デイリー・アップデート

2023年6月9日 (金)

[モザンビーク] 2023年後半の天然ガスプロジェクトの再開をにらんで、税制、金融部門、外国企業などへの規制の緩和などが計画されており、大規模な投資支援も進んでいる。天然ガス田があるカーボ・デルガド州における公共インフラへの投資は、経済活動を促進するだけでなく、武装勢力の活動抑制の面でも期待される。

[豪州] 6月7日、2023年1~3月期の実質GDP成長率が前期比+0.2%(前年同期比では+2.3%)だったと発表された。前期(前期比+0.6%)から減速し、新型コロナウイルス・デルタ株の感染拡大に起因するロックダウン解除以降で最も小さくなった。同期の消費者物価(CPI)上昇率は前年同期比+7.0%と、2022年10~12月期(+7.8%)から鈍化したがなお高水準で、消費の重石となった。輸出については主要産品である石炭の輸出が減少したが、コロナ規制で減少していた留学生の入国が回復し、サービス輸出が大きく伸びた。4月のCPI上昇率は前月比+6.9%と前月(+6.6%)から加速しており、GDP成長率の発表前日の6月6日、豪連邦準備銀(RBA)は政策金利を0.25%ポイント引き上げ4.1%としていた。

[中国] 税関総署の発表によると、2023年5月の輸出額は前年同月比で▲7.5%の2,834億9,860万ドルと前年同月比でマイナスに転落した。マイナスは3期ぶりで、外需の低迷や前年同月の水準(同+16.4%)が高かったことが影響した。輸入額も同▲4.5%の2,176億9,200万ドルにとどまった。1~5月の輸出額は前年同期比+0.3%の1兆4,003億5,440万ドル。マイナスの品目も目立った一方、「新エネルギー車」の輸出が加速している。他方、1~5月の輸入額は前年同期比▲6.7%の1兆408億7,680万ドル。自動車などがマイナスだったが、電力確保のための石炭輸入が急増している。

[欧州] EU統計局(Eurostat)によると、ユーロ圏の2023年第1四半期の実質GDP成長率は前期比▲0.1%と、速報時点の+0.1%から下方修正された。これによって、2四半期連続で前期比マイナスとなり、簡便的に景気後退と判断されるようになった。2022年後半に景気後退が予想されていた中、速報時点ではそれが回避されたとみられていたものの、やはり景気後退だったことになる。物価高騰によって個人消費が減少した上、輸出も伸びなかったため、成長率が押下げられたとみられる。

[ロシア] 長引く対ウクライナ軍事侵攻に対するロシア国内の世論が揺らぎ始めている。国営テレビのプロパガンディスト(プロパガンダの宣伝者)や政権与党幹部や政界・実業界のエリート層の一部の人は、戦争にうんざりし、手をひきたいと考えているが、プーチン大統領が戦争を停止するとは期待していない。ロシアにとって、いまや可能性のある幕引きは、最善でも紛争の「凍結」でしかない、との見方が広がっている。

[欧州/中国] 6月7日、欧州外交問題評議会は、欧州の人々の米中対立や中国・ロシアに対しての態度に関する世論調査を発表した。調査は2023年4月にオーストリア、ブルガリア、デンマーク、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ポーランド、スウェーデンの11か国で実施された。中国に対するリスク認識は強まっているが、半数が中国を戦略的協力が必要なパートナーとみなし、台湾有事をめぐる米中対立に関しては、62%が中立を望むという結果が出た。ロシアに対して中国が武器支援をした場合は、欧州経済に深刻なダメージがあっても制裁を科すべきだとの回答は41%だった。

[台湾] 台湾の全固体電池メーカー輝能科技は、世界初となる年産能力2GWhのEV用全固体電池工場を台湾桃園に設立し、2023年第4四半期に量産開始を予定している。また、フランス北部でも年産能力48GWhの工場を設立し、2026年末までに稼働するもよう。全固体電池は安全性、急速充電、長寿命などの面で大きな進歩につながるとされるが、実用化が容易でなく、同社の技術レベルの検証に注目が集まる。なお、開発レベルの尺度の一つである特許出願数では、トヨタが圧倒的にトップといわれている。

[米国/エチオピア] 6月8日、対エチオピア食料支援を実施している米国際開発庁は、同地における支援事業を停止すると発表した。近年、類を見ないほどの大規模な支援食料の横流しが確認されたことを理由に挙げている。国際支援組織によれば、この不正行為にはエチオピア連邦政府、地方政府、そして軍部も関与しているもよう。しかし、米バイデン政権は、ティグライ内戦によって緊張した二国間関係が、2022年11月の停戦合意を経てようやく改善しつつある中、表立って同政府を責め立てることは避けたいとみられる。6月8日にはサウジアラビアを訪問中のブリンケン米国務長官が、国際会議参加の為に現地を訪れていたエチオピア副首相と会談。両国共同で事態を調査することで合意している。

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