デイリー・アップデート

2025年2月12日 (水)

[インド] 2月7日、インド準備銀行(RBI)は政策金利(レポ金利)を25bp引き下げ、6.25%とした。2020年5月以来、4年9カ月ぶりの利下げとなり、金融政策は緩和方向へ転じた。これまで通貨安やインフレ抑制への対応から、11会合連続で政策金利を据え置いてきたが、国内の景気減速を踏まえ利下げを決定した。今回の利下げが消費を刺激し景気を底上げされることが期待される。RBIは、金融スタンスは「中立」としつつも、さらに経済成長を支援する(=利下げの)余地が生まれたと説明している。今回の決定を受け、多くのエコノミストは、今後も金融緩和を継続すると予測している。

[ケニア] 2月5日、中央銀行(CBK)は金融政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を50bp引き下げ、+10.75%とした。利下げは4会合連続となった。CBKは利下げの理由として、直近1月のインフレ上昇率が+3.3%と、目標の中間値である+5.0%を下回っていること、また、2024年の実質GDP成長率が+4.6%と2023年の+5.6%から減速したことから経済活動の支援が必要なためとした。他方、2024年の経常赤字(対GDP比)は3.7%で、2023年の同4.0%から低下した。中銀はディアスポラ(在外ケニア人)からの送金と海外からの観光客の増加、石油輸入額の減少を理由としている。

[ルーマニア] 2月10日にヨハニス大統領が辞任を表明した。2月12日以降は、ボロジャン上院議長が5月に予定されている大統領選挙まで暫定大統領を務める。2024年11月に行われた大統領選挙で親ロシア派のジョルジェスク候補が勝利するも、外国の干渉があったとして憲法裁判所が選挙結果を無効と判断していた。

[エネルギー] 欧州ではガス在庫が急速に減少し、先物価格(欧州指標TTF)が年初から18%上昇。真冬の暖房需要・不安定な再エネ出力・ロシア産ガス供給減少などが背景。季節性として3月末までは在庫減少が続くが、EUの規定で11月1日までに90%まで補充する必要があり、LNGの大量輸入が必要となるため、欧州ガス価格はアジアLNGより高く、先物市場では2026年2月限まで50ユーロ/MWhを超える。期近価格はバレル換算で100ドル/バレルを超え、ガス需要の一部が重油・ディーゼル等の石油製品や石炭にシフトする可能性も取りざたされている。欧州ではエネルギーコストと産業競争力が再び政治的課題となっている。

[米国] NY連銀の1月の「消費者期待調査」によると、1年先の期待インフレ率は3.0%となり、2024年6月以降、おおむね3%で安定している。3年先の期待インフレ率は12月と同じ3.0%となり、7月(2.3%)から拡大してきた。5年先の期待インフレ率も3.0%であり、12月から0.3pt上昇した。1年後についてはガソリンや商品、医療費などの価格上昇率も拡大しており、消費者が再び物価上昇への警戒感を強めつつあるようだ。

[米国] 米国のビール生産者団体であるBrewers Associationは鉄鋼・アルミに対する追加関税について声明を出しており、小規模及び独立系ビール醸造者に悪影響を及ぼすと警告している。缶ビールのコストの15-20%が缶そのもの費用と見られており、アルミ価格の上昇がビール業界全体の収益を圧迫し、結果的には雇用にも悪影響を与えうるとの懸念を表明している。また、全体の9割以上を占める年産1万バレル以下の醸造所がもっとも影響を受けるとも主張している。なお、米国のビール産業では6000以上の醸造所で13万人以上が雇用されているとのこと。2018年の関税引き上げでは14億ドルの負担増になるとの試算があったので、今回のインパクトはそれ以上の金額となる可能性がある。今回の関税引き上げで1缶当たり1セント程度の影響を受けると見られており消費者の負担感は小さい。ただし、米国のビール消費量は230億リットル、缶ビールはそのうち6割程度と見られており、1缶あたり355mlとしたら388億缶ほどとなるので総額としての負担は巨額となる。

[イスラエル/パレスチナ] 2月10日、ハマスは2月15日に予定されていた次の人質解放を行わないと発表した。イスラエルとハマスは1月19日の停戦合意発効以降、これまで5回にわたる人質交換を実施するなど順調に進んでいるように見えたが、ハマスはイスラエルが依然ガザでパレスチナ人を殺害するなどの停戦合意違反を繰り返しているとして、今後の人質解放を停止すると発表した。これに対し、トランプ米大統領は、「15日の正午までにハマスが人質全員を解放しなければ、停戦合意は破棄され、ガザは地獄となる」と発言。

[米国] 2月10日、トランプ政権は通商拡大法232条に基づき鉄鋼及びアルミの輸入に対して関税を賦課することを発表した。トランプ政権は1期目に、鉄鋼・アルミの輸入が米国の安全保障を損ねる恐れがあることを理由に関税賦課を始めたが、今回は除外対象国を設けず、かつアルミについては関税率を10%から25%に引き上げるとした。日本、英国、EUなどに対する適用除外措置は3月12日までに撤回するとしている。

[ロシア] ロシア連邦統計局が2月7日発表した2024年の実質国内総生産(GDP、速報値)は23年に比べて4.1%増加した。ウクライナ侵略に伴う軍需などがけん引し、2年連続のプラスとなった。しかし、インフレが続くことに加え、経済制裁も強まり、25年は成長鈍化が見込まれている。

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