デイリー・アップデート

2024年5月14日 (火)

[日本] 日本銀行「企業物価指数」によると、4月の国内企業物価指数は前年同月比+0.9%となり、3月と同じ伸び率だった。2023年11月から1%を下回っている。輸入物価指数(円ベース)は+6.4%となり、3月(+1.4%)から上昇率を拡大させ、3か月連続のプラスになった。内訳をみると、石油・石炭・天然ガスが+2.5%と3月(▲7.1%)からプラスに転じた。こうした変化を踏まえると、川上からのコストプッシュ圧力が戻り始める兆しも見えつつあるようだ。

[穀物] 世界の主要穀物相場は、2022年央から続いた下落に歯止めがかかり、4月以降は上昇基調に転じている。2024年序盤まで、2023/24年度産の供給増加や輸出競争激化を織り込み値下がりしていたが、アルゼンチンで高温により異常繁殖した害虫ヨコバイが媒介する病害が、トウモロコシ作物を損傷したほか、4月下旬からのブラジル・リオグランデドスル州の大洪水でも農作物が被害を受け、2023/24年度産の南米収穫高の見通しが悪化。小麦はこれまで、最大輸出国ロシアの安値輸出攻勢に圧迫されていたが、5月に入りロシアの冬小麦の一部が季節外れの霜害を受けた。米国農務省は5月の月例報告で、2024/25年度小麦の世界期末在庫は大きく落ち込むと予想。トウモロコシも米国・ウクライナ等で減産の見込み。

[アルゼンチン] IMFは、アルゼンチンの総額440億米ドルにのぼる融資プログラムに対する第8回目となる四半期レビューを承認した。これによりアルゼンチンは、今後数週間のうちにIMFから約7億9,200万米ドルの支払いを受けられることになる。一方で、政府の経済改革の代償として数千人の解雇、公共料金の上昇、賃金と年金の悪化がもたらされており、労働者によるストライキが頻発している。

[ブラジル] 4月29日から約2週間続いている南部レオグランデドスル州を直撃した記録的豪雨がもたらした洪水被害の拡大により、犠牲者数は147人に増大している。5月11日、ルーラ政権は、総額約122億レアル(23億4,000万米ドル)の緊急追加支援策を発表した。数多くの再建施策は洪水の水位が引いてからの正確な被害状況の把握と評価が必要とされる中、週末も豪雨が続いたことで洪水被害を受けたほとんどの地域で水位がさらに上昇している。緊急追加支援策の規模は、約122億レアルを上回ることが予想される。

[フランス/米国] 米マイクロソフトは、フランスの投資促進策「Choose France」の一環として、フランスに40億ユーロ(43億ドル)を投資する意向を表明した。投資は3年間にわたって行われ、急成長している人工知能分野に向けられる。最先端のデータセンターのようなインフラ、100万人を超えるフランス国民向けのトレーニング、AI関連スタートアップ企業への支援に資金が充てられる予定。なお、ドイツとスイスとの国境に近いミュルーズに大規模データセンターを設立する計画が明らかになった。こうした動きが評価される一方で、独占禁止法を巡って規制当局との対立を緩和するための試みではないかとの冷めた評価もある。

[ミャンマー] 5月1日~5月10日の期間で、中央銀行は通貨安を抑制するため、160億円超の外貨を売却した。内訳は、米・ドルが9,600万ドル(約149億9,000万円)、タイ・バーツが3億6,500万バーツ(約15億5,500万円)、中国・人民元が614万人民元(約1億3,200万円)である。中銀は2023年12月から外貨売りを公表しているが、取引が最も多い米ドルでは、2024年1月、3月、4月の売却額がそれぞれ1億ドルを超過し、5月も1億ドルに達するとみられる。売却は、国内企業間のオンライン取引プラットフォームを通じて行われているが、売却時のレートは公表されていない。

[フィリピン/中国] 5月10日、アニョ国家安全保障補佐官は、在フィリピン中国大使館が南シナ海問題に関して偽情報を拡散しているとして、関わった大使館員を追放するようフィリピン外務省に求める声明を発表した。偽情報とされているのは、中国とフィリピンの間で、1月にアユンギン礁(セカンド・トーマス礁)にあるフィリピン軍の拠点への補給に関する合意が成立していたとする中国の主張であり、マルコス政権は同合意の存在を否定し続けている。中国外交部の報道官はフィリピンに「挑発をやめるよう求める」として批判した。

[エジプト/イスラエル] 5月12日、エジプトは、イスラエルがガザで行っている行為が虐殺であるとして南アフリカが国際司法裁判所(ICJ)にイスラエルを提訴した訴訟に参加する意向を表明した。エジプトが仲介役となってきたイスラエルとハマスの停戦・人質解放交渉が、イスラエルの頑なな姿勢でとん挫してしまったことや、イスラエルがエジプトの再三の反対にもかかわらず、エジプトと接するガザ最南部のラファハへの地上侵攻を開始したことなどが背景にあると考えられる。既に、トルコやコロンビアも同訴訟への参加を表明している。

[米国] 5月10日、国務省は、米国政府が外国政府に対して提供した軍事装備品が国際法に則って使用されているか否かについて議会に報告を行った。当該報告書の注目点はイスラエルに関する記載だが、国務省は明確な判定は避けつつも、イスラエル軍による米国の軍事装備品使用については深刻な懸念が残る、と報告した。この議会報告は2月に提出された国家安全保障覚書に基づく措置で、米国が提供した軍事装備品が国際人道法に反する形で用いられた場合は、米国政府により今後の行動が検討されるという規程になっている。

[EU/ジョージア] ジョージア政府が推進する「外国からの影響力の透明性に関する法案」の内容が、反政府的な意見や表現の自由をないがしろにする内容とみられることから、同国内で抗議活動が激化している。ジョージアは2023年12月にEU加盟候補国となっており、EUもジョージア政府に対して再考を要請。4月25日、欧州議会は、懸念されている同法律が施行され得る限り、ジョージアのEU加盟交渉に影響がある可能性がある、という決議を採択するなど、同国のEU加盟が危うい状況となっている。

[南アフリカ] 5月13日、大統領府は、5月15日にシリル・ラマポーザ大統領が「国民皆保険法案(NHI)」に署名すると発表した。同法案は、民間の医療保険に加入していない約8割の国民に対してより良い医療サービスの提供を目的とするもの。財政赤字が続く中、さらなる医療支出の増大を招き、民間の病院をはじめビジネス界からも強い反発を受けてきたNHIだが、5月29日の総選挙を前に、ラマポーザ大統領率いる与党「アフリカ民族会議(ANC)」陣営が署名を急いだとみられる。今回の総選挙でANCの得票は50%を下回り、連立政権を組成するとの見方が強いが、その連立候補の一つとしてANCとの関係も深い「インカタ自由党(IFP)」を挙げるアナリストも多い。

[中国] 5月13日、国家安全部のWeChatアカウントは、外国人が中国の自然保護区で地理、気象、生物などの機密データを盗んだとして2件の事例をあげ、警告を発した。外国の教授や、海外NGOの支援を受けた研究者が、学術的な協力を装い湿地保護区や森林のデータを盗んだり、気象観測所設備や赤外線カメラ装置、GPSマッピングを設置したりして、「生態系の安全保障に深刻な損害を与えた」としている。

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