2025年1月30日 (木)
[チリ] チリ中央銀行は、予想通り政策金利を5.0%に据え置いた。声明文では追加利下げを示唆する文言が削除され、インフレリスクの高まりが強調されるなど、タカ派的な兆候が見られた。
[石油] 国際エネルギー機関(IEA)は「世界エネルギー見通し(WEO)2024」で、化石燃料の需要は2030年までにピークに達すると述べた。IEAの最大出資国は米国だが、米共和党内には、IEAがエネルギー安全保障を推進する使命を逸脱してエネルギー転換に傾斜し、予測が中立性を欠くとの批判がある。米国上院エネルギー天然資源委員会のジョン・バラッソ上院議員は12月23日に同趣旨の報告書を発表。エネルギーシンクタンクNCEAは1月29日にワシントンで「エネルギーの幻想(Energy Delusions)」と題した報告書を発表し、IEAの石油需要予測は誤っていると批判。トランプ政権下でIEAに対する圧力を強める趣旨とみられる。
[インドネシア] 経済特区(SEZ)への投資が活発になっている。経済特区国家評議会の発表によると、SEZは24年に新たに90.1兆ルピア(約55億ドル)の投資を誘致し、47,747人の雇用を創出したとのこと。これまでにインドネシア全土で24のSEZが設立されており、2025年はさらに5つの新しいSEZ設立が計画されている。これらのSEZでは、税制優遇措置、迅速な許可手続き、最大80年間の土地使用権などの特典が提供されており、再生可能エネルギー、物流、デジタル技術などの分野に注力した新しいSEZが設置される予定である。
[米国] 連邦準備理事会(FRB)は1月28~29日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利(FF金利)の誘導目標レンジを4.25~4.50%に据え置くことを決定した。据え置きは、市場予想どおりだった。パウエルFRB議長は、経済の堅調さを理由に、利下げを急ぐ必要はないとの認識を示した。辛抱強く見守り、政策対応がどうあるべきか慎重に見極める方針。市場では、追加利下げが6月ごろに実施されるという見方が広がっている。
[シリア] 1月29日、2024年12月にアサド政権を倒した反政府勢力「シャーム解放機構(HTS)」のリーダーであったアフマド・シャラア氏が、シリア移行政府の大統領に任命された。シリアの憲法は停止され、新憲法が採択されるまでの移行期間にその任務を遂行する臨時立法評議会をシャラア新大統領が設立する。また、旧シリア国軍や治安部隊、HTSを含むあらゆる武装勢力の解散と新たな国軍への統合や、シリアを60年以上支配してきたアサド前大統領のバアス党の解散も発表された。
[米国/カナダ/メキシコ] トランプ大統領は大統領就任前、不法移民と違法薬物の米国への流入を阻止していないとして、メキシコ、カナダに対して25%の関税を発動する方針を就任1日目に表明していたが、実際には発動せずに2月1日に発動する意向を示している。こうしたトランプ氏の関税発動の威嚇を受けてメキシコのシェインバウム政権とカナダのトルドー政権は、それぞれ米国との国境の強化を図る措置を導入し、トランプ政権への宥和な姿勢を示し始めている。
[米国] 米国では物価上昇リスクが燻っていることもあって米連邦準備理事会(FRB)は利下げを見合わせたが、金利の高止まりによってさまざまな分野へ影響が広がっている。自動車市場もその一つで、消費者の返済が困難となり、延滞やデフォルトが増加し、影響はディーラーや金融機関にも及びつつある。自動車情報サービス会社Edmundsの調査によると2024年の新車の平均取引価格は47,716ドルで2万ドル未満の取引はほぼゼロ。また、消費者の73%は価格の高さから購入を控えたとしており、低迷が続く米国自動車市場の裏付けることとなっている。車体価格が高くなるとローン負担が増加するため、消費者は中古車市場に向かうが、そこでは差押えられた車両がオークションで販売されているが、前年比で23%増加したという。また、保険料も上昇していることから、自動車保有の総コストが上昇し、それに消費者の一部が耐えらなくなりつつあると指摘されている。
[カザフスタン] 1月28日、トカエフ大統領は、カザフスタン初の原子力発電所(NPP)の建設を加速し、増大するエネルギー不足に対処し国の進歩を支援するために、より広範な原子力関連産業を育成するよう呼びかけた。同大統領は、政府と政府系投資ファンド「サムルク・カズィナ」に対し、原子力産業の発展のための長期計画を策定し、近代的で安全な技術を採用しながら、将来の原子力発電所を建設するための最適な場所を決定するよう指示した。
[欧州] 1月29日に欧州議員会が、今後5年間の経済計画となる競争力コンパスを発表した。イノベーション格差や、脱炭素化と競争力強化を両立するロードマップ、過度な依存関係削減による安全保障の強化が含まれている。
[日本/韓国] 韓国法務部出入国・外国人政策本部によれば、昨年(2024年)10月に長期滞在資格ビザを取得し韓国に居住する日本人の数は2万8911人で、2019年同月に比べ12.6%増加した。一方、日本で働く韓国人は2023年時点で7万1454人で、2019年に比べ3.3%増にとどまった。2019年10月と比較し、専門知識や技術を前提とした特定活動ビザ(E7)で韓国に滞在する日本人は37.7%増加、短期就職ビザ(C4)取得者は384%、求職ビザ(D10)は484%増加した。2022年からの円安に加え、韓国の最低賃金引上げや、韓国の会社員平均月給が日本を上回ったことなどが理由とみられている。
[インドネシア] 2024年10月20日にプラボウォ大統領が就任してから100日が経過した。コンパス紙の世論調査によると、プラボウォ政権の支持率は80.9%に達している。プラボウォ大統領のリーダーシップ、経済政策、社会福祉、安全保障、法の支配などで評価が高く、選挙公約である無償給食事業の開始、無料健康診断、学校の改修、病院の増設の計画、付加価値税の引き上げの限定等が支持された。
[コンゴ民主共和国(DRC)/ルワンダ] 1月29日、フェリックス・チセケディ大統領は国民向けのTV演説を行い、東部最大都市のゴマの大部分を支配した反政府勢力「M23」とルワンダ軍による暴力は、DRCに対する「侮辱」だと痛烈に批判した。また、激化する紛争に対して消極的な対応を取る国際社会を非難する一方で、国民の反ルワンダ感情がエスカレートしたことにより、首都キンシャサでルワンダ大使館やフランス大使館等が襲撃された事件について、国民に「自制」を呼びかけた。この混乱を受けて1月29日、米国はDRCに在留する米国市民の退避を勧告した。ルワンダから高度な軍事訓練を受けていると指摘されるM23は、さらにゴマから南に進軍を続けている。
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2025年1月29日(水)
『日本経済新聞(夕刊)』に、米州住友商事会社ワシントン事務所長 吉村 亮太が寄稿しました。 - 2025年1月27日(月)
毎日新聞出版『週刊エコノミスト』2025年2月4日号に、米州住友商事会社ワシントン事務所長 吉村 亮太が寄稿しました。 - 2025年1月24日(金)
『読売中高生新聞』2025年1月24日号に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司の取材対応記事が掲載されました。 - 2025年1月22日(水)
雑誌『経済界』2025年3月号に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司が寄稿しました。 - 2025年1月21日(火)
『朝日新聞GLOBE+』に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司のインタビュー記事が掲載されました。