2024年10月15日 (火)
[東アジア/太平洋] 10月7日、世界銀行は「東アジア・太平洋地域 半期経済報告書2024年10月版:仕事とテクノロジー」を発表した。この報告書によると、発展途上の東アジア・太平洋地域は2024年もほかの地域より速い成長を続けるものの、パンデミック前の成長速度には達しないと分析している。同地域の実質GDP成長率は2024年に4.8%、2025年には4.4%に減速すると予測されている。地域最大の経済国である中国の成長率は、不動産市場の弱さ、消費者・投資家の信頼感の低下、高齢化や国際的な緊張といった構造的な課題が重石となり、2024年の4.8%から2025年には4.3%に減速すると見込まれている。一方、そのほかの国々の成長率は、2024年の4.7%から2025年には4.9%に増加すると予測され、消費の増加、商品輸出の回復、観光業の復活が成長を支えるとみられる。
[サブサハラ/アフリカ] 世界銀行が10月14日に発表した「Africa's Pulse(アフリカの鼓動)」によると、サブサハラ・アフリカの2024年の実質GDP成長率は+3.0%で、4月発表時より0.4ポイント下方修正された。スーダンでの武力紛争の長期化により同国の2024年の成長率が▲15.1%であることを主な理由としている。スーダンを除く同地域の2024年の成長率は+3.5%の予測で、インフレの鎮静化傾向と個人消費の増加を受けて、2023年の+2.4%から上昇し、2025~2026年は+4.0%成長が見込まれる。一方で、成長見通しのリスクは引き続き下方にあり、リスクとして地政学的緊張の高まりによる原油価格の上昇の可能性や気候災害などを挙げた。
[米国] 10月13日と14日の両日、ビル・クリントン元大統領は、南部の「激戦州」であるジョージア州を訪問し、有権者に対してハリス氏支持を要請した。10月13日の週後半にはもう一つの南部の「激戦州」であるノースカロライナ州のバスツアーが計画されている。11月5日の米国大統領選挙投票日まで3週間となる中、ジョージア州では10月15日から期日前投票が開始され、実質上の投票は開始されており、クリントン元大統領もハリス氏支援のために、有権者の「掘り起こし」のてこ入れを強化している。
[世界銀行] 世界銀行によると、世界の最貧26か国の債務は2006年以降で最も深刻な状態であり、自然災害やそのほかの「ショックに対する脆弱性」が高まっている。一方で国際援助は20年ぶりの低水準(GDP比)となっており、また、多くの国が厳しい条件で融資を受けざるを得なくなっていると指摘している。政府債務は平均すると現在GDP比72%に達しており、18年ぶりの高水準となっている。一方で、低コストの資金調達能力はほぼ枯渇しており、GDPに占める政府開発援助(ODA)純額は、2022年には21年ぶりの低水準となる7%に落ち込んだ。その結果、世界銀行・国際開発協会(IDA)が低コスト融資の最大の単一資金源となった。
[EU/英国] 10月14日に開催されたEU外相会合に、英国のラミー外相が参加した。英国の外相がEUの外相会合に参加するのは、ロシアがウクライナに侵略を開始したほぼ直後にトラス外相(当時)が緊急会合に参加した2022年3月以来ぶり。ラミー外相は、ロシアのウクライナ侵略、不安定な中東情勢などを受け、イギリスと欧州がゆるぎない姿勢を維持することが非常に重要との見解を発表した。
[中国/台湾] 10月14日朝、人民解放軍東部戦区は、台湾周辺で軍事演習「聯合利剣-2024B」を開始したと明らかにし、当日夜に演習が「統合作戦能力を十分にテスト」して終了したと発表した。10月10日の双十節における頼清徳総統の演説を非難し、「台湾独立派の分離独立行為に対する厳格な抑止力を示す」としている。中国の軍人や識者らは、演習は台湾のエネルギー輸入を遮断し、台湾の経済と社会に大きな影響を与えることができると強調している。
[中国/ベトナム] 10月12~13日、中国の李強首相がベトナムを訪問し、トー・ラム共産党書記長兼国家主席、チン首相らと会談した。中国首相によるベトナム公式訪問は2013年の李克強首相の訪問以来で11年ぶり。李強首長とチン首相は、包括的戦略パートナーシップの強化や運命共同体の構築の推進で合意した。両国の関係機関は、鉄道、税関、農産品貿易、メディア、QRコード決済などの協力に関する10件の覚書を締結した。
[イスラエル/レバノン] 10月13日夜、ヒズボラのドローンがイスラエル中部の軍訓練施設に命中し、4人の兵士が死亡し、50人以上が負傷した。ドローンは、訓練中の兵士たちが施設のカフェテリアで夕食を取っていたところに命中した。4人は全員19歳の訓練中の若い兵士。なお、警報サイレンは鳴らなかったとのこと。同施設の詳細はイスラエル軍のウェブサイトに紹介されていたため、攻撃の時間と場所は意図的に狙われたものと考えられる。
[米国/中国] 10月13日、米国務省は中国人民解放軍による軍事演習に対する深い懸念を伝えるプレス声明を公表した。中国が台湾周辺地域において大規模軍事演習を行うことを明らかにしたことを受け、国務省は、台湾総統による恒例の演説への中国の反応は、台湾海峡における緊張を悪化させかねず、人民解放軍に対して慎重な行動を求めた。中国は14日には軍事演習の終了を宣言した。
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2024年12月3日(火)
『日本経済新聞(夕刊)』に、米州住友商事会社ワシントン事務所長 吉村 亮太が寄稿しました。 - 2024年11月28日(木)
ラジオNIKKEI第1『マーケットプレス』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行が出演しました。 - 2024年11月19日(火)
『週刊金融財政事情』2024年11月19日号に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行が寄稿しました。 - 2024年11月18日(月)
『Quick Knowledge 特設サイト』に、当社シニアエコノミスト 鈴木 将之のQuick月次調査・外為11月レビューが掲載されました。 - 2024年11月15日(金)
TBSラジオ『週刊・アメリカ大統領選2024(にーまるにーよん)』TBS Podcastに、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司が出演しました。