2025年2月13日 (木)
[米国/南アフリカ(南ア)] 2月7日、トランプ米大統領は「南アの悪質な行為への対応」と題した大統領令に署名した。南ア政府が1月に法制化した「2024年土地収用法」が白人農家への人権侵害にあたることや、国際司法裁判所(ICJ)においてイスラエルをジェノサイドの罪で提訴したことなどを挙げ、米国にとって国家安全保障上の脅威となると非難した。2月8日、南ア外務省は同大統領令を受けて、「トランプ大統領が事実を正確に把握していないことは非常に憂慮すべきことだ」と反論した。一方で、米国から南ア向けの援助は、ほとんどが年間約4億ドル規模の「大統領AIDS救済プログラム(PEPFAR)」だが、これはルビオ国務長官が発表した人道的免除措置により、一部は支援が継続されるもよう。
[米国] 労働省によると、1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.0%となった。上昇率は12月と同じとの市場予想(+2.9%)をやや上回り、9月(+2.6%)から4か月連続で拡大した。前月比の上昇率は+0.5%であり、10月(+0.2%)から3か月連続で加速した。変動が大きい食品とエネルギーを除くいわゆるコア指数は前年同月比+3.3%となり、12月(+3.2%)から拡大した。上昇率は2024年半ばから+3.2~+3.3%のレンジで推移しており、物価の基調は高止まりしている。連邦準備制度理事会(FRB)の利下げを急がない姿勢を補強する材料になったようだ。
[ブラジル/米国] トランプ米大統領は、鉄鋼とアルミニウムの輸入品に25%の関税を課すことを決定した。ブラジルに適用されていた追加関税免除の割当ても停止される。ブラジルの鉄鋼輸出はその48%が米国向けとなっており、影響は大きい。再び同割当ての適用を求めると発表しているが、交渉は困難とみられている。
[中国] 2月9日、国家統計局は1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+0.5%だったと発表した。春節期間中の消費増加が寄与し、前月の+0.1%を上回り、過去5か月で最も高い伸びとなった。また、1月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比▲2.3%となり、28か月連続で下落した。製造業が依然として海外との競争や低需要に直面しているとみられる。
[欧州] トランプ大統領がウクライナ情勢に関する和平交渉開始を発表したことを受け、欧州各国がヨーロッパを阻害した形のハイレベル協議に警戒している。2月12日に開かれたワイマール・プラス会合後の声明文で、ドイツ、ポーランド、フランス、イタリア、スペイン、英国、ウクライナ、EUの外相らは、「ウクライナにおける公正で永続的な平和は、強固な大西洋横断安全保障の必要条件」と警戒感を示した。
[オーストラリア(豪州)/米国] 2月10日、トランプ米大統領が全貿易相手国からの鉄鋼・アルミ製品の輸入に対して25%の追加関税を課すとする大統領布告を発表したが、豪州については、アルバニージー首相と電話会談し、米国が貿易黒字であることを理由に除外することを検討すると述べた。しかしアルミ製品の輸入規制に関する大統領布告には、「2024年の米国へのアルミニウム輸出量は、2015年から2017年の平均と比較して約103%増加した」、「豪州はアルミ輸出を合理的なレベルに自主的に抑制するという口頭での約束を無視している」とされていた。
[米国] 2月12日、下院共和党は予算決議案を公表し、トランプ減税の延長・拡充を目指した一歩を踏み出した。決議案によれば、10年間で1.5兆ドルの歳出削減を図り、トランプ減税の延長や拡充が4.5兆ドル規模、かつ連邦債務上限を4兆ドルほど引き上げる内容となっている。3月14日に暫定予算が失効するため、議会は予算案を可決する必要があるが、下院共和党は歳出のみならず、減税や債務上限引き上げなどをまとめた立法を目指している。一方、上院共和党は、この限られた時間で税法まで改定するのは困難と考えており、両者のアプローチには齟齬が見られる。
[ウクライナ/ロシア/米国] 2月12日、トランプ米大統領が、ロシアのプーチン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領と相次いで電話会談し、約3年にわたり戦火を交える両国の調停を本格化させる動きを見せた。トランプ氏と電話会談に応じたゼレンスキー大統領は、米ロ首脳電話会談の詳細な説明を受けたとし、「ロシアの侵略を阻止し、恒久的な平和を保障するために米国と歩調を合わせる」と表明した。
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