2024年9月13日 (金)
[ユーロ圏] 欧州中央銀行(ECB)は9月12日に理事会を開催、中銀預金金利を0.25%pt引き下げて3.5%にすることを決定した。また、主要政策金利を3.65%、限界貸出金利を3.9%に設定した。これら二つの金利は、3月の決定に従って中銀預金金利の差が縮小した。先行きについては、経済データ依存、会合ごとのアプローチをとり、政策金利の経路について事前に特定の道筋を確約しないとこれまでの姿勢を維持し、追加利下げについてヒントが示されなかった。
[リチウム] 長く続いた価格下落に歯止めがかかるとの期待が急浮上している。炭酸リチウム価格は2021年から2022年にかけて暴騰したが、既にピークから9割下落。世界各地の生産者が減産やプロジェクト延期に追い込まれたが、なお供給過剰が続いた。しかし、9月11日、中国の車載電池大手CATLが江西省宜春市で展開するリチウム(レピドライト)事業がコスト割れとなり、ついに生産調整を決定したようだと複数の情報筋が報告。CATLは電池部門が黒字ならリチウムの低収益をある程度許容するとみられたが、リチウムの生産停止が事実なら中国の月間生産量が8%削減され、需給安定・価格底入れにつながる。ただ、価格が戻ればすぐ生産も回復するとして、なお慎重な見方もある。
[コロンビア] 財政赤字と経常赤字が同時に発生する「双子の赤字」が続いている中、経常赤字は2024年第2四半期に対GDP比で1.6%と過去20年近くで最低となり、海外送金や海外直接投資は好調に推移している。信用格付けのアウトルックはネガティブではあり、不透明感が強い状態が続くが、経済はソフトランディングとなる可能性もでてきた。
[南アフリカ] 9月11日、政府は「基礎教育法改正法案(BELA)」のラマポーザ大統領による署名式を9月13日に実施すると発表した。同法案に関しては7月に発足した「国民統一政府(GNU)」内第2党の民主同盟(DA)が以前から強く反対していたことから、DAは、署名式実施の発表直後に「GNUの将来に破壊的な影響を及ぼす」と第1党のアフリカ民族会議(ANC)に警告した。また翌12日には、13日の大統領による法案署名後に違憲申し立てを行う可能性を残しつつもGNUの一員として譲歩する声明を出したものの、親ビジネス政権として市場の信頼を取り戻しつつあるGNU内で初の本格的な対立として捉えられている。
[米国] 9月10日にフィラデルフィアで、ABC News主催で行われたハリス副大統領とトランプ前大統領との初対決となる大統領候補テレビ討論会を経て、米主要メディアや各種最新世論調査結果は、ハリス氏優勢という見方や結果でおおむね一致している。そうした中、9月12日にトランプ氏は、バイデン氏、ハリス氏との討論会で、インフレ対策や不法移民問題などの争点について既に詳細に議論したとして、3回目の討論会は行われないとの見方を自らのSNS上で明らかにした。
[タイ/中国] タイ電気自動車協会によると、2024年の新規EV登録台数は80,000台に達すると見込まれているが、当初の予測である15万台には届かないとみられ、2023年の76,000台をわずかに上回る約5%の増加にとどまる。この理由として、家計債務が過去最高に近づいている中で、貸し手が新規自動車ローンの承認に慎重になっていることが挙げられる。EV販売台数が当初予測を大幅に下回る見込みであるため、EV3.0の生産インセンティブを活用して2024年から現地生産を開始しているBYDや長城汽車(グレートウォールモーター)などの中国EVメーカーにとって、インセンティブの効果が薄れる恐れがある。そのため、これらのメーカーはタイ政府に対し、インセンティブの変更を求めている。
[エジプト/中国] エジプト政府が、老朽化した米国製F-16戦闘機を、中国製のJ-10C(殲-10C)戦闘機に置き換えていく方針を決定した。エジプトで9月3日から開催されていた「第1回エジプト航空ショー」にもJ-10Cは展示された。パキスタンに次いで、中国の4.5世代以上の戦闘機を受け入れる2番目の国となる。エジプト側はF-16の強化型とJ-10Cを比較した際、値段が同じものの性能はJ-10Cの方が優れてると説明したが、イスラエルのガザ攻撃が決定に影響した可能性もある。中国の報道では、エジプトは空対空ミサイル(PL-15E)も中国から購入予定で、中国の第5世代ステルス戦闘機FC-31にも関心を示している。
[タイ] 9月12日、ペートンタン首相が国会で初の施政方針演説を行った。同首相は10項目の「緊急政策」として、家計債務対策、中小企業支援、エネルギー価格の引き下げ、インフォーマル経済への課税、景気の刺激、農業の近代化、観光の振興、違法薬物対策、犯罪対策、社会福祉の拡大を挙げた。セター前政権が推進してきた政策を継承しているが、デジタル・ウォレットの優先度や実施のあり方については修正する考えが示唆されているとの見方もある。
[中国/サウジアラビア/UAE] 9月11日、サウジアラビアのリヤドを訪問中の中国の李強首相は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子兼首相と会談し、政治、安全保障、エネルギー、投資、貿易、文化など多岐にわたる分野における二国間関係についての協議を行った。近年サウジは中国との関係を強化。中国も中東諸国との関係強化を図っている。李氏はリヤドで湾岸協力会議(GCC)のブダイウィ事務総長とも会談し、中国・GCC間でのFTA交渉の促進について話し合った。翌12日に李氏はUAEを訪問し、同国大統領との会談を実施した。
[米国/ベネズエラ] 9月12日、米バイデン政権はベネズエラのマドゥロ政権関係者に対する制裁措置を発表した。7月28日に実施されたベネズエラ大統領選挙の阻害、人権侵害などを理由に挙げ、財務省はベネズエラ政府関係者16人の在米資産凍結、米国との取引禁止を発表した。また国務省からも同様の理由で査証発給制限が課された。
[英国/米国/ウクライナ] 9月11日、ラミー英外相とブリンケン米国務長官が同行しウクライナを訪問した。記者会見や訪問時のインタビューでラミー外相は、ロシアの「帝国主義、ファシズム」を非難し、永続的な対ウクライナ支援を行うことを強調。ロシア領内での長距離ミサイル使用承認に関する回答はさけたものの、スターマー英首相が米国訪問中の9月13日にバイデン大統領と協議するとみられる。
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2024年12月3日(火)
『日本経済新聞(夕刊)』に、米州住友商事会社ワシントン事務所長 吉村 亮太が寄稿しました。 - 2024年11月28日(木)
ラジオNIKKEI第1『マーケットプレス』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行が出演しました。 - 2024年11月19日(火)
『週刊金融財政事情』2024年11月19日号に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行が寄稿しました。 - 2024年11月18日(月)
『Quick Knowledge 特設サイト』に、当社シニアエコノミスト 鈴木 将之のQuick月次調査・外為11月レビューが掲載されました。 - 2024年11月15日(金)
TBSラジオ『週刊・アメリカ大統領選2024(にーまるにーよん)』TBS Podcastに、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司が出演しました。