デイリー・アップデート

2024年7月22日 (月)

[中南米] アンデス山脈では地球の気温上昇により、氷河は後退し、永久凍土は溶けている。その結果、数百万人がリスクにさらされている。アンデス山脈には世界の熱帯氷河の約99%が存在し、常に氷点下かそれに近い気温にあり、この標高の高さは世界の気温上昇が加速している影響を受けやすいとも言える。山脈は、地域の水循環にとって欠かせない存在で、飲料水だけでなく、農業、水力発電、鉱業などでも利用されており、地域全体の何百万人もの人々の水供給源となっている。氷河がさらに後退すると、酸性の岩石が露出し、溶けた水が酸性化して重金属で汚染され、すでに枯渇しつつあるこの地域のほかの水源に浸出することにつながる。また、気候が変化していることで、激しい降雨により生態系が劣化しており、浸食、地滑り、深刻な洪水が発生しやすくなる、という悪循環に陥ることも危惧される。

[マレーシア] 7月19日、統計局は2024年第2四半期の実質国内総生産(GDP)成長率の見込み値が前年同期比+5.8%だったと発表した。第1四半期の+4.2%から伸びが加速した。鉱業の+3.3%(前期は+5.7%)以外では、サービス部門が+5.6%(同+4.7%)、製造業が+4.7%(同+1.9%)、農業が+7.1%(同+1.6%)、建設業が+17.2%(同+11.9%)と、前期から加速した。建設業は、第1四半期に前年同期比で伸びが大きかったが、さらに加速した。第2四半期の実質GDP成長率は加速したが、今後は、インフレの急上昇が消費者支出を抑制し、観光業からの恩恵も薄れることから、景気減速になる可能性ある。

[ユーロ圏] 欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ圏の非金融法人62社に聞き取り調査(調査期間は6/17~26)の結果を発表した。2024年Q2以降、個人消費主導の緩慢な回復によって、ユーロ圏経済が緩やかに持ち直すという見通しが示された。設備投資は、先行き不透明感が重石となって、抑制的になっている。企業は、緩やかな物価上昇を予想している。ただし、観光・旅行、小売分野で、消費者価格への感度を高めており、価格の据え置きや引き下げも見られるという声もあった。

[ブラジル] 最南端のリオ・グランデ・ド・スル州(RS州)で4月下旬から5月上旬にかけて発生した大洪水の影響の大きさが懸念されていたが、同州の5月の鉱工業生産が前月比▲26.2%とパンデミック時以上の落ち込みを見せたものの、ブラジル全体では前月比▲0.9%と市場の見込みを上回った。当面、洪水の負の影響は続くとみられるものの、不確実性は低下してきている。

[米国] 7月21日、バイデン大統領は再選を断念して撤退を発表するとともに、ハリス副大統領の支持を表明した。現職大統領が再選を断念するのは、1968年のリンドン・ジョンソン大統領以来56年ぶりとなる。現職の民主党の上下両院の議員263人と民主党知事23人のうち、ハリス氏に対する支持を表明したのは179人に達しており、ハリス氏を軸に後継候補が選出されることになるとみられる。今後の焦点は、バイデン氏の後継候補が、誰を副大統領候補に指名するかが注目される。

[欧州/英国] 7月18日に開かれた欧州政治共同体(EPC)首脳会合でホストを務めたスターマー首相(英国)が、欧州全域が直面している不法移民問題に対して、英国政府が協力姿勢を強化することを発表した。また、欧州人権条約からの脱退を明確に否定するなど、保守党前政権との姿勢の違いを明確にした。

[中国/フィリピン] 7月21日、フィリピン外務省は南シナ海のアユンギン礁(英語名:セカンド・トーマス礁、中国名:仁愛礁)に座礁させているフィリピン艦への補給活動について、中国側と暫定的合意に達したと発表した。詳細は明らかにしていないが、「南シナ海における互いの立場を害することのない原則とアプローチで合意した」としており、中国外交部報道官は、フィリピンが人道的理由から補給活動を行う場合、中国側への事前の通知と現地での確認の後に、中国側の監視のもとで許可するとしている。

[ベトナム] 7月19日、ベトナム共産党がチョン書記長の死去を発表した。詳しい死因は明らかにせず「高齢と重病」と伝えた。7月25~26日に国葬が行われる予定。ベトナム共産党は前日に同書記長が病気の治療に専念し、トー・ラム国家主席が職務を代行すると発表していた。チョン書記長は80歳の高齢で、かねてから健康不安が指摘されていた。後任については、事実上の書記長代行を務めるラム主席が有力視されているが、その見通しについては、2026年に予定される党大会の前に選出されるかを含め、不透明な状態になっている。

[イエメン/イスラエル] 7月19日未明、イエメンの反政府組織フーシ派によるドローン攻撃がイスラエルのテルアビブ中心部に着弾し、1人が死亡、10人が負傷した。フーシ派の攻撃によってイスラエルで死者が出たのは初めて。翌7月20日に、イスラエル軍は報復として、イエメン西部紅海沿いの港町ホデイダにある発電所や石油貯蔵施設などの民間インフラを戦闘機で空爆。これにより大規模な火災が発生し、6人が死亡、83人が負傷した。イスラエルによるイエメンへの攻撃は今回が初めて。ガザでの紛争が地域に拡散しつつある。

[米国] 7月21日、バイデン大統領が、大統領選からの撤退を表明したことを受け、政権閣僚はSNS上で、大統領のこれまでの指導力発揮を称え、政権の政策成果を強調した。バイデン大統領の議員時代から接点を持ってきたブリンケン国務長官は、この22年間、バイデン大統領の側で職務に尽くすことができたのは名誉であり、残された任期の間もさらなる成果の達成を目指すと述べた。バイデン政権の閣僚は、辞任、罷免が無い限り、2025年1月20日の正午まで職務を担い、次期政権の後任へと引き継ぐことになる。大統領から後任指名されたハリス副大統領は、自身の副大統領候補を絞り込み、政策スタッフを集める必要がある。

[米国/ウクライナ] 7月19日、トランプ前米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が電話会談を実施した。トランプ氏は、ロシアによるウクライナ侵攻を終結させることに意欲を示す一方、ゼレンスキー大統領は、米国の超党派によるウクライナ支援が重要だと訴えた。会談後、トランプ氏は自身が立ち上げたソーシャルメディアで「次の米大統領として戦争を終わらせ、平和をもたらす」と強調した。

[スーダン/エチオピア/アラブ首長国連邦] 7月16日、国際移住機関(IOM)は、2023年4月にスーダン軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」との衝突発生以降、国内避難民が800万人増加し1,000万人を超えたと発表した。国内避難民は人口の2割に上り、食糧問題など深刻な人道上の危機が続いている。事態打開のため、隣国エチオピアのアフメド・アビィ首相は7月9日にポートスーダンでSAFのブルハン将軍と会談を実施。また、7月18日、RSFを支援しているとして、SAF側が非難を続けてきたアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド大統領とブルハン将軍が初めて電話会談を行うなど、紛争解決に向けた新たな動きも見られる。

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