2024年11月6日 (水)
[米国] AIデータセンターは膨大な安定電力を必要とするため、原子力発電の利用を模索する動きが相次いでいるが、既存原発の利用が容易でないことを示す事例も散見される。11月1日、米連邦エネルギー規制委員会はペンシルベニア州サスケハナ原発から隣接するAmazonデータセンターへの電力直接販売を増やすTalen Energyの申請を却下。性急に大型データセンターの建設を進めることで、インフラや電力網に負荷をかけ、家計やその他事業分野へのコスト増と電力供給不安定化につながることを懸念したもの。また11月4日付FT紙は、Metaが米国内で計画していた原子力発電利用のAIデータセンター建設計画もとん挫した、と報道。プロジェクト予定地で希少種のハチが発見されたことが理由の一つだという。
[英国/ナイジェリア/南アフリカ] 11月3~6日の日程で、英国のデイヴィッド・ラミー外相がナイジェリアと南アフリカを訪問した。ラミー氏はナイジェリアではティヌブ大統領、トゥガー外相らと会談を行い、両国間での互いの経済成長や国家安全保障等の分野で協力を行う戦略的パートナーシップを締結すると発表した。また、同氏は南アフリカではラモラ外相と会談を実施し、英国と南アが貿易と防衛分野での協力を強化すると発表した。前保守党政権下では、EU離脱、コロナ禍からの影響や難民等の国内問題、ウクライナ紛争等への対応のため、英国の対アフリカ外交は弱まったと指摘する声が多かったが、労働党政権ではアフリカ諸国との外交関係強化を図る動きがみられる。
[イタリア] 世界経済は堅調に推移していると指摘されるが、高級ブランド品に限ってはそれが当てはまらないようだ。スイスの時計輸出は頭打ちの影響で労働調整が進んでおり、ルイ・ヴィトン(LVMH)は世界各地で閉店を進め、リストラモードに入っているようだ。高級ブランドへの逆風が強まる環境下で、フェラーリ社は、第3四半期の出荷台数は前年同期比▲2%と小幅減少に留まり、売上や利益はアナリストの見通しを上回ったことや、2026年まで販売予定が埋まっているとの会社側の発表から、同社の事業の順調さを印象付けた。しかし、中国向け出荷台数が▲29%と伝わると期待は失望感へと変わり、上場しているミラノ市場で、同社の株価は6%以上もの下落を記録した。
[インドネシア] 11月5日、中央統計局(BPS)が発表した第3四半期(7?9月)の実質国内総生産(GDP)成長率は、前年同期比+4.95%となり、第2四半期の+5.05%から鈍化し、4四半期ぶりに5%を下回った。投資と輸出の増加が家計消費の弱さを補った。1~9月の成長率は+5.03%を維持したが、2024年の政府目標である+5.20%の達成は厳しい状況である。政府は今後、特定の不動産販売に対する税控除など、既存の政府のインセンティブが消費を支えることに加え、労働集約型産業により解雇を避けるための政策も打ち出す意向を示している。
[米国] 11月5日に投票が行われた米国大統領選挙の開票作業が北東部や南部といった地域の州から開始されている。注目されているのは大統領選挙の帰趨を決する「激戦州」7州の行方である。とりわけ、「激戦州」の中では最多の大統領選挙人19人を持つ東部ペンシルベニア州の結果に関心が集まっており、ハリス副大統領とトランプ前大統領ともに、最も多く遊説を行った州でもある。トランプ氏は開票作業が進む中、ペンシルベニア州で不正が行われていると主張している。
[ウズベキスタン] 10月27日、中央アジアのウズベキスタンでは、議会下院(定数150)選挙が前倒しで行われ、与党の大統領派、ウズベキスタン自由民主党(UzLiDeP)が勝利し、新下院では約4割の議席を獲得した。欧州安全保障協力機構(OECD)は、「すべての議会政党が大統領に忠実で、野党が弾圧されているため、有権者にとって『真の選択』がなかった」として選挙を批判した。
[イスラエル] 11月5日、ネタニヤフ首相は、戦争の遂行方法に関する大きな隔たりが生じ信頼が崩壊したことを理由として、ガラント国防相を解任した。ガラント氏の後任はカッツ外相が務め、無所任大臣として9月に閣僚入りしたサアル元内相が後任の外相となる。ガラント国防相と度々衝突してきた極右のベングビール国家安全保障相はこれを「正しい決断」としたが、ラピード元首相や戦時内閣の閣僚を務めたアイゼンコット元軍参謀総長らは、戦時中に国防相を解任するのは「狂気の行為」だと強く批判している。
[米国] 11月4日、国際機械工労組(IAMAW)は、ボーイング社からの新労働協約案を組合員が承認したことを明らかにした。9月と10月の2度にわたって、IAMAW組合員は会社側の提案を否決してきたが、今回は約59%の組合員が賛成に回った。今後4年間で38%昇給となり、会社側によると組合員の平均年収は現在の7.6万ドルから11.9万ドルになる見込み。また、組合員は新協約締結ボーナスとして1.2万ドルも受け取る。これによって、9月13日から始まっていたストライキは、7週間強を経て終結する。労使交渉を仲介したバイデン政権からも労使交渉妥結を歓迎するコメントが発表された。
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2024年11月18日(月)
『Quick Knowledge 特設サイト』に、当社シニアエコノミスト 鈴木 将之のQuick月次調査・外為11月レビューが掲載されました。 - 2024年11月15日(金)
TBSラジオ『週刊・アメリカ大統領選2024(にーまるにーよん)』TBS Podcastに、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司が出演しました。 - 2024年11月14日(木)
『日本経済新聞』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2024年11月13日(水)
『朝日新聞GLOBE+』に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司のインタビュー記事が掲載されました。 - 2024年11月8日(金)
NHK World 『Newsline』に当社シニアアナリスト 浅野 貴昭が出演しました。