスラエル/パレスチナ] イスラエル民主主義研究所がイスラエル人750人を対象に5月初めに実施した世論調査によると、イスラエル人の62%(ユダヤ系イスラエル人の56%、アラブ系イスラエル人の88.5%)が、ガザ最南部ラファハへの軍事侵攻よりも人質解放交渉を優先すべきと回答したことが判明した。ラファハへの軍事侵攻を優先すべきと答えたのは31.5%だった。前回2月の同調査では、51%がハマス壊滅よりも人質解放を優先すべきと答えており、人質解放を優先すべきと考えるイスラエル人の割合が高まっていることがわかる。
[米国] 4月にトランプ前大統領が米石油企業の経営者20名以上を招き、自身が大統領選に勝利すれば、バイデン政権の環境・エネルギー関連規制を覆すことを約束した、と米メディアが報じた。具体的には、液化天然ガス輸出の新規許可、メキシコ湾やアラスカ州北極圏における石油開発促進、自動車排ガス規制の緩和などに言及したもよう。同会合でトランプ氏が石油業界に政治献金10億ドルを求めたことも報じられている。政権交代が米インフレ削減法(IRA)の撤廃・弱体化につながる可能性も取り沙汰されるが、実際には議会構成や、経済的実利を享受している諸州の意向なども絡むため、難しい判断になると予測されている。
[ロシア/ウクライナ] ロシア軍部隊が、ウクライナ東部にあるウクライナ軍の再編成地点や前線砲兵拠点として使われてきた要衝「チャソフヤール」の陥落に動いている。ロシア軍がこの町を占拠すれば、ウクライナにおける、いわゆる「要塞都市」数か所に対して直接攻撃を仕掛けることができると思われる。ロシアは、米国からの武器や弾薬がウクライナの前線に供給されるまでの時間を「好機」ととらえ、その間に攻撃を強めようとしているもよう。
[中国/フランス/ハンガリー] 5月6日から5月10日の行程で習近平国家主席がフランス、セルビア、ハンガリーを訪問した。マクロン大統領と習主席の会談に参加した欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、中国がEU企業に対して中国市場への公正なアクセスを提供しない場合、必要に応じて貿易保護措置などあらゆる手段を講じると主張するなど、複雑な関係が露呈された。一方、ハンガリー訪問では、貨物鉄道、高速鉄道、石油パイプライン、原子力協力等18の合意文書に署名するなど、良好な関係が強調された。
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