2024年9月17日 (火)
[ナイジェリア] 9月16日、国家統計局(NBS)は8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で+32.15%と発表した。インフレ上昇率は2か月連続の低下となった。2023年5月にボラ・ティヌブ大統領が就任直後に導入した燃料補助金の一部廃止と変動相場制への移行によるショックが、落ち着いてきたとみられる。年内にインフレ率は+30%を下回るとの見方も多いが、9月に入り、ナイジェリア石油公社はガソリンの小売価格を2度引き上げていること、また通貨ナイラが対ドルで下落傾向にあること、北部の洪水が食糧生産に影響を及ぼす影響があることなどが、物価の上振れリスクとなるとみられる。
[ポーランド] 暴風雨「ボリス」が中央ヨーロッパを襲い、この数日で1か月以上分の降雨をもたらし、この20年で最悪の洪水被害に見舞われている。オーストリア、ポーランド、チェコ、ハンガリーはいずれも異常な降雨を経験した。ポーランド政府は、同国南西部の広範囲に渡り壊滅的な被害を受けたことで非常事態を宣言し、緊急の被災地支援を実施している。チェコでは暖房供給施設や電力供給システムが影響を受けている。洪水の影響で橋が崩落し、水没した市街地から住民が救出されている映像が確認されている。ドナウ川流域の都市では、今後水位の上昇が懸念されることから被害拡大が懸念され、対応に追われている。雨は一時的に弱まったものの、依然として天候は不安定で予断を許さない状況が続いている。
[中国] 9月14日に国家統計局が発表した8月の主要統計によると、小売売上高、鉱工業生産、固定資産投資のいずれも減速が示された。8月の小売売上高は夏季休暇シーズンのピークにもかかわらず、前年同月比+2.1%(前月は+2.7%)で、2022年とコロナ禍以来最も低い伸び率となった。自動車(▲7.3%)、金・銀・宝石(▲12.0%)、化粧品(▲6.1%)などのぜいたく品への支出が最も減少した。8月の鉱工業生産は前年同月比+4.5%(前月は+5.1%)で、過去5か月で最も低い伸び率となった。1~8月の固定資産投資は前年同期比+3.4%となり1~7月の+3.6%から減速した。民間投資が▲0.3%(1~7月は横ばい)とマイナスになり悪化した。不動産投資は▲10.2%と1~7月の▲10.1%からさらに落ち込んだ。8月の都市部の失業率は5.3%(前月5.2%)とわずかに上昇した。8月の若年層の失業率は発表されなかった。7月は17.1%(6月13.2%)と2024年で最も高い水準に達していた。
[インド] 9月13日、インド最高裁は酒類販売政策に関する汚職の容疑で逮捕されたケジリワル・デリー準州首相(野党・庶民党(AAP)党首)の保釈を認めた。判事の一人は逮捕のタイミングと必要性に疑問を呈し、不当だと指摘した。ケジリワル氏は総選挙の投票が始まる1か月前の3月に逮捕され、5月に選挙活動を許可するとしていったん仮保釈されたが、6月初めに再び拘束されていた。9月15日、ケジリワル氏はデリー準州首相を辞任すると発表した。同氏はこれまで辞任要求に抵抗し続けていたので、驚きの発表だった。デリー準州議会の次期選挙は2025年2月に予定されている。
[イエメン/イスラエル] 9月15日、イエメンの反政府組織フーシ派がイスラエルに対して発射したミサイルがテルアビブ近郊のイスラエル中部まで到達し、イスラエル軍によって空中で破壊された。フーシ派報道官は、発射したのは新型の極超音速ミサイルで、イスラエルまで2,040㎞の距離をわずか11分半で到達したと発表した。ミサイルによる直接の負傷者はいなかったが、避難する際に9人が負傷したとのこと。イスラエルのネタニヤフ首相は、「フーシ派は重い代償を払う」として、報復攻撃を示唆した。
[米国/中国] 9月13日、米通商代表部(USTR)は、通商法301条に基づく対中追加関税の引き上げに関して、最終決定に至ったことを発表した。2024年5月、USTRは対中301条関税の対象品目と関税率のリストを発表し、それらのほとんどを8月1日から賦課する予定だったが、パブリックコメントを精査するとの理由で延期されていた。5月当初の案と比べると、一部の医療関連製品やウェハー、ポリシリコンなどのさらなる関税引上げなどが含まれている。新関税率の適用が2025年、26年から始まる一部の対象品目を除いては、今年9月27日より関税の引き上げが始まる予定となっている。
[米国] バイデン大統領は日本製鉄によるUSスチール買収計画について、USスチールは米国内で所有、運営し続けられるべきであるとして反対姿勢を明確にしている中、対外外国投資委員会(CFIUS)は、同買収案件が米国の国家安全保障に脅威をもたらさないか審査を進めている。ワシントン・ポスト紙は9月13日付報道で、同買収計画を支持する投資家やペンシルベニア州民主党関係者らからの反発が顕著となっており、バイデン氏の判断が大統領選挙後に先送りされる可能性を示した。
[フランス/EU] 9月16日に、フランス選出のブレトン欧州委員会委員(域内市場担当)が突然の辞任を発表した。これまで同氏はフォン・デア・ライエン委員長との関係が険悪とみられており、辞任を発表した書簡には同委員長とマクロン大統領の政治的な取引を非難する内容が書かれていた。
[中国] 9月13日、全国人民代表大会常務委員会は、「法定定年退職年齢の段階的引き上げに関する決定」を発表した。2025年1月より、15年間にわたって、男性従業員の法定定年退職年齢を現在の60歳から63歳に、女性従業員の年齢を現在の50歳と55歳からそれぞれ55歳と58歳に段階的に引き上げるとしている。かなり前から政府や専門家は法定定年退職年齢の引き上げを望んでいたが、世論の反発が大きく、引き伸ばしになっていた。今回、多くの法律で一般的となっているパブリックコメント期間は設けられなかった。
[ロシア] 9月16日、プーチン大統領は、露軍兵士の定員を現行の132万人から18万人増やし、150万人に定める大統領令に署名した。ロシアによるウクライナ侵略の開始後、露軍兵士の定員拡大措置は3回目となる。ロシアは兵力を増強し、攻勢を強める方針とみられる。
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