2025年1月15日 (水)
[コートジボワール] 1月9日、アラサン・ワタラ大統領(83歳)は年頭挨拶において、10月に実施される予定の大統領選への立候補について「まだ決断していない」と述べた。2011年から3期にわたり大統領を務めている同氏の4期目の去就に注目が集まっている。同国では2016年の憲法改正により3選が禁止されたが、改憲後に初めて実施された2020年の大統領選で勝利したワタラ氏の現在の任期は、「1期目」であるというワタラ陣営の主張に野党は違憲だとして強く反発している。なお、ワタラ大統領は2024年末に、周辺の旧フランス植民地各国と同様に、同国に駐留するフランス軍の撤退を決定したと述べたが、これは国民の反仏感情を利用して選挙戦を有利に進める思惑との見方もある。
[マレーシア/シンガポール] 1月6日、マレーシアとシンガポールは首脳会談で、ジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)をジョホール州に設立することで最終合意した。この経済特区は、3,500平方キロメートル(シンガポールの約4倍)の広さを有し、デジタル経済、金融、観光を含む11の成長セクターを対象としている。両国は、2025年第3四半期までに協定を批准する見込みであり、経済特区の長期的な成功が期待されている。特に、ジョホール州のスルタン(現マレーシア国王)の強力な支持を得ており、政権が交代しても支援が続く可能性が高い。
[日本] 内閣府「景気ウォッチャー調査」によると、12月の現状判断指数(DI)は49.9となり、11月から0.5pt上昇した。上昇は2か月連続。基調判断は「緩やかな回復基調が続いている」に据え置かれた。衣料品や暖房器具など冬物商戦に好調さが見られ、年末にかけて人の動きが活発化したことや、冬のボーナスが増額されたことなどが報告された。ただし、先行き判断指数は48.8(▲0.6pt)へと低下しており、回復は緩やかなペースにとどまりそうだ。
[米国] トランプ次期大統領が全ての外国製品輸入に10~20%、カナダ・メキシコに25%、中国製品に60%以上の関税を課すと述べているため、米国の金属・原油価格は国際価格以上に上昇。ここ数週間、金・銀・銅・プラチナなどの価格はロンドンと大きく乖離し、米国とカナダの原油価格差も拡大している。金・銀は「通貨」でもあるため関税免除との見方や、大統領選挙後の米国のアルミプレミアム上昇幅は2018年に比べると小さいことなど、市場は半信半疑の様子もある。カナダは貿易戦争回避を目指すが、総選挙を前に弱腰姿勢を見せられないこともあり、米国の関税賦課の場合の報復品目リストを策定し、エネルギー・資源輸出税も検討中と伝えられる。
[米国] 2016年大統領選挙でトランプ陣営会長に就任してトランプ氏の次期大統領当選に尽力し、第1期トランプ政権ではホワイトハウス首席戦略官に約7か月就任したスティーブ・バノン氏が、イーロン・マスク氏について、真に邪悪な人物であり、南アフリカに帰国すべきとの批判をイタリア紙の取材で行った。トランプ氏に対して影響力のある2人の間で亀裂が露呈しつつある。バノン氏は米国技術企業経営者のH1-Bビザ支持姿勢を批判している。
[イスラエル/パレスチナ] イスラエルとハマスの間で行われている停戦・人質解放交渉が大詰めを迎えているとされる。交渉を仲介するのは米国、エジプト、カタールで、米国からはバイデン政権高官に加え、トランプ次期政権で中東特使を務めることになるウィトコフ氏なども参加している。3段階の合意案は過去数か月間にわたって協議されているものだが、ここへきて交渉が動き始めたのは、トランプ次期大統領が「自身の大統領就任前に戦争を終わらせろ」という圧力をイスラエル・ハマス双方に掛けていることが大きいと思われる。
[米国] 1月13日、米通商代表部(USTR)は、競争政策や国営企業などに関する交渉用モデル文案を発表した。20日の政権交代が間近に迫る中、現USTRの認識について記録を残しておく意図があると考えられる。キャサリン・タイ通商代表は、モデル文案の発表に際して、冷戦後のグローバル化はコスト削減偏重であって、サプライチェーンの強靭性を欠く形になったと指摘。それを正すための新しい通商政策が求められており、今次明らかにしたモデル文案が今後の議論に資することを望むとコメントを寄せた。しかし、バイデン政権下のUSTRは、この4年間、一連のモデル文案を具体的な通商合意に落とし込むことには成功しなかった。
[ロシア/イラン] 1月17日、ロシアのプーチン大統領とイランのぺゼシュキアン大統領は、ロシアで首脳会談を行い、包括的戦略パートナーシップ条約に署名する見通しである。国営ロシアメディアによると、協定は経済やエネルギー、防衛など幅広い分野での協力強化が盛り込まれる見通しで、両国関係の一段の拡大に向けた重要な条約になると報じている。
[EU/中国] 1月14日、欧州委員会は昨年(2024年)4月から開始した調査の結果、EUの医療機器サプライヤーが中国の公共入札に公平に参加できないことが確認されたと発表した。中国が病院や入札案件の条件に、中国製機器を優遇する措置や慣行を設置し、利益重視の企業では提供できないような異常な低い入札価格を提示しているという「明確な証拠」を発見したとしている。EUは、この「差別的行為」に対処するため、EUの公共調達市場から中国企業を排除したり、入札に5年間のペナルティスコアをつけたりする可能性がある。
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