2024年10月4日 (金)
[モーリシャス/英国/米国/インド/中国] 10月3日、モーリシャスと英国は共同声明で、英国領・チャゴス諸島の主権をモーリシャスに譲渡する政治合意に至ったと発表した。1965年に英国が同諸島をモーリシャスから分割し、米英のインド洋上の軍事拠点として統治してきたが、モーリシャスは自国の主権を国際司法裁判所(ICJ)や国連に要求し続けていた。今後、条約化が進められるが、合意内容には軍事基地があるディエゴ・ガルシア島に関しては向こう99年間、英国が使用権を持つことが含まれている。今回の政治的合意を支援した米国とインドもそれぞれ歓迎の意を示しているが、英国野党側からはモーリシャスと関係が深い中国がインド洋に進出する足掛かりとなるとの批判の声が上がっている。
[米国] 労働省によると、9月28日までの1週間の新規失業保険申請件数は22.5万件となり、前週から0.6万件増加した。市場予想(22万件程度)を小幅に上回ったものの、まだ労働市場は底堅く推移しているようだ。21日までの週の継続受給者数は182.6万人となり、前週から▲0.1万人と2週ぶりに小幅に縮小した。雇用環境の動向を判断する上で、ハリケーンやストライキの影響が今後どの程度表れるのかが注目される。
[原油] ブレント原油相場は9月半ばに一時68.68ドルと約3年ぶり安値に沈んだが、10月に入り78ドル近くまで急反発している。戦争長期化・OPEC+減産継続中でも、非OPEC+の増産と複数のOPEC+加盟国による超過生産で供給は安定している一方、中国の需要の伸びは急低下。さらに12月には減産緩和が予定され、需給は緩和傾向。しかし10月に入り、イランとイスラエルの緊張が一段と高まり、イスラエルがイランの石油施設を攻撃する可能性が懸念されている。OPEC+には生産余力があり、ホルムズ海峡封鎖で供給できない事態とならない限り需給はひっ迫しないとされるが、100ドルコールオプションの取引が活発化するなど急騰リスクが意識され始めている。
[米国] 半導体のサプライチェーンについて台湾が注目されるが、その材料がなければ生産が間違いなく滞る。半導体シリコンウエハーの生産に不可欠な高純度の石英は、ノースカロライナ州スプルースパインという小さな町で産出され、世界の供給は、ほぼ人口2,200人のこの小さな町によって支えられている。ハリケーン・ヘレンに襲われてから1週間以上経過したノースカロライナ州では、被害者は増加し、水も電気も復旧に至らず、地元当局によれば道路や鉄道も深刻な被害を受けている。同地での生産再開には4~6週間が必要で、たとえ生産が可能となったしても輸送ができるのかといった課題を関係者は指摘している。サプライチェーン内で原料在庫が確保されていることが、今のところささやかな希望となっている。
[フィリピン] 9月30日、マルコス大統領は、同国初となる豪州資本の電気自動車(EV)・家庭用リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池の生産工場の開所式に出席した。投資額は70億ペソ(約180億円)となり、10月から本格稼働し、初年度に生産される蓄電池の容量は、年30万キロワット時を見込む。この工場は、豪州STBギガ・ファクトリーの工場であり、2030年までに年間2ギガワット時のバッテリーを生産することを目指しており、約18,000台の電気自動車や50万近い家庭用バッテリーシステムに電力を供給できる見込みである。
[米国] 10月3日、国際港湾労働者協会(ILA)は、港湾ストライキを一時停止すると発表した。ILAは声明を発表し、雇用側と昇給に関して暫定合意に至ったため、現契約を2025年1月まで延長した上で交渉を続ける。諸報道によれば、昇給に関しては6年間で+62%で合意したもよう。ILAは当初、+77%の昇給を求めていた。
[カザフスタン] 10月6日、中央アジアのカザフスタンで、原子力発電所建設の是非を巡る国民投票が実施される予定。最新の世論調査によると、国民の約半数が原発の建設を支持しており、エネルギー省は、原発の建設地候補として南部アルマトイ州のバルハシ湖南西部の村を挙げている。原発技術の提供元として、中国の国有企業の大手・中国核工業集団(CNNC)や、ロシア国営原子力企業ロスアトムなどが候補になっている。
[EU] 10月2日にメツォラ欧州議会議長が、次期欧州委員会の公聴会を、11月4日から12日にかけて行うと発表した。この日程発表により、当初11月1日に予定されていた第2次フォンデアライエン委員会の始動が、少なくとも12月にずれ込むことが決定した。
[中国/ドイツ] 香港のSCMP紙は、関係者の話として、ドイツのベアボック外相が近日中に中国を訪問する予定だと報じている。関係者らは訪問目的については明かさなかったが、記事はウクライナ戦争で、米大統領選を前にウクライナ側が勝利への計画を米国に認めさせようとしていることや、中東でイランとイスラエルの緊張が高まっていることを受け、国際情勢の安定化のために中国と協議を行うためではないかと推測している。
[インド] 10月3日、ゴヤル商工相とレモンド米商務長官がワシントンDCで会談し、重要鉱物サプライチェーンの拡大と多様化に関する覚書に署名した。米商務省の発表によれば、優先分野には、米国とインドの重要鉱物の探査、抽出、加工、精製、リサイクル、回収の相互に有益な商業開発を促進するための機器、サービス、政策、ベストプラクティスの特定が含まれる。ゴヤル商工相は署名後にCSISで講演し、覚書はグリーンエネルギーを促進するためのオープン・サプライチェーンや技術開発、投資フローを含む多面的なパートナーシップだと説明し、両国のパートナーシップにはアフリカや南米の国々のように鉱物資源が豊富な国々を含めるべきと述べた。
[イスラエル] 10月2日、イスラエルのカッツ外相は、国連のグテーレス事務総長を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に指定し、イスラエルへの入国を禁止すると発表した。カッツ氏は、10月1日のイランによるイスラエルへのミサイル発射を受けてグテーレス氏が発信したXへのポストで、イランを明白に非難しなかったことがその理由としている。米、EU、フランス、スペイン、ノルウェー、トルコなどは、このイスラエルの決定を批判し、グテーレス氏を擁護。ポルトガル大統領もイスラエルに決定の再考を呼びかけた。
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