2025年2月27日 (木)
[G20/南アフリカ(南ア)] 2月26~27日にかけて南アで開催されているG20財相会議の冒頭で、南アのラマポーザ大統領が開会演説を行った。同氏は「世界の不確実性が高まる今こそG20の協力が必要」であるとし、多国間主義と団結の重要性を強調した。その上で、1.気候災害への耐性、2.途上国の債務持続性、3.公正なエネルギー転換のための資金動員、4.重要鉱物を活用した成長、の4つを優先すべき議論に特定したと述べた。しかし、同会合にはベッセント米財務長官をはじめ、日本、中国、インド、カナダ等主要国の財相の欠席が報じられている。2月20~21日に南アで開催されたG20外相会合と同様に、十分な議論が行われず、共同声明の採択に至らないとの見方が多い。
[チリ] 2月26日、送電線の故障により国土の約90%が停電に見舞われ、約800万世帯が影響を受けた。政府は非常事態を宣言し、夜間外出禁止令を発令した。現在はほとんどの地域で復旧しており、政治的、経済的影響は限定的とみられる。しかし、南北に長いチリは地理上送電線が長くなるという脆弱性があり、インフラ強化の必要性が改めて示された。また、近年エネルギー投資を拡大している中国への依存度が高まっていることも懸念される。
[タイ] 2月26日、中央銀行(BOT)は金融政策委員会を開催し、政策金利である翌日物レポ金利を0.25%pt引き下げ、2.00%とした。国内の経済成長の鈍化と貿易政策の不確実性を考慮し、利下げに踏み切った。政府は景気の下支えと輸出の加速を目的に、通貨バーツの下落を促すべく、BOTに対し一段の金融緩和を求めていた。BOTは2024年10月に0.25%の利下げを実施し、12月は据え置いていた。1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+1.3%と小幅に上昇したものの、BOTの目標レンジ(1~3%)の下限にとどまっている。経済の低迷が続いていることが、インフレ率の抑制要因となっている。
[米国] NY連銀スタッフの研究調査によると、中国からの輸入品すべてに追加関税が課されるならば、米国経済が物価上昇に直面する恐れがあると指摘された。第1期トランプ政権時にも中国には追加関税が課された。しかし、800ドル以下の小口輸入品に対しては関税を免除するルール(デミニミス・ルール)が適用されていた。米中双方の貿易統計から、中国から米国への少額取引が増加してきたことが示唆されている。現在の10%の追加関税でも小口輸入は対象外になっているが、この部分にも関税が課されることになれば、米国内の物価上昇圧力がさらに高まる恐れがある。
[欧州] 2月26日、欧州委員会が、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)、企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)、EUタクソノミー規則、炭素国境調整メカニズム(CBAM)、InvestEU規則の簡素化を目指すオムニバス法案を発表した。行政負担を25%以上、中小企業の規制負担を35%以上削減することで持続可能な経済を可能にする投資活性化を目指す。
[中国/台湾] 2月26日、台湾国防部は、中国軍が慣例を破り、事前通告なしに台湾海峡の沖合約40海里の海域に軍事区域を設定し、射撃訓練を行うと発表したとして非難した。中国の戦闘機や無人機32機が訓練に参加し、中間線を越えて台湾側に進入した。2月25~26日にかけて、北京では2025年台湾工作会議が開催されており、また、25日に台湾の海底ケーブルをトーゴ籍の中国船舶が切断したことが問題となっていた。
[ベトナム] 2月18日、ベトナム国会が政府機構の再編を承認した。1月にベトナム共産党が承認した再編案に沿ったものであり、中央省庁は、計画投資省と財務省が統合されるなど、5省庁が廃止、1省庁が新設される。また国会は、グエン・チー・ズン計画投資相とマイ・バン・チン中央国民運動委員長の2人を副首相に昇格させた。副首相は現行の5人から7人となる。最高指導者であるトー・ラム党書記長は、2024年8月の就任以来、大規模な改革を推進している。
[イスラエル/パレスチナ] 2月26日夜から27日早朝にかけて、イスラエルとハマスの人質交換が実施された。ハマスは人質4人の遺体をイスラエルに返還し、イスラエルは22日の人質交換の際に釈放しなかったパレスチナ人も含め、642人の囚人やガザで拘留したパレスチナ人を釈放した。今回の交換で、停戦合意の第1段階で行われる予定の人質交換は完了したが、第2段階に関する協議がいまだに始まっておらず、双方および仲介国はさらなる人質交換を含む第1段階の延長を模索しているものとみられている。
[米国] 2月26日、トランプ大統領は、EUからのに輸入品に対して25%関税を賦課することを決定し、近日中に発表すると発言した。現在、国別の関税では、2月4日から対中10%追加関税の賦課が行われており、カナダ、メキシコに対する25%関税は、国境警備の改善が認められない限り、3月4日から施行される見込み。また、早ければ4月2日以降、各国の貿易障壁に応じた関税率を米国が設定する可能性がある。製品別関税としては、鉄鋼とアルミの輸入品に関する追加関税が3月12日より賦課される予定だが、この他にもトランプ大統領は、半導体、医薬品、自動車などへの追加関税を示唆している。
[ロシア/米国] 2月26日、ラブロフ露外相は、ロシアと米国の代表団が2月27日にトルコのイスタンブールで会合を開き、大使館の機能回復を話し合うと明らかにした。両国は先週、サウジアラビアで行った高官協議で大使館員の人数を回復させることを決定したばかりである。両国はこれまで、スパイやハッキングの疑惑、さらにロシアのウクライナ全面侵攻で外交官を追放し合い、大使館員の人数は互いに最小限にまで減っている。
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