2025年1月10日 (金)
[米国/パナマ] パナマ運河庁モラレス長官は、トランプ次期大統領が主張するパナマ運河運営への中国の関与を否定した。また、パナマのムリノ大統領も記者会見で「運河には中国兵は一人もいない」と述べ、トランプ氏の中国が運河を運営しているとの主張を、「ナンセンス」であり 「この運河はパナマのものであり、パナマ人に属する」として一蹴している。 一方、トランプ氏の主張は、世界中の港湾への中国の投資増加に対する米国防総省の懸念と一致しているとの指摘もある。米南方司令官は議会で、「投資は平和的であるとアピールしているが、実際には多くが中国の多領域アクセスの拠点や戦略的な要衝として機能している」と証言している。ただし、冷戦下で締結された新パナマ運河条約について、米国にとってパナマ運河の経済的軍事的価値が低下したことがパナマ運河を手放す判断根拠となったとされている。
[日本] 日本銀行は9日、「地区経済報告(さくらレポート)」を公表した。景気の総括判断は9地域中、東北と北陸の2地域で上方修正された。また、賃上げについて、競合他社の動向を見極めたり、中小企業などで慎重な姿勢が維持されたりしている一方で、前向きに検討している企業もあり、幅広い業種・規模の企業に継続的な賃上げが必要という認識が浸透してきていると述べている。また、人件費の販売価格への転嫁について、消費者の節約志向が高まっていることも加わり、なお難しいという意見の一方で、実施・検討する動きも広がっている。
[アフリカ] 1月9日、国連は「世界経済状況・見通し2025」を発表し、2025年のアフリカの実質GDP成長率を+3.7%と予測した。2024年の+3.4%から上昇し、2026年にはさらに+4.0%に加速するとの見通しを示した。成長拡大の理由は、アフリカ域内で経済規模が大きいエジプト、南アフリカ、ナイジェリアの回復にあるとした。他方で、一次産品(鉱物、原油、農作物等)の輸出に依存する国が多いアフリカの国々は不安定であり、中国の景気減速によるアフリカの一次産品の需要の減少が全体的な成長見通しを押し下げる要因になりうると指摘した。実際に、国連は前回2024年9月の発表では2025年のアフリカの成長率は+3.9%と予測していたが、今回0.2ポイント下方修正された。
[レバノン] 1月9日、レバノン議会は、2年2か月以上空席となっていた大統領ポストにジョセフ・アウン軍司令官を選出した。任期は6年。大統領選出には議会の3分の2以上の賛成が必要だが、ミシェル・アウン前大統領が2022年10月に退任して以降、政治対立の激化で議会がまとまらず大統領を選出できない状況だった。ヒズボラの影響力が低下したことで、同派が推す候補が辞退し、米国やサウジが推すアウン氏の選出に道が開けた。レバノンの首相は大統領が指名するため、大統領不在で首相も暫定状態が続いていた。
[米国] トランプ次期大統領が指名した次期閣僚らに対する上院の指名承認プロセスは、1月13日の週から本格化することになっており、指名承認プロセスを所管する各常任委員会が指名審査公聴会を主催して、次期閣僚らは証言することになる。そうした中、上院共和党トップのスーン共和党上院院内総務が、トランプ氏が次期国防長官に指名したピート・ヘグセス氏の指名獲得に必要な支持を確保したとトランプ氏に報告したことが判明している。
[ロシア/アルメニア] ロシアの同盟国だったアルメニアの政府は1月9日の会議で、欧州連合(EU)への加盟交渉の開始に向けた法案を提出した。今後、議会が可決すれば、EUとの加盟交渉を始めるという。アルメニアは隣国アゼルバイジャンとの紛争で、ロシアが軍事支援しなかったと不満を募らせていた。
[米国/中国] 1月8日、ブルームバーグ紙は、米国のバイデン政権が、エヌビディアなどのAIチップの輸出を制限する追加措置を発表する予定だと報じた。新規制は半導体貿易制限を世界のほとんどの地域に拡大する内容で、早ければ1月10日にも発行する予定。米国の同盟国、敵対国、どちらでもない国(大部分の国)に対して3種類の異なる規制を導入し、同盟国などは米国製チップに対する制限のないアクセスを維持する一方、中国など敵対国グループの輸入は阻止される。そのほかの国は、一つの国に供給されるコンピューティングパワーの総量に制限が課されるとしている。
[ミャンマー] 2024年12月29日、少数民族武装勢力であるアラカン軍(AA)が「内政問題を軍事的手段ではなく政治的手段で解決する方針である」との声明を発表した。AAは2023年11月13日にラカイン州で国軍への攻撃を再開して以降、これまでに同州17郡区のうち14郡区を占拠したと主張している。2024年12月には国軍が西部司令部を置いていたアン郡区も制圧した。今回の声明により、「兄弟同盟」の3勢力(AA、MNDAA、TNLA)は、2023年10月27日からの攻勢で支配地域を広げた後、いずれも軍政との対話路線を示したことになる。3勢力の声明はいずれも中国への配慮を示唆している。
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