デイリー・アップデート

2024年10月31日 (木)

[中国/キューバ] 5月、キューバ政府は中国人に対するビザ免除を発表し、中国国際航空は2020年3月からコロナ禍で中断していた北京発ハバナ行きの直行便を再開した。この動きは、中国からの観光客増加による外貨収入の拡大や経済回復への期待を反映している。観光業はキューバのGDPの約10%を占める主要産業であるが、コロナ禍と米国の経済制裁の影響で回復ペースが遅れている。キューバ経済は慢性的に低成長が続き、2023年の実質GDP成長率は前年比▲1.9%に落ち込んだ。さらに、11月の米大統領選挙の結果次第で米国の対キューバ政策が変更され、キューバ経済の不確実性が高まる可能性があるため、今後はさらに観光業強化の動きが加速するとみられる。

[米国/ユーロ圏] 米商務省によると、米国の2024年第3四半期の実質GDP成長率は前期比年率+2.8%だった。成長ペースは、第2四半期の+3.0%から減速したものの、個人消費の堅調さなどから底堅かった。プラス成長は10四半期連続。また、EU統計局(Eurostat)によると、ユーロ圏の2024年第3四半期の実質GDP成長率は前期比+0.4%となり、第2四半期の+0.2%から加速した。ドイツが+0.2%と2四半期ぶりのプラス成長であったことや、パリオリンピック・パラリンピック開催に伴い個人消費が増加した影響で、フランスが+0.4%へと加速したことが、ユーロ圏の成長を押し上げた。

[メキシコ] 第3四半期GDP速報値は、前期比+1.0%と市場の予想(+0.6%)を上回り、第2四半期の同▲0.2%から回復したことが確認された。 しかし、前年同期比では+1.5%と、緩やかな成長にとどまりまっており、11月に中央銀行がさらなる利下げに踏み切る条件は依然として整っている。ただし、米国大統領選でトランプ氏が勝利すれば事態が変わる可能性が残る。

[南アフリカ] 10月30日、エノック・ゴドングワナ財相は中期予算計画(MTBPS)を発表した。2024年の実質GDP成長率は+1.1%と、2月の予算案の発表時の+1.3%から下方修正した。上半期の計画停電の実施の影響等を理由としている。しかし、最近の電力供給の改善を受け、2024~2026年の成長率見通しは+1.8%と2月から0.2pt上方修正した。2024/25年度の財政赤字は予想を上回る歳入の減少によりGDP比で▲5.0%に悪化するものの、2027/28年度にかけて同▲3.2%まで低下していく見通しを示した。また、公的債務(グロス)は、向こう3年間はGDP比で75%台で推移するなど厳しい経済状況の見通しを受け、発表後、通貨ランドは対ドルで▲0.2%と弱含みとなった。

[米国] アップル社はハッカーに同社のサーバーへの侵入を挑む。成功すれば最大100万ドルの賞金がもらえる可能性がある。同社はサーバーの安全性を非常に重視しており、それぞれ「展開または構成の問題による偶発的または予期しないデータ漏洩」に気付いた場合は5万ドル、「証明されていないコードを実行」できれば10万ドル、「信頼境界外のユーザーのリクエストデータまたはユーザーに関するその他の機密情報へのアクセス」では15万ドル、「信頼境界外のユーザーのリクエストに関する機密情報へのアクセス」では25万ドルの賞金が出される。さらに、ハッカーが アップル社の概要に含まれていないセキュリティ問題を発見した場合、同社は同様に報奨金の提供を検討すると約束している。「ユーザーの許可や承知なしに、任意の権限でコードを任意に実行」することができれば、100万ドルとのこと。

[米国/ロシア] 10月30日、米財務省はロシア制裁に対する迂回措置などを提供する120以上の個人・企業を新たに制裁対象とすることを発表した。また、ロシアにおける国防関連企業152社に対しても制裁を科すことを明らかにした。制裁回避を支援する個人・企業は、中国、香港、インド、トルコ、スイスなど第三国にて活動する主体が多く対象となっている。米国は、先に発表されたG7による対ウクライナ支援融資に加え、新たな対ロシア制裁、特に制裁回避を支援する第三国企業などへの制裁措置を講じる意向であることを発表していた。

[米国] 10月29日、トランプ前大統領の元側近のスティーブ・バノン氏は、米議会侮辱罪で禁固4か月の実刑判決を受けて収監されていたコネティカット州の連邦刑務所から出所した。バノン氏は出所直後の記者会見で、トランプ氏の2024年大統領選挙の得票状況が、2020年大統領選挙と同じようなものであれば、開票状況に関わらずトランプ氏は勝利宣言をすべきとの見解を示した。11月5日に投票が行われる大統領選挙の開票を巡り混乱する可能性が浮上してきている。

[スペイン] 10月29日にスペイン南東部で朝から断続的な激しい雨が発生し、10月30日夜の段階で少なくとも95人以上の死亡が確認された。中央政府は危機管理委員会を設置し、EUと協力して人的災害・物的被害に対応する。

[中国/英国] 10月30日、英国の製薬会社アストラゼネカは、同社のグローバル執行副社長で中国社長のLeon Wang(王磊)氏が中国当局の調査に協力していると発表した。同社は、捜査の詳細は明らかにしていないが、要請があれば「捜査に全面的に協力する」としている。ブルームバーグ紙は、今月初めに同社の別の元従業員が中国当局に拘束された件に触れつつ、患者データの収集と中国のデータセキュリティ法に違反した容疑について報じていた。また『財新』誌は、医療保険受領のために遺伝子検査報告書を偽造した疑いがあると報じている。

[オーストラリア] 10月26日、クイーンズランド(QLD)州の議会選挙が実施され、野党・自由国民党(LNP)が過半数の議席を獲得し、マイルズ州首相率いる労働党から政権を奪回した。LNPの政権奪回は9年ぶり。10月28日、デヴィッド・クリサフリ党首が州首相に就任した。国政与党である労働党にとって8月の北部準州議会選に続く敗北であり、2025年5月までに予定される総選挙に向けて、アルバニージー首相に不安を抱かせる結果となった。

[イスラエル] 10月28日、イスラエルの国会は、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のイスラエルでの活動を禁止する2つの法案を圧倒的多数で可決した。同法案は可決後3か月で発効する予定。以降UNRWAが東エルサレム、ヨルダン川西岸、ガザで活動することが極めて困難になる。UNRWAは多くの難民キャンプや学校、病院などを運営するパレスチナ難民支援に特化した団体だが、2023年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲に参加した職員がいたとしてイスラエルはUNRWAを非難している。

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。

21人が「いいね!」と言っています。