2023年10月5日 (木)
[アジア] 10月初旬に発表された9月のS&Pによる製造業購買担当者景気指数(PMI)は、インド(57.5)、フィリピン(50.6)、インドネシア(52.3)、ミャンマー(50.1)が景気の節目である50を超え堅調だった一方、マレーシア(46.8)、ベトナム(49.7)は節目割れとなった。インドは、前月の58.6から5か月ぶりの低水準となったものの、アジアや欧州、北米、中東からの「新規輸出受注」が増加し堅調だった。ベトナムは、アジア諸国を中心とした「新規輸出受注」は2か月ぶりに上昇したが、ここ数か月間積みあがっていた在庫が新規受注用に回ったことから、生産量が減少した。
[ユーロ圏] EU統計局(Eurostat)によると、8月のユーロ圏の小売売上高は前月比▲1.2%と2か月連続で減少した。内訳をみると、食料品(▲1.2%)と非食品(▲0.9%)がともに5か月ぶりに減少した。また、通信・インターネット販売(▲4.5%)が3か月ぶりに減少、ガソリン(▲3.0%)は3か月連続で減少した。国別にみると、ドイツ(▲1.2%)は2か月ぶりの減少、フランス(▲2.8%)は2か月連続で減少した一方、スペイン(+0.4%)は継続して増加となった。物価上昇率が小売の重石になっている。
[米国] 10月3日、米国史上初めて下院議長が解任される事態を受けて、10月4日、下院共和党指導部ナンバー2のスカリス共和党下院院内総務と、トランプ前大統領に近いジョーダン下院司法委員長が、マッカーシー氏の後任として立候補を表明した。ジョーダン氏は、米国にとっての優先課題は対ウクライナ支援の継続ではなく、米国の国境管理の強化と主張しており、対ウクライナ支援の継続に否定的な政治家が次期下院議長に就任した場合、大きな影響が及ぶことになるとみられる。
[トルコ] 10月3日にトルコ統計局が発表した9月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比+61.53%と3か月連続で上昇した。CPI上昇率が60%を超えるのは今年に入って初めて。トルコのCPIは2022年10月に+85%を超えたのをピークに徐々に低下していたが、7月から再度上昇に転じた。エネルギーや食品価格の上昇、増税やリラ安などが影響しているとみられる。トルコ中央銀行は6月から4か月連続で利上げを実施し、現在政策金利は30%まで上昇したが、依然実質金利はマイナス状態が続いている。
[米国] 10月4日、商務省は、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の次期交渉会合が、10月15~24日までマレーシアのクアラルンプールで開催されると発表した。第6回目となる交渉会合で、貿易、クリーン経済、公正な経済の3分野で早期妥結を目指すことになる。すでにサプライチェーン分野については2023年5月に大筋合意が発表され、9月には合意テキストも公表されている。交渉を主導する米国としては、11月のアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議のタイミングまでに、IPEF実質合意にこぎつけたい考え。米経済界には、IPEF構想自体には反対はしていないが、市場アクセスなどにも踏み込むべきとの声がある。
[中国] 10月4日、米調査会社ローディアム・グループは、米シンクタンク アトランティック・カウンシルとの共同プロジェクトである年次レポート「China Pathfinder」最新版を発表した。中国の改革開放の進展を追跡することを目的としている。2022年度は、貿易開放度では市場基準の範囲内となったが、イノベーション・システムの開放性や開放的な市場経済の指標は低下した。中国経済の不況は新型コロナウイルス感染症流行による一過性のものではなく、それ以前より続く構造的な問題で、中国は、しっかりした議論を行い、GDP目標の代わりに雇用やインフレなどの目標を明らかにし、中国経済の構造的問題の解決に取り組むべきだとしている。
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