デイリー・アップデート

2024年5月13日 (月)

[マレーシア] 5月9日、マレーシア中央銀行(BNM)金融政策決定会合を開き、翌日物政策金利(OPR)を年3.00%で据え置くことを決定した。据え置きは6会合連続となった。BNMは、輸出の回復と内需の底堅さが経済を支えると言及した。米ドルに対する通貨リンギットの下落は中銀にとって懸念事項であるが、インドネシア銀行(BI)のように通貨を支えるために金利を引き上げることはないとみられる。また、BNMはBIと異なり、通貨安定の任務を担っていない。ただし、リンギットが足元で回復し、2024年初から地域の同類通貨を上回るパフォーマンスであることは、中央銀行にとって安心材料になっている。インフレに関する懸念から、金利の引き下げも見込まれない。現時点でのインフレ圧力は弱い(3月消費者物価指数前年同月比+1.8%)が、今後、補助金の削減で急激なインフレ上昇を引き起こすことも予想される。

[ユーロ圏] 欧州中央銀行(ECB)は10日、4月の理事会(4月10~4月11日)の議事要旨を発表した。同理事会では5会合連続で政策金利を据え置くことが決定され、6月の利下げが示唆されていた。理事会では、少数のメンバーが4月会合時点で利下げを実施する根拠があると十分に確信していたという。ただし、多数が賃金や物価について一段の経済指標を確認したいことを表明し、最終的には据え置きが決定された。また、中期的な物価上昇率の鈍化が続けば6月利下げの見方が出ていた。

[ブラジル] 4月のIPCA物価指数は、3月の前年比+3.93%から、同+3.69%に減速した。先週の中央銀行の会合では、労働市場の強さとサービス価格の強さが懸念とされたが、どちらも比較的落ち着きを見せた。5月の物価指数は、洪水の影響により短期的に上昇数可能性はあるものの、インフレの鈍化から緩和サイクルは継続に傾いているとみられる。

[ニジェール/ベナン/中国] 5月12日、ニジェールのアリ・ラミネ・ゼイン首相は、隣国のベナンがニジェール産原油の輸出を妨害していると非難した。内陸国のニジェールでは中国石油天然汽集団(CNPC)が、油田開発とベナン・セメ港までを結ぶ総延長約2,000kmに及ぶパイプラインの開発を進め、中国向け輸出が開始される予定だった。しかし、ベナンはニジェールが陸路国境を通じたベナンからの輸入の停止を続けていることを不服とし、オイルタンカーのセメ港への接岸を阻止したと報じられている。ゼイン首相はベナン北部のテロリストの活動による国境周辺の治安悪化を国境閉鎖の理由としている。4月、国際通貨基金(IMF)は原油輸出を背景に2024年のニジェールの経済成長率を+10.4%と予測したが、影響が注視される。

[米国] 米国は中国製の電気自動車(EV)に対して25%の輸入関税措置を導入しているが、5月14日、バイデン大統領は、同輸入関税措置を4倍の100%に引き上げる方針を発表する方針である。11月5日の米国大統領選挙の投票日まで半年足らずとなる中、バイデン政権は厳しい対中通商政策を鮮明にしているが、そうした背景には大統領選挙の帰趨(きすう)を決する「激戦州」における有権者の支持を確保するのが狙いであり、トランプ前大統領も同輸入関税の引き上げを公約している。

[スロベニア] 5月9日の閣僚会合で、ゴロブ連立政権がパレスチナ国家承認開始を合意したことを発表した。政府による承認案が議会外交政策委員会に提出され、議会投票において単純多数決で承認される見込み。ファヨン外相は、パレスチナ国家承認の目的を象徴的な行為としてだけでなく戦争の終結を目的としたものとし、テロ組織であるハマスを承認するものではなく、パレスチナ自治政府がラマラからガザを支配できるようにするための承認と強調している。

[韓国/日本] 通信アプリLINEの利用者情報流出を受け、日本の総務省が運営会社のLINEヤフーに対し、大株主の韓国インターネット大手サービスNAVERとの提携見直しを求めた件が、政治に飛び火しそうになっている。韓国政府もNAVERもこの問題を政治化することは望んでいないが、最大野党「共に民主党」の李在明代表がSNSで、松本剛明総務相は(初代韓国総監を務めた)伊藤博文の子孫などと言及し、「祖国革新党」の曺国代用もこの件に触れつつ、尹錫悦政権の対日外交を「屈辱外交」と批判する声明を出す予定だと報じられている。

[インド] 5月10日、最高裁が、酒類販売政策に関する汚職の容疑で3月に逮捕されたデリー首都圏政府のケジリワル首相を、6月1日まで暫定的に保釈すると決定した。同氏は同日中に保釈された。ケジリワル氏は野党・庶民党(AAP)の党首で、今回の保釈により、5月25日に予定されるデリー首都圏での総選挙のキャンペーンに加わることが可能になった。AAPは2015年と2020年のデリー議会選で与党BJPを上回る議席を獲得しており、今回の総選挙でもデリー首都圏ではBJPに対抗できる数少ない有力野党とみられている。

[パレスチナ] 5月10日に開かれた国連総会の緊急特別会合で、パレスチナの国連加盟を支持する決議案の採決が行われ、日本やフランスを含む143か国の支持を得て採択された。反対は米国やイスラエルなど9か国で、英国やカナダなど25か国は棄権に回った。ただ、国連への加盟には安全保障理事会による勧告決議が必要で、4月に安保理で同様の決議案が出された際には米国が拒否権を行使して否決されている。圧倒的に多くの国がパレスチナの国連加盟を支持する中で、米国とイスラエルの孤立が際立つ形となった。

[米国] 米メディア報道によると、バイデン政権は早ければ5月14日には、クリーンエネルギー関連輸入品を中心に、対中関税の一部の引き上げを発表する見込み。中国製電気自動車(EV)には現在、27.5%の輸入関税が賦課されているが、これを102.5%の水準まで引き上げるかとの観測が広がっている。このほかに、太陽光発電パネルやリチウム電池なども関税強化対象ともみられる。2018年にトランプ政権が通商法301条に基づき、対中関税賦課を決定した4年後から、バイデン政権は当該関税の見直し作業を進めていたが、政権内で意見が割れており、時間を要していた。

[ロシア] 5月12日、プーチン大統領は、現国防相ショイグ氏(68歳)を交代させ、第1副首相だったベロウソフ氏(65歳)を新たな国防相に任命する人事を上院に提案した。ショイグ氏は同日の大統領令で安全保障会議書記に任命された。現安全保障会議書記であるパトルシェフ氏(72歳)は退任となった。

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。

20人が「いいね!」と言っています。
<  2024年5月  >
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31