デイリー・アップデート

2024年7月2日 (火)

[モーリタニア] 6月29日、5年ぶりの大統領選が実施され、現職のモハメッド・ウルド・ガズワニ大統領(現アフリカ連合議長)が56.12%を得票し勝利した。候補者はガズワニ氏を含め7名で、投票率は55.39%だった。22.10%の票を獲得した野党で反奴隷制活動家のビラム・ダ・アベイド氏は選挙に不正があったと主張。後日、憲法裁判所は最終結果を発表する見込みだが、ガズワニ大統領の再選はほぼ確実とみられる。隣接するマグレブ諸国や軍事政権が続くサヘル諸国とも良好な関係を維持し、旧宗主国のフランスを含むEUとも難民対策で連携する同国の地域内での政治的役割は高まっている。また天然ガスをはじめとする天然資源も豊富で、再生可能エネルギーを利用したグリーン水素プロジェクトでも注目を集めている。

[原料炭] Anglo Americanが豪クイーンズランド州に保有するGrosvenor炭鉱の坑内で6月29日にメタンガス爆発による火災事故が発生。幸いけが人はなかったが、同社は同炭鉱の生産を停止し、被害状況の調査と鉱山への再入坑には数か月かかる見通しを示した。原料炭価格は6月まで軟調に推移していたが、週明け7月1日のシンガポール先物相場は10%近く上昇した。この鉱山では2020年にも5人が重傷を負うガス爆発事故が発生し、2022年5月に再開したばかり。まだ黒煙が上がっており、同炭鉱が再稼働不能となるおそれや環境災害への懸念が生じているという。Anglo Americanは5月、同業BHPから受けた買収提案に対する防衛策として銅・鉄鉱石事業に集中する合理化計画を打ち出し、その第一弾が原料炭事業の売却になるとみられていたが、見通しが不透明化している。

[チリ] チリの電気料金は、2019年10月に発生した大規模なデモにより4年以上にわたって凍結されていたが、7月より段階的に引き上げられる。電気料金の引き上げはインフレ率の上昇につながり、ボリッチ政権には逆風になるおそれ。一般家庭では6割ほどのコスト増が想定されるが、4割の世帯には補助金が適用される見込み。

[オランダ] オランダ・スキポール空港では、米国新興企業ESSが開発した鉄フロー電池システムを試験利用している。自然エネルギーを貯蔵し、地上電力ユニットの一部に電力を供給しており、駐機中の飛行機、照明、航空電子機器、空調などのシステムを稼働させている。1980年代初頭に最初の鉄フロー電池は開発されたが、日の目を見なかった。石油が安い時代には長期エネルギー貯蔵の開発は最優先事項ではなかったからだ。鉄フロー電池の長所の一つは新しい電解液を補充することができる点で、鉄、塩、水といった安価で豊富、そして無毒な材料が使われており、火災の危険性もない。出力を高めるにはスペースを必要とするので、空港の様な土地が豊富な場所には有効である一方で、スマホやPCで使われることは、おそらく、ない。カーボンニュートラル達成には、使い分けが必要。

[フィリピン] 7月1日、全国首都圏(NCR)の地域三者賃金生産性委員会(RTWPB)は、マニラ首都圏の民間部門の非農業労働者の最低賃金を35ペソ(約96円)引き上げ、日額645ペソ(約1,770円)とすることを発表した。これは過去2年間で3度目の改定となる。消費者物価指数(CPI)は2024年1月の前年同月比+2.8%から5月には+3.9%となり上昇傾向にあり、インフレ対策のため最低賃金を引き上げたが、一方で企業にとっては人件費負担が増加することになる。7月17日から適用される。

[日本] 内閣府「消費動向調査」によると、6月の消費者態度指数は36.4となり、5月から0.2pt上昇した。上昇は3か月ぶりのことだった。内訳をみると、「暮らし向き」と「雇用環境」の指数が3か月連続で低下した一方で、「収入の増え方」と「耐久消費財の買い時判断」の指数が3か月ぶりに上昇した。1年後の物価について「上昇する」という回答割合が93.8%となり、6か月連続で上昇、物価高が消費者マインドの重石になっている。

[米国] 6月27日の第1回大統領候補テレビ討論会では、バイデン大統領はかすれ声で回答にも詰まることが多く、弱々しい姿を露呈したことで民主党内からも撤退の必要に関する議論が浮上してきている。仮にバイデン氏が8月19日からシカゴで開催される民主党全国党大会前に撤退した場合、新たに大統領候補を選出する「オープン・コンベンション」となり、バイデン支持のために選出された4,000人近い代議員は「非誓約代議員」となり、支持する他候補に投票することになる。

[EU/ハンガリー] 7月1日にハンガリーがEU議長国に就任した。EU議長国は6か月ごとの輪番制であり、任期終了は2024年12月末日となる。反EU姿勢が強く、またロシア寄りのハンガリーのオルバン首相のEU議長就任に警戒感が広がっている。

[インドネシア/中国] 複数のメディアが、インドネシアが、履物、衣類、繊維製品、化粧品、陶磁器などに対し100%から200%の関税を間もなく課す予定だと報じている。6月28日の記者会見で、同国のズルキフリ・ハサン商業相が明らかにした。米中貿易戦争が中国製品の過剰生産を引き起こし、欧米諸国から拒絶された製品がインドネシアなど他の市場に流れこんでおり、零細・中小企業から政府に対策を求める声が出ているためとしている。大臣の発言の翌日商業省高官は、インドネシア貿易セーフガード委員会が、関税率を決定するために調査中だと述べた。

[ミャンマー] 6月30日、ミャンマー国営テレビが現地法人「イオンオレンジ」に勤める日本人男性や小売業者など11人が、軍政が定めた基準を超えた価格でコメを販売していたことを理由に当局に拘束されたと報じた。イオン広報によると、拘束されたのはイオンオレンジの笠松洋・商品本部長で、無事が確認されたとしており、「日本大使館の支援のもと、早期解決を目指し、当局の調査に協力する」とコメントした。これまで邦人ジャーナリストが拘束された例はあったが、ビジネスの規制にからんで日系企業社員が拘束されたのは初めてとみられる。

[米国] 7月1日、米通商代表部は、米墨加協定(USMCA)下の自動車関連貿易の現状について報告書を議会に提出した。USMCAは2020年7月、トランプ政権下で発効しており、その前身となる北米自由貿易協定(NAFTA)と比べると、自動車関連の原産地規則がより厳格になっている。報告書は、原産地規則の執行によって自動車のサプライチェーンを米国内に回帰させる効果があったと結論付けている。今後、電気自動車(EV)の普及が進むにつれ、バッテリー調達の問題があるため、原産地規則を緩和すべきとの声も産業界から上がっている点も紹介されている。

[ウクライナ/ロシア] 6月30日、ゼレンスキー大統領は、米国メディア向けの単独のインタビューで、ロシアとの将来の和平交渉について、否定はしないが、それは仲介者を通じてのみ実施可能であると明らかにした。2022年の黒海穀物取引の仲介に使用された際の接触方法が和平交渉にも役立つ可能性があると示唆し、その場合については、戦闘を終わらせる意思があると話した。

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