デイリー・アップデート

2024年7月25日 (木)

[原油] 世界株式市場が急落し、商品先物市場も全般に軟調だが、ブレント原油相場は1バレル80ドル台を維持。地政学的リスク、カナダ産油地域近郊での山火事などが欧米市場で供給制約として意識される。しかし、アジアでは中国経済の減速に伴う燃料輸出増加・製油所稼働率低迷など需要悪化に焦点が当たる。ブルームバーグは、ドバイ原油がブレント原油に対し相対的に弱含んでいる点を指摘し、OPEC+減産とアジア新興国需要によるドバイ原油の相対的堅調を見込むトレードが一部巻き戻されていると指摘している。今週、インドネシアが数年ぶりにロシアから原油を購入するとロイター通信が報じたが、インドネシアは西側諸国の対ロ制裁に抵触せず、価格上限以下での購入になるという。

[ケニア] 7月24日、ウィリアム・ルト大統領は、新閣僚メンバーとして最大野党・オレンジ民主運動(ODM)の幹部4名を指名した。ケニアでは「増税法案」への反対に端を発し、現政権に不満を持つ国民による抗議デモが6月下旬から続いている。事態打開のためルト大統領は、7月11日に22名の閣僚を更迭し、野党や専門家を含めた「国民統一政府(GNU)」樹立の意向を示していたことから、今回の人選に踏み切ったとみられる。閣僚の就任は国会での承認が必要となるが、22名のうち10名は前内閣のメンバーが再選されていることから、今回の内閣改造は国民の不満を和らげるには十分ではないとの懐疑的な見方が多い。

[米国/イスラエル] 7月24日、イスラエルのネタニヤフ首相は、米議会上下両院合同本会議で米議会史上最多の4度目となる演説を行い、イスラム組織ハマス殲滅(せんめつ)のために米国により速やかに対イスラエルへの武器供与の実施を要請した。ハマスに対しては完全勝利を目指す方針も改めて表明した。ネタニヤフ氏は7月25日にバイデン大統領、ハリス副大統領と会談し、共和党大統領候補指名を受諾したばかりのトランプ前大統領とはフロリダ州パームビーチにある邸宅で7月26日に会談する予定となっている。

[ベネズエラ] 大統領選を前に、ベネズエラ市民の窮状がメディアを通じて紹介されることが多くなった。そうした事例の一つとして、ある公務員の生活状況が伝えられている。毎月の収入は国の最低賃金である130ベネズエラ・ボリバル(現在のレートで約3.5ドル)。経験、契約、技能に応じて若干増額される。労働者は毎月25日に約40ドルの食糧支援ボーナスを受け取り、また、ファザーランドカード(祖国カード)と呼ばれる政府の給付制度に登録した人はさらに90ドル相当を受け取ることができる。しかし、これだけでは生活できないので、必要なお金を稼ぐために翻訳や街での物品販売、オンラインカジノで数十セントを賭けて配当を狙うなど、さまざまな手段で収入を増やす試みを行っている。車はどんなに古くても、今やぜいたく品となってしまった。ベネズエラでは現在、人口の80%が貧困の中で暮らしているという。

[韓国] 7月25日、韓国銀行(中央銀行)が発表した第2四半期の実質国内総生産(GDP)成長率(速報値)は、季節調整済みで前期比▲0.2%だった。第1四半期は+1.3%と、2021年第4四半期以来の高い伸びだった。輸出が好調な一方で、成長を押し下げた主な要因は、内需の弱さだった。民間消費は前期比▲0.2%(前期は+0.7%)、固定資産投資は▲1.3%(同+1.1%)、固定資産投資のうち建設投資は▲1.1%(同+3.3%)とマイナスだった一方、輸出は+0.9%(同+1.8%)、政府支出は+0.7%(同+0.8%)だった。民間消費は、サービスへの支出は増加したが、商品の支出が急減したため収縮した。一方、固定投資の縮小は広範囲にわたっていた。労働市場が冷え込み、韓国の民間セクター負担が引き続き高水準にあるため、内需は年内、苦戦するだろう。

[日本] 日本銀行「企業向けサービス価格」によると、6月の企業向けサービス価格指数は前年同月比+3.0%だった。上昇率は5月(+2.7%)から0.3pt拡大。2015年3月(+3.1%)以来の大きさになった。また、消費税率引き上げ期間を除くと、1991年9月(+3.2%)以来の伸び率だった。この上昇がいずれ川下の消費者物価指数に転嫁されるとみられる。6月の国内企業物価指数の上昇と合わせみると、消費者物価指数当面はコストプッシュ型の上昇を続けるだろう。

[中国/アフガニスタン] アフガニスタンのアイナック銅鉱山プロジェクトが16年遅れでスタートすることになり、7月24日に中国とアフガニスタンの政府代表が参加して着工式が行われた。アイナック銅山は推定1,150万トンの銅が採掘される銅鉱山で、2008年に中国治金集団(MCC)と江西銅業集団のコンソーシアムがカルザイ政権(当時)と採掘契約を交わしたが、治安の悪化のため着工されていなかった。現在、首都カブールと中東部のロガール州、アイナック鉱山を結ぶ道路の建設工事が進められており、2025年初頭に竣工する予定で、採掘作業が始まるのは早くとも2年後と見られている。

[フィリピン/中国] 7月22日、マルコス大統領が就任後3回目となる施政方針演説(SONA)を行った。食料と水の安全保障、インフラ、健康、教育、雇用と生活、観光、海外送金、平和と秩序、汚職防止、ミンダナオ和平、薬物、国際関係、経済状況を主要議題とした。企業復興税優遇法(CREATE)について、1兆ペソ以上の投資誘致と10万人超の新規雇用創出につながったと強調し、改正法案(CREATE MORE)によりさらに改善すると述べた。電力について、議会に対し、電力料金抑制を目指す電力産業改革法(EPIRA)の見直しに向けて政府と協力するよう要請した。南シナ海問題については、中国への直接の言及はないが、「西フィリピン海(南シナ海)は我々のものだ、フィリピンは屈しない、私たちの立場と原則について妥協することなく、紛争地域での緊張緩和の道を模索し続ける」、と表明した。サラ・ドゥテルテ副大統領は欠席し、両者の複雑な関係を示唆した。

[米国] ハリス副大統領が早々に党内支持を固めたことが広く報道される中、米国の有力労組である全米自動車労組(UAW)が、支持表明を差し控えていると、ニューヨークタイムズ紙が報道している。UAWが傘下に入っている、米最大労組団体の米労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)は、早々にハリス副大統領支持を打ち出しており、UAWによる支持表明も時間の問題だが、UAWは、国内製造業への支援継続、中東ガザ地区での即時停戦の2点について、ハリス副大統領から明確なコミットメントを引き出したい意向とみられている。

[英国/ドイツ] 7月24日にドイツを訪問した英国のヒーリー国防相が、ドイツのピストリウス国防相と英国・ドイツの共同防衛宣言に署名した。共同防衛宣言は、英国・ドイツの防衛産業強化、Euro-Atlanticの安全保障の強化、共同作戦の効率性の向上、サイバー領域などの深化する安全保障上の課題への対処、対ウクライナ支援を目標としている。

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