デイリー・アップデート

2023年9月12日 (火)

[欧州] 11日、欧州委員会は夏季の経済見通しを発表した。2023年のユーロ圏の実質GDP成長率は前年比+0.8%、2024年は+1.3%と、前回5月時点からそれぞれ0.3pt下方修正された。2023年上半期は、物価高騰などの影響から個人消費が抑制されており、夏場以降も経済活動が引き続き弱い兆しが見えており、欧州経済は成長モメンタムを失っていると指摘された。消費者物価上昇率は2023年に+5.6%、2024年に+2.9%と高い伸びが継続する見通し。

[エチオピア] エチオピアは、10日グランド・ルネッサンス・エチオピアン・ダムの湛水を完了したと発表した。ダムをめぐっては、隣国のエジプト、スーダンとの長期にわたる水紛争の源となっており、つい2週間前に長らく中断していた解決に向けた協議を再開したところだった。今回でダムは満水となったとされている。

[ブラジル] 9月9日と10日の両日、インド・ニューデリーで開催されたG20首脳会議は首脳声明を採択して閉幕したが、今年12月1日からインドを引き継ぎ新たにG20議長国に就任するのはブラジルである。G20ニューデリー首脳会議で設定されたグローバル・サウスのアジェンダに基づきルーラ大統領も次期G20議長国として、気候変動対策、グリーン施策、社会的ニーズ、を優先課題として位置付けていく方針を表明しており、これらはルーラ外交の外交政策の優先課題とも一致している。

[中国] 9月9日、国家統計局は8月の消費者物価指数(CPI)と工業品卸売物価指数(PPI)を発表した。8月のCPIは前年同月比+0.1%と、29カ月ぶりのマイナスとなった前月からプラスに転じた。食品以外の値上がりが押し上げた。国際原油価格の上昇で燃料費が同▲4.5%と前月の同▲13.2%からマイナス幅が縮小した。ただし、外需よりむしろ内需の弱さにより上昇が抑えられている。8月のPPIは、前年同月比▲3.0%となり、マイナスは11カ月連続だが、マイナス幅は前月から1.4ポイント縮小した。デフレ圧力が緩和しつつあり、成長安定化の初期の兆しであると期待されている。しかし、9月末の国慶節前にサービスの回復がさらに弱まっている上、雇用の悪化が想定されることから、最近の刺激策の強化にもかかわらず不確実性が高い状況。

[中国/米国] 11月に米国でAPEC首脳会議が開催される際、バイデン政権は米中首脳会談を実施したいと中国に働きかけているが、中国側が必ずしも積極的ではないという姿勢を見せるようになっている。今月(9月)開催される国連総会に、中国政府は王毅外相ではなく韓正国家副主席が参加すると発表した。習近平国家主席の訪米について調整を行うのは韓正氏ではなく王毅氏の役割で、米政府は王氏が国連総会に参加せずとも、年内にブリンケン国務長官と会談すると発表した。中国側には、米国が近く発表すると見られる半導体に関する技術規制などをけん制する意図があると見られる。

[中国/米国] Gotion High-teck(国軒高科股?有限公司)は、20億ドルを投じて米イリノイ州にEV用電池工場を建設し2024年に稼働開始する。年間生産能力は、セルで40GWh、パックで10GWhとなり、EVでおよそ14万台分の生産能力となる。イリノイ州から5.36億ドルの補助金や30年間で2.13億ドルの減税を受ける。Gotionは中国のEV用電池メーカーで、独VW(フォルクスワーゲン)の100%子会社である大衆汽車(中国)が24.77%を出資している。VWが主要株主であることが米国への進出を円滑に進めることができたという見方がある。

[米国] 9月7日、商務省はインド太平洋経済枠組み(IPEF)のサプライチェーン合意テキストを発表した。合意文書は全27条、交渉参加14か国のうち5か国が国内承認手続きを終えれば発効する。サプライチェーン強靭化協議の場を設け、サプライチェーン混乱時の緊急連絡メカニズムなどについても合意した。2022年5月来、IPEFでは貿易、クリーンエネルギー等、4分野の交渉が始まり、サプライチェーンについては2023年5月に大筋合意が発表されていた。残る3分野についても交渉が進んでおり、9月15日までバンコクにて首席交渉官会合が開催中である。

[アルメニア] 9月11日、旧ソ連のロシア同盟国であるアルメニアは、首都エレバン郊外で、米国との合同軍事演習「イーグルパートナー2023」を開始した。アルメニアは、隣国アゼルバイジャンとの紛争をめぐりロシアへの不満を募らせ、ウクライナ侵攻後は欧米に接近する動きを強めている。国際刑事裁判所(ICC)加盟にも動いており、ロシアは反発している。

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