デイリー・アップデート

2024年7月11日 (木)

[EU] 7月10日に欧州議会で新たな極右政党グループ、「Europe of Sovereign Nations (ESN)」が発足した。ESNの最大政党はネオナチにルーツを持つ「ドイツのための選択肢」であり、7月8日に発足した「Patriots for Europe」よりも過激思想が強い。

[イラク] 7月10日のイラク司法当局の発表によると、イラクの裁判所は、イスラム教スンニ派の過激派集団イスラム国(IS)の初代リーダーであるバグダーディー氏(2019年に死亡)の妻に対して、ISに協力して自宅にヤジディ教徒の女性を監禁した罪で死刑判決を下したとのこと。ISは2014年にイラク北部から中部にわたる地域を支配し、北部に住む非イスラムのヤジディ教徒を迫害し大勢を殺害してきた。ISによるイラクの地域支配は2017年に終わったが、今でもISの残党が民間人や治安要員に対して散発的なテロ攻撃を行っている。

[タイ] 政府観光庁(TAT)は、2025年の観光収入の目標を前年比+5~7.5%に設定し、最大3兆4,000億バーツ(約15兆円)の獲得を目指す。外国人旅行者4,000万人、国内旅行者2億2,000万人を目標とし、旅行1回当たり、平均で外国人旅行者5万7,180バーツ、国内旅行者4,000バーツの支出を目指す。TATは、2025年のTATによる観光予算を62億3,000万バーツとしている。この予算を観光地のプロモーションやイベントの開催などに充当する。2024年の観光収入は3兆5,000億バーツを目標としていたが、中国からの旅行者が、同国の景気不振により戻りが遅いことが影響し、3兆バーツ規模にとどまる見込み。

[コンゴ民主共和国/ルワンダ/ウガンダ] 7月8日、ビントゥ・ケイタ国連特別代表は国連安保理に対し、コンゴ民主共和国東部でルワンダ系反政府武装グループ「M23」の活動が急速に拡大しており、今後より広範な地域紛争を誘発する可能性があると警告した。7月9日に国連は、M23に対する支援を否定し続けている隣国のルワンダ国防軍(RDF)に加えて、ウガンダもM23の活動を支援しているとのレポートを公表。これに対して米国のマシュー・ミラー報道官も深刻な懸念を表明している。コンゴ民主共和国では国軍(FARDC)とM23等との民間人を巻き込んだ武力衝突により、700万人以上の国内避難民が発生している。

[中国] 中国財政部は、監査法人が企業の不正行為を摘発するのに十分な役割を果たせていないとの懸念から、BIG4と呼ばれる監察法人(デロイト、EY、PwC、KPMG)へのチェックを厳格化していると報じている。不動産大手の恒大集団が債務不履行に陥り清算を命じられた後、780憶ドルの売上高を水増ししていたことが判明し、恒大の監査を担当していたPwCは、少なくとも10億元の罰金を科された。昨年(2023年)は中国華融資産管理の資産の質を評価する義務を怠ったとして、デロイトが2.1億元の罰金を科された。

[タイ] 7月10日、6月に実施された上院選(定数200)の結果が正式に発表された。特定の政党に所属する人物は立候補できず、200人の当選者はすべて党から独立しているのが建前だが、実際は各政党が支持者や関係者を候補者として送り込んでいる。報道によると、中道右派の与党第2党「タイ誇り党」系の候補者が最多の約120議席を獲得した。国軍関係者等が約15議席を獲得しており、タイ誇り党とあわせて保守派は全体の約7割を占めるとみられる。前進党とタイ貢献党の議席は下院の議席割合を大幅に下回った。連立政権内でのタイ貢献党の影響力が低下し、一方、タイ誇り党の影響力は高まる可能性がある。タイ誇り党は大麻自由化の推進を強く主張しているが、セター首相は反対しており、政権内での論争が活発化する可能性がある。

[米国] ワイオミング州ジャクソンホールは、カンザスシティ連銀が、毎年8月に世界のセントラルバンカーを招いた経済シンポジウムを開催することで有名だ。地域の名が世界に知られた結果からか、この地の住民は不動産価格の高騰に悩まされている。米国センサスによると、ワイオミング州ティートン郡の平均収入は年間10万8,000ドルと比較的高いが、現地の不動産会社の最近の報告によると、一戸建て住宅の平均売り出し価格は700万ドル以上だという。価格上昇以前に、自宅を保有していても固定資産税が支払えないほど高額となる理由で自宅を手放さざるを得ない状況になりつつある、との指摘も聞かれるようになった。億万長者が百万長者から物件を買い上げて「超高級化」し、締め出された人々は山の向こうのアイダホ州へ引越し、車で1時間以上かけて職場へ通うことになった人もいる。「アメリカンドリームとか、一生懸命働けば欲しいものは手に入るとか、そういう夢を描いているなら、それはできない」と地元住民は語っている。

[日本] 内閣府「機械受注統計」によると、5月の民需(船舶・電力を除く)の受注額は前月比▲3.2%と、2か月連続で減少した。内訳をみると、製造業が+1.0%と、4月(▲11.3%)からプラスに転じた一方で、非製造業(▲7.5%)はマイナスに転じており、方向が異なった。基調判断は、4月の「持ち直しの動きがみられる」から、「持ち直しの動きに足踏みがみられる」へ下方修正された。なお、4~6月の民需(船舶・電力を除く)の受注額は前期比▲1.6%と、2四半期ぶりのマイナスになる見通しだ。

[米国] 長期の米独立記念日休会を終えて米議会上下両院は7月9日に審議を再開し、民主党の上下両院の各議員総会も同日開催され、バイデン大統領の再出馬を支持することを確認した。ところが、翌10日に民主党重鎮のペロシ元下院議長が、バイデン氏の再出馬問題で最終判断を下すのはバイデン氏であると突き放す見解を示すとともに、バーモント州選出のウェルチ上院議員は、上院議員として初めてバイデン撤退を公然と要求し、党内亀裂が依然として表面化している。

[米国/メキシコ] 7月10日、バイデン政権は、メキシコから輸入する第3国原産の鉄鋼、アルミに対して、それぞれ25%、10%の関税賦課を決定した。北米(米国・カナダ・メキシコ)原産以外の鉄鋼がメキシコ経由で輸入される場合は、通商拡大法232条に基づき、25%追加関税の対象となり、アルミの場合は、中国、ロシア、ベラルーシ、イラン産アルミが含まれている場合は10%追加関税の対象となる。中国産鉄鋼・アルミが、関税逃れのため、メキシコ経由で米国に輸入されているとかねてより批判の声があり、米鉄鋼労組などは今回の措置を歓迎する声明を出している。

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