デイリー・アップデート

2024年5月30日 (木)

[資源] 資源業界ではM&Aが活発。今後需要拡大が確実視される銅の事業拡大を目指すBHPは、4月、Anglo Americanに拘束力のない買収提案を行い、提示額を386億ポンドまで引き上げたが、同社が買収条件としたAngloの南アフリカ白金族・鉄鉱石事業分離などのスキームで合意できず、BHPは正式提案を見送った。米国石油業界では2023年来、Exxon-Pioneer、Chevron-Hessなどを始め大型買収が相次ぐが、5月29日にはConocoPhillipsがMarathon Oil買収を発表。総額225億ドル。米WSJ紙によればConocoは当初、Endeavour EnergyやCrownRock買収を検討したが、それらの企業はそれぞれDiamondback Energy、Occidentalが買収。残る優良資産が乏しくなる中、争奪戦が生じている。

[ペルー] 司法制度の独立性、公平性の問題が続く中、主任検察官が解任された。大統領含め多くの議員が賄賂などの捜査に直面する中、だれを起訴するのかを判断する検事自身も腐敗や政治的な偏りが大きく、検事の人事についても混乱が続いている。司法や行政の不安定さは、引き続き投資を抑制するとみられる。

[コンゴ民主共和国] 5月29日、政府報道官が国営放送を通じて54人からなる新内閣を発表した。2023年12月の大統領選でフェリックス・チセケディ大統領が再選されたが、連立与党内の調整に時間を要し、新内閣の組成が遅れていた。先んじて4月に同国初の女性首相として任命されたジュディス・スミンワ氏をはじめ、主要閣僚ポストである副首相兼国防相にガイ・カボンボ氏(元官報責任者)が、鉱山相にキジト・カピンガ氏が任命された。同国では5月19日未明にクーデター未遂事件が発生し、治安部隊との衝突により死傷者が出たが、政府はいまだ公式見解を示していない。国際人権団体は、超法規的手段を用いた治安部隊を徹底的に調査すべきと訴えている。

[米国/NATO] 2024年7月9日から3日間の日程で、創設75周年を迎えた北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議がワシントンで開催される予定。トランプ前大統領は、NATO加盟国に対して国防費の負担を増額するよう大統領選挙キャンペーンで訴えており、欧州のNATO加盟国は、第2期トランプ政権の発足に準備する形で各国の国防費の増額を図る計画を作成したり、対ウクライナ支援プランを公表したりする動きが出てきている。

[欧州] EUの一般データ保護規則(GDPR)が施行されてから6年、その違反により45億ユーロ(49億ドル)の罰金が支払われた。ITサービス企業NordLayerの調査によると、データ保護当局は、2,072件の違反を認定していることが明らかになった。GDPR違反のトップ3はスペイン、イタリア、ドイツ。最大はスペインで罰金842件、総額は8,000万ユーロに上った。イタリアはスペインの半分以下の罰金しか受けていないにもかかわらず、支払った罰金は約3倍となる。ドイツ企業は186件の罰金を科され、その総額は5,500万ユーロに達した。企業では、罰金上位10件のうち6件を占めるMeta社が最も多くの罰金を科せられた。親会社とフェイスブック、ワッツアップの子会社を合わせて25億ユーロの罰金を支払ったが、これは全罰金の半分以上を占めている。

[バングラデシュ] 5月27日、米国格付け大手フィッチ・レーティングスは、同国の長期外貨建て発行体デフォルト格付けを「BBマイナス」から「Bプラス」に1段階引き下げた一方、見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げた。「Bプラス」は投資適格の「BBBマイナス」の4段階下で、投機的格付けに位置付けられ、トルコやバーレーンなども該当している。「Bプラス」へ格下げされた理由としては、対外的なリスクに対するバッファーの低下が継続していること、外貨準備高の確保が依然として課題であり、外的ショックに対する脆弱性が高まっていることなどを指摘した。一方、見通しを引き上げた理由としては、適切な債権者構成により対外債務のリスクが緩和されていること、IMF融資プログラムによる銀行セクターの構造改革や公的債務の適正化、マクロ経済の安定が期待されることなどが挙げられた。

[米国] 米連邦準備理事会(FRB)は5月29日に「地区連銀経済報告(ベージュブック)」を発表した。それによると、米国経済は4月初旬から5月中旬にかけて、「拡大し続けた」と総括された。12地区中、10地区がわずか、または緩慢に拡大した一方で、2地区が横ばいとなり、前回とおおむね同様の結果だった。雇用はわずかに拡大しており、物価は緩慢に上昇した。こちらも前回同様の報告だった。しかし、経済の見通しは、不確実性の高まりと下方リスクの増加からやや悲観的となり、前回の「慎重ながらも楽観的な」見方から下方修正された。

[米国/パレスチナ] 5月28日、米国防総省は、海路でガザへの援助物資を搬入するためにガザの海岸沿いに設置した桟橋の利用を、修復のため一時停止すると発表した。悪天候や荒波で桟橋が損傷し、修復が必要になったとのこと。2日間かけて取り外された桟橋はイスラエル南部アシュドットに運ばれ、約1週間かけて修復作業が行われる。この桟橋はわずか2週間前に完成したばかり。桟橋から搬入できる物資は限られており、米政府含む国際社会はイスラエルに対し、援助物資搬入のため陸路でガザへ通じる検問所を開放するよう強く要請している。

[米国] 5月28日、バイデン政権は、任意のカーボンクレジット市場に係る政権の方針、原則を発表した。自主的な炭素市場に対する信頼を向上させるべく、税務長官、農務長官、エネルギー長官等が連名で発表したもので、排出削減効果の算定基準を明確すべきこと、クレジット創出活動が環境破壊につながることのないよう予防措置を講じるべきことなどが指針に盛り込まれている。民間資本を活用し、排出ゼロ目標を達成するためには、ボランタリー炭素市場が果たす役割は大きいと政権高官は発言している。

[オランダ] 2023年11月の総選挙で極右政党の自由党が第1党になったものの、その後の連立交渉が難航していたオランダで、5月16日に4党連立合意が発表され、5月28日にスホーフ氏が次期首相候補に指名された。スホーフ氏は元諜報機関(AIVD)や入国管理局(IND)を歴任したほか、テロ・治安対策国家調整官(NCTV)に任命されるなど、安全保障や移民分野の経験が豊富な人物である。

[タイ] 5月29日、検察当局が、タクシン元首相を不敬罪の容疑で起訴すると発表した。2015年に韓国メディア「朝鮮日報」のインタビューで、枢密院は2014年のクーデターを支援していたと述べたことが問題視された。当初、真理は5月29日に行われ、タクシン元首相が出廷する予定だったが、同氏が新型コロナウイルスに感染したため、6月18日に延期された。検察当局は2月の時点で上記不敬罪の容疑で起訴を検討していることを表明していた。

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